本文へ

中心市街地活性化協議会支援センター

文字サイズ
まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例
  • HOME
  • まちづくり事例
  • 「人口3万人のまちで、2つのまちづくり会社と商店街を中心に、公民連携による持続的なまちづくりをめざす」(高知県四万十市)

「人口3万人のまちで、2つのまちづくり会社と商店街を中心に、公民連携による持続的なまちづくりをめざす」(高知県四万十市)

事業展開のポイント
  • 地域の特性に合った持続的なまちづくり
  • 第三セクターと民間のまちづくり会社、さらには商店街との連携
  • 市、商工会議所、中央会等も巻き込む公民連携の進め方

人口3万人台の四万十市ではまちの課題の解決に向けて担い手が現れ、まちづくりに精力的に取り組んでいます。土佐の小京都と呼ばれ、商店街が生活に息づくコンパクトなまちの歴史や文化といった地域資源を活かしながら第1期中心市街地活性化計画の反省に立って公民連携による持続的なまちづくりが始まりました。

四万十市中心市街地の経緯

四万十市は、高知県西南部に位置する人口34,018人(出典:平成30年12月1日、住民基本台帳)、世帯数16,574世帯(出典:同住民基本台帳)、面積632平方キロメートルの自治体です。土佐の小京都と呼ばれ、平成30年には一條教房公が下向して550年を迎えて「土佐の小京都中村550年祭」が行われました。 
高知県西部の幡多地域の商業、行政機能の中心を担う四万十市の商圏人口は旧幡多郡全域から約10万人が見込まれ、年間約120万人弱(出典:四万十市観光商工課調べ:平成28年)が四万十市内(旧西土佐村を含む)の四万十川観光に訪れます。
商業統計(平成26年)を見ると、事業者数544、年間販売額67,645百万円で年間販売額は増加傾向にあります。

四万十市中心市街地は、四万十川、後川に囲まれた地勢的にまとまりのある地域です。市街地内には市役所、図書館、郵便局、学校、病院等の公共公益施設ならびに国や県の出先機関が集中し、7つの商店街、283店舗(出典:四万十市中心市街地活性化基本計画)があり、幡多地域一円から集客する経済・行政機能の中心を担っています。一方で、国道56号沿い、四万十川対岸の具同地区では大型店が進出し、近隣から集客しています。

四万十川と佐田沈下橋

意欲的な商店街の取り組み

四万十市は高知市から約110km離れた独立商圏を持ち、近隣の市町、さらには愛媛県南部からも買い物客が流入しています。四万十川と後川にはさまれた中心市街地には8千人弱の人口を有しており、商店街の活動も活発です。市内の商店街で唯一アーケードを持つ天神橋商店街では、平成24年に民放ドラマ「遅咲きのヒマワリ~ボクの人生、リニューアル~」の舞台にもなりました。近年ではチャレンジショップの出店者を手厚く支援する体制で成果を創出しています。

アーケードを有する天神橋商店街

アーケードを有する天神橋商店街は四万十市中村の中心的な商店街。街区には銀行の跡地があって活性化の取り組みが行われている。

天神橋商店街にあるチャレンジショップ

天神橋商店街にあるチャレンジショップでは出店者を手厚くサポート。ここからは次々と専門店が商店街に巣立っていった。

日平成30年12月22日には、商店街振興組合連合会女性部「四万十玉姫の会」が中心となって「まちあそび人生ゲーム~タイムスリップしてきた玉姫さま~」が開催されました。

このゲームは5つの商店街の28の個店と名跡などをルーレットに従って進める「人生ゲーム」(©TOMY)に模してまちを歩くもので120チーム440人が参加しました。受け容れ側の店舗で平均200人の来店があったとのことです。事後のアンケートでは参加者、参加店、主催者のみならずボランティアスタッフに至るまで「良かった」の声がほとんどでした。

商店街の個店の課題は駐車場の有無や品揃えではなく、小さくても専門性を活かし地域密着の存在意義を打ち出していくことでしょう。一方で顧客の視点からは「買わずに出にくい」(来店する動機や理由がないと入店しにくい)のが悩み。

それに対して商店主らが専門知識を提供する意思疎通の場をつくる方策もあるでしょうが、コンパクトにまとまって歩きやすい四万十市中村のまちではもっと直接的でわかりやすい交流が可能です。

