中心市街地活性化基本計画認定を目指した取り組み〜寄居町中心市街地活性化協議会
取り組みのポイント
- 地域強化による効果
- 協議会立ち上げ時の苦悩
- 協議会立ち上げの効果
中心市街地活性化に向けた新たなアプローチ
中心市街地活性化は将来のまちの活性化に取組むための計画作りと実行が基本ですが、その計画を実現するためには、地域経済活力の主体である地域個店の維持向上が大前提です。
埼玉県の寄居町は中心市街地活性化に取組む上で地域個店の強化に取組んできた歴史があります。今回は寄居町中心市街地活性化協議会(以下、協議会)のキーマンである寄居町商工会の杉山事務局長にお話を伺いました。
中心市街地活性化に取組んだ背景
埼玉県大里郡寄居町は、東京都心から約70キロメートル離れた人口3万4千人の町です。
寄居町は秩父往還の街道筋にあり、かつて宿場町として栄えた歴史があります。また街の対岸には豊臣秀吉の小田原征伐でも有名な鉢形城があったので、城下町として栄えた街でもあります。
現在、寄居駅前通りは街の開発が長期にわたり停滞することもあり、人口は平成12年をピークに減少傾向、特に市街地の減少率は他地域に比べても高い状況です。商店街においては後継者不足にあり、およそ3年前に駅前ビルのテナント店が撤退し空き店舗となっていること、寄居駅前の多くの店舗は廃業によりシャッターが目立つなど商店の減少は加速し、中心市街地の活性に課題があります。
そのような状況下、中心市街地を活性化する取組に力を入れていきたいという町の有志が中心となって協議会が2016年6月に設立されました。現在は中心市街地活性化基本計画認定に向けた準備を行っている段階です。協議会の運営は寄居町役場、寄居町商工会が中心となり地域住民も参画しています。
協議会設立と同時に株式会社まちづくり寄居を設立し、地域の事業活動に向けた準備を行っています。
寄居町の強み(個店の強化支援)
中心市街地活性化に取り組む以前の活動として、寄居町商工会は個店の支援に力を入れており、「経営革新計画」を対話ツールとした各個店の経営力を向上させることに注力してきました。
「経営革新計画」とは中小企業新事業活動促進法に基づき各都道府県が認定を行う中小企業の中期経営計画書です。認定を受けるメリットは様々ありますが、一番は地元個店の経営者自らが自店の将来を考え戦略を整理立案できることにあります。また、経営革新計画認定企業は未取得の企業に比べ売上が増加しているという傾向が出ています。
寄居町商工会は10年間で108件(累計)もの認定支援をしてきました。寄居町にある中小企業数のおよそ10%に相当します。この数字は全国的に見ても、認定に力を入れている埼玉県内においても際立っているといえます。
経営革新計画取得数(累計)の比較(全国、埼玉県、寄居町)
全国 | 埼玉県 | 寄居町 | |
A.中小企業数 | 3,809,228 | 172,182 | 1,095 |
B.経営革新計画取得数(累計) | 63,213 | 4,091 | 108 |
(B÷A) | 1.7% | 2.4% | 9.86% |
中心市街地活性化の事務局を担う商工会議所・商工会担当者の多くは、確定申告や中小企業施策支援などに加え地域イベントの手伝いなど多岐にわたる業務を担っていることが多いですが、寄居町商工会の杉山事務局長は個店力を強化することが中心市街地活性化業務に注力する上で重要だといいます。寄居町の場合、経営革新計画取得を推進した結果、町の企業から経営支援希望が増えるなど信頼関係が構築でき、魅力ある店舗が増えたことと同時に、商工会議所・商工会の担当者のスキルアップにつながることで、結果的に個店へのサポートが中心市街地活性化につながっているというわけです。
平成26年に制定された小規模企業振興基本法の制定もあいまって、国などの支援機関が小規模事業者に対する支援を強化していくこと、また、中心市街地活性化を推進する上においても将来の計画作り・実行と同等に、現状の個店強化は重要なファクターであること、などからも、このような取り組みは今後ますます重要性を増すものと思われます。
協議会立ち上げの苦悩
現在基本計画承認に向かってまさに基本計画を策定している寄居町ですが、中心市街地活性化を目指し、協議会を立ち上げた当初は何をしたらいいのか、誰に頼っていいのか、まさに「孤独」だったと杉山事務局長は語ります。そのような中、経済産業省の「街元気」や中小機構の関東ブロック交流会に出席することなどによって、多くの考えや人脈ができ道が開けてきました。今も多くの協議会関係者にご支援をいただき進めることができており、知り合ったまちづくりに取り組む方たちからの口コミによって寄居町に活用できそうな各地の取り組みやキーマンと面識ができてきています。他地域の活動で寄居町に参考になる事例や取り組みはないのか、寄居町商工会杉山事務局長は現在、積極的に情報収集と現場視察を行っています。
協議会立ち上げによる効果
現在は寄居町で4つのプロジェクトが動いています。1.地元商店会とヨリイフィルムコミッションとの連携によるマルシェの構想つくり、2.「若者会議(仮)」と称する、寄居町に関心・興味・愛着を持ってくれる寄居町内外からの若者が参画する、将来の寄居町を担う人材の発掘育成を行う部会、3.駅前開発事業を検討する部会、4.空き店舗に関する対策を検討する部会、などです。
協議会を立ち上げて約1年が経った現在、杉山事務局長が感じる協議会立ち上げによる効果は大きく2つあります。1つ目はまちづくりを進めていく中で中心市街地活性化法の基本計画承認という大きな目標に向かって住民含めた街全体の意識統一ができたこと、2つ目は目標明確化によるスケジュール感の共有ができ、期限を区切った推進が行えるということができたことです。
中心市街地活性化を推進するにあたっては、前提として個店の維持強化が重要であること、協議会の活性は事務局の力によることが大きいこと、将来を担う若者を参画させる重要性、など来年度の中心市街地活性化基本計画認定を目指し、寄居町商工会杉山事務局長を中心に町民一丸となってまちづくりに邁進する姿は寄居町の明るい未来を想像させます。
寄居町の概要
人口34,465人(男17,200人、女17,265人:平成29年1月1日現在)面積64.25平方キロメートル。東京都心から70キロメートル圏に位置し、古くは秩父往還の街道筋にあり、宿場町として栄えました。
交通では国道140号・国道254号が、鉄道は八高線、東武東上線、秩父鉄道が接続する交通の要衝地です。
荒川の清流が秩父の山間から関東平野に流れ出す扇状地で、山美しく清らかな町で、山地、丘陵、台地、低地と多様な地形に恵まれており、荒川が町域の中央を屈折しながら見事な風致を呈しています。