「食」の持続可能性確保と表裏一体で進める中心市街地活性化05
7.取材を終えて
「食」の持続可能性確保なくして中心市街地活性化は有り得ない、両者を表裏一体で推進する拠点がサーラと言えます。中心市街地活性化は中心市街地区域内だけで思考し、そこで完結させることは出来ません。周辺と連携し支えられることによって、はじめて中心市街地が活かされていくことを私たちは認識しています。しかし、時間の概念も含めた広い視野で取り組むことを、つい疎かにしがちになります。サーラの取組みから中心市街地活性化の意味を再認識させられた次第です。かつて大友宗麟がつくった城下町・臼杵のまちなかでは、周辺部から人々が農水産物を持ち寄って、市が立ち、商いの声や往来の人々の活気に満ちた風景があったのではないでしょうか。そして、往時の風景は現在、サーラで展開する「食」のまちづくりへと文脈的に継承されていることを感じさせられます。先人から臼杵の優良な財産が引き継がれてきた証でもあります。今後の更なる展開が楽しみです。
本稿では石橋さんの代表的な取組でもある街中を舞台としたICT活用ゲームには触れる機会がありませんでした。これまでに、“お八栄ちゃん救出作戦-Real RPG in USUKI-”をはじめとするイベントを十数回仕掛けており、外からの人を取り込んだ“楽しい場づくり”として機能しています。ゲームはドラゴンに誘拐された中央通りのキャラクター・お八栄ちゃんを救出するため、参加者はアバター(分身)を作成し、玉となって街中に散らばった八剣士を一人ずつ仲間にして救出の旅(まち歩き)を展開するものです。アバターがモンスターと戦った後に体力を回復するための休憩場所がお土産物屋、飲食店、観光施設等に設定されています。商店街を通過する際には自動的にスマホ画面に店名、写真、店の説明が表示されるようにもなっています。臼杵は湯布院や別府に比べて観光地としての競争力が勝っているとは言い難く、外からの人を呼び込むために観光目的ではない人をターゲットにした逆転の発想から生まれた手段がゲームだったそうです。従来の観光スタイルや誘致方法とは異なりますが、観光名所やお店の紹介の他、地域の人とのコミュニケーションが生まれる等、まちづくりのエッセンスが凝縮されておりICTを活用した“まちなか観光”の新たな試みとして今後も注目されます。
8.まちの概要
(1)規模・人口・歴史
臼杵市は人口約3.8万人、大分県の東南岸に位置し、大友宗麟が築城した臼杵城の城下町として都市の骨格が形成されました。国宝・臼杵石仏をはじめとする豊富な歴史的資源を活かした観光の他、醤油の製造、農業、そして水産業等が盛んです。
(2)交通など
臼杵市内を南北に日豊本線が走り、中心市街地に一番近い駅はJR臼杵駅となっています。また、東九州自動車道の開通により臼杵ICから中心市街地へのアクセスも便利になりました。臼杵港と愛媛県八幡浜市とを結ぶフェリーも運行されており、四国も比較的近く感じられます。
(3)まちの特色
城下町・臼杵は歴史的町並みと史跡が多く残り、まちなかでは多くの年中行事が催されます。中でも竹灯籠が通りや路地を彩る“うすき竹宵”では幻想的な時間と空間へ誘われます。近年では大林宣彦監督の大分三部作の一つ「なごり雪」の舞台となり、街の美しさが映画を通して表現されました。
取材日:平成28年11月25日,12月7日