その背景には人情味が濃いという人々の気質があります。今回のイベントでは店内に入って店のスタッフからみかん等をもらうなどのできごともあり、笑顔で迎えてくれた店のことを参加者は忘れないでしょう(なお、主催者では手荷物が増えることを想定して参加者には予めエントリーを表す真っ赤なバッグを渡していたそうです)。

来店しての交流体験が次に客としての来店に結びついたり誰かに紹介するきっかけとなったりすることが期待されます。「楽しい」との声が多かったことからもわかるようにエンターテインメントの要素を散りばめつつ潜在顧客の獲得が可能であることがわかったことも収穫でした。

四万十玉姫の会の木戸和美会長

次回に向けての課題もあるが、参加者、参加店のみならず関わった人みんなが喜んでくれたことがよかったと語る四万十玉姫の会の木戸和美会長。

天神橋の銀行跡地前を出発点としてこれから人生ゲームでまちあそびを行う参加者
「人生ゲーム」で使用する通貨に描かれる肖像は中村一條家のキャラクター

玉姫とは、京都から中村に入った一条家二代目の姫様の名称で商店街の女性部の活動もそこから得ている。四万十玉姫の会は平成17年に発足して精力的に活動。新・がんばる商店街77選にも選ばれるきっかけとなっている。22日は玉姫の嫁入りの日であり命日とされる。

人生ゲームの際に天神橋商店街に集まった関係者
  • 東下町商店街
  • 天神橋商店街
  • 一条通商店街
  • 京町商店街
  • 大橋通商店街

上記の画像は、「人生ゲーム」の舞台となった商店街、東下町、天神橋、京町、一条通、大橋通りの各商店街

TMOの頃から活動しまちづくりを支える第三セクターのまちづくり会社

まちづくり四万十株式会社は、平成10年の中心市街地活性化法の認定を受けたTMOとして平成13年に設立された第三セクターのまちづくり会社です。以後、四万十市立文化センターの指定管理を受託しつつ商店街のハード整備、ソフト事業を行う際の行政との連絡調整や補助金活用を側面から支えるなど四万十市中心市街地活性化の司令塔として活動を続けています。

平成17年には一条通商店街で地域住民に利用されてきた地元スーパーが閉店したことがきっかけとなり、平成20年から直営で地元の農産物や惣菜、加工品の販売事業を手がけるようになりました。ところが販売実績が少ないと出品者が集まりません。一方で郊外の畑では高齢の生産者がせっかく作った野菜が出荷できずに困っておりました。そこで畑を回って高齢の生産者から野菜を集めるなど関係者の熱意と努力が実って安定した品揃えが可能となりました。

取材時には90歳を超えるおばあさんが買い物に訪れておりましたが、スタッフが同じ目線で話しかけつつ、ていねいにお釣りを財布に入れてあげ、さらにはかごに載せる際に転倒しにくいよう重量バランスを取ってあげるなど、スーパーではできないお客様に寄り添った対応をされていました。数日お顔が見られないと「あのおばあちゃんどうしているかな」と心配になるそうです。

こうしたお店があればこそ高齢の方も安心してまちに住むことができます。経済効率だけで計れない大切なことを地道に積み重ねて10年が経過した現在もコミュニティを支えつつ年間7万人弱の集客を一条通商店街にもたらしています。

  • まちづくり四万十が一条通商店街で運営する「いちじょこさん市場」の外観
  • 地元から集めた野菜が並ぶ店内の様子
  • 買い物を終えた高齢者を支えつつお見送りするスタッフ

民間のまちづくり会社による公民連携の事業構想の具体化

天神橋商店街の一等地に銀行跡地があり、平成22年に民間の地権者から中心市街地の活性化に役立てて欲しいと土地、建物を市に寄贈されました。ところが平成23年に行った耐震診断で建物の活用は困難とのことで更地となり活用策の検討が官民の協議で進められてきました。

そのなかで民間有志が思いを持って自分たちの会社、四万十にぎわい商店株式会社を立ち上げ、事業構想を具体化すべく銀行跡地の公募に挑戦して指定管理者として採択されました。

平成29年には基本設計を作成、平成30年度内には実施設計を市に提出する予定で協議を詰めているところです。

民間のまちづくり会社の5人の出資者は商工会議所青年部やJCなどで地域に根ざした活動を長年続けていて自らの事業も堅実に運営しています。地元の信頼も厚い5人がそれぞれの持ち味を発揮しながら施設の計画づくりに取り組んでいます。

事業の目的は、まちに積極的に来てみたいと思える場所、住民や観光客が集まれる場所をつくることです。ウッドデッキを持った庭はまちなかの憩える場所として、また清潔で使いやすいトイレなどの公共空間を民間ならではの感性で設計しています。直営事業のカフェは若い人が来てみたいと思えるようなかっこよさと居心地の良さを両立させる空間デザインをめざしています。夜間の営業が期待される4棟の屋台形式のレストランはテナントとして貸し出します。

初期投資こそ国、県、市の補助金を活用する予定ですが、収支は黒字となるよう計画を練り上げていて着工は2019年度、施設のオープンは2020年を予定しています。

計画づくりには四万十市、高知県、高知県中央会、中小機構四国本部も積極的に支援を行い、公民連携から生まれる成果となることが期待されています。

銀行跡地利活用に向けた意見交換会の様子

多治見まちづくり株式会社の小口ゼネラルマネージャーを招いての意見交換。まちづくりの実践の深さと行動に感銘を受けた。

四万十にぎわい商店株式会社の取締役や関係者のみなさん

建築事務所が作成した模型を元に細部の検討を行う四万十にぎわい商店の取締役、関係者のみなさん。検討会には市、県、中央会からも参加で高知県を挙げて盛り上げようとしている。右から2番目が社長の右城一仁さんで商店街で人気の洋菓子店の店主。

施設模型を用いて検討を重ねる様子

アーケードから中庭がどのように見通せるか入念に模型をチェックしているところ。実際に使用する目線で想像力を膨らませて施設整備を行うことでかゆいところに手が届く設計が可能となる。実施設計ではパウダールームのデザイン、傘をかける場所、厨房のレイアウトなど細部を詰めている。

四万十市中心市街地のこれから

四万十市では平成20年7月から平成24年3月にかけて中心市街地活性化基本計画を実行し、そこから市庁舎の整備や図書館などが完成しました。一部の民間事業は進捗したものの、まちなかの民間事業はいちじょこさん市場を除いて事業化は進みませんでした。

「回遊性と集客力向上のための拠点づくり」が課題であった四万十市の中心市街地活性化の反省に立って民間の活力を引き出すとともに公民が連携して事業化の知恵を絞っていくことが求められます。

施設をつくりあげて運営するにしても、まちなか回遊イベントを定期的に行うにしても企画調整と実行部隊が不可欠となってきます。高齢化が進み担い手が不足する商店街では自らの存在意義を問い直すとともに企画調整機能を誰が担うかが課題となっています。今回の四万十にぎわい商店株式会社のように、思いを持ったプレーヤーが事業に取り組むことは公民連携の成果と言えるでしょう。

持続的にまちづくりには公益性を意識しつつ収益を確保する両面が求められます。まちづくり会社は専属スタッフを確保して地区のマネジメントを行うとともに、外部からの参画者を受入れること、多様な人たちが愉しんでもらえる、生きがいと感じてもらえる場をつくることは時代の流れとも言えます。

第三セクターのまちづくり会社には公益性を帯びた受け皿としての役割や地域コミュニティへの貢献といった社会的な使命があり、民間のまちづくり会社には自由な発想、地域に根ざした企画調整能力を存分に発揮して機動的に行動できる強みがあります。

そして大型店やインターネット通販をものともせず専門店としての矜持を持って切磋琢磨する商店街の姿が四万十市にはあります。

通行量を増やす、居住者を増やす、空き店舗を減らすという数値目標の達成は大切ですが、そのために必要な行動、人々の居場所と出番をつくりながら担い手の発掘、育成を行い、まちづくりの活動が地域内で循環する持続的な活動をつくることが中心市街地活性化の成果といえるのではないでしょうか。そのようなまちで人々は開業したい、訪れたい、移住したい、住んでよかったと思えるはずです。

まだまだ捨てたものではない中心市街地と商店街、そこは生身の人間が暮らしていく場所でもあります。人口3万人台の地方都市が等身大で取り組んでいる活性化の取り組みは静かな波紋を広げていくと思われます。

中村の象徴は一條神社。商店街から上がる階段は未来へ向かう人々の気持ちを象徴しているよう