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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

江津市中心市街地活性化協議会

取組のポイント

石州瓦

官民あげてのまちづくりの推進
協議会下部機関会議の活発な開催
各種の市民参加を促す取組

1.中心市街地活性化への取組

 江津(ごうつ)市は島根県の西部、石見(いわみ)地域にあり、人口25,000人の小都市です。

 この江津市に、平成26年5月、江津市中心市街地活性化協議会(以下「協議会」)が設立されました。そして10カ月後の平成27年3月に、江津市中心市街地活性化基本計画(以下「基本計画」)が、県内では松江市に続き2番目に認定されました。

 事業の進捗では、平成27年8月現在、主要事業のひとつ「宿泊施設建設事業」の6階建てホテルの外観は既にできあがり秋には完成予定です。そしてもう一つの主要事業「公共公益複合施設建設事業」では、土地造成に続き建築工事が急ピッチで進められており、平成28年度に完成予定です。

公共公益複合施設

(1) 取組の経緯

1)協議会設立以前

 江津市中心市街地は、昭和50年代から商業施設や住宅の郊外化により、徐々に衰退傾向が進行していきました。

 そして、平成10年には駅前に立地していたデパートが閉店し、空洞化が加速化していきました。

 この傾向は江津市だけに限ったことではなく、石見地域の日本海沿いの市部は、東から大田市、江津市、浜田市、益田市と連続しますが、他都市でも同様に進行しており、これを背景に、江津市以外の三市では平成10年前後から市中心部の駅前地区の再開発が実施されました。

 江津市も幾度となく駅前地区の開発計画をつくり、江津商工会議所はTMO(*)の認定を受け、活性化を目指しました。

*TMO 平成10年施行(~18年の法改正まで)の中心市街地活性化法に基づき、中小小売商業高度化事業構想を作成し、この構想が適当であると市町村の認定を受けた者を認定構想推進事業者、TMO(タウンマネージメントオーガナイゼーション)という。平成18年の中心市街地活性化法改正以降は任意組織。

 しかし、活性化への取組は、駅前地区商店会の江津万葉の里商店会としての組織化、イベントの開催、チャレンジショップ事業の実施等ソフト事業が中心で、ハード事業は民間資金の導入等財源的な事情により石見地域3市のような再開発ができず、効果は限定的なものに留まりました。

 平成22年、江津市に専門部署として中心市街地再生室が設置されるとともに、平成23年には江津駅前地区活性化推進協議会(事務局は江津商工会議所(以下「商工会議所」))が、市民や若手経営者もメンバーに加わり設立され、中心市街地活性化への取組が本格化していきました。

 この後、「江津駅前まちづくりみちづかいワークショップ」の開催、「第2期江津地区都市再生整備計画」、「中心市街地活性化基本計画(当初案:以下「基本計画」)」の諸計画の策定、ホテル建設のための「株式会社 江津未来開発」の設立、市内全戸配布の「ゴウツ エキマエシンブン(カラー、年3回発行)」の発刊という大きな動きが続きました。

2) 協議会設立以後

 協議会は、平成26年5月に、商工会議所とNPO法人てごねっと石見(以下「てごねっと石見」)により設立されました。  協議会の設立趣意書には、この間の経緯とまちの活性化への強い決意を読みとることができます。


参考URL

 一方、基本計画は、内閣府との事前協議を踏まえ、面積を102haから78haに、よりコンパクトにするとともに、事業の必要性や実施期間・目標数値をさらに精緻に積上げ、協議会意見の反映をもとに申請され、平成27年3月に認定されました。

 なお、この基本計画は、これまでの諸計画のデータを更新し分析を追加する等し、市中心市街地再生室で作成されています。
 協議会の設立、基本計画の認定そして主要事業の進捗の早さには、このような過去の経緯と蓄積があるように見受けられます。

 さて江津市では、先行してU・Iターンの方々による飲食店の開店が周辺地域で目立っています。
 また、このU・Iターンは飲食以外でも、てごねっと石見、塾、デザイン会社、ネイルサロン等に就職したり開業する方が多いという特色が見られます。

 平成27年6月には、2人のタウンマネージャー(以下「TM」)(*)が配置されました。1人は関東の都市でTMを務めていた 梶岡誠生(のぶお) 氏で、もう1人はてごねっと石見でコミュニティビジネスの創出支援をしている 盆子原(ぼんこばら)照晶 氏です。

*江津市でのタウンマネージャーの業務
基本計画事業の実施支援
新規事業の掘り起こし
商業活性化の企画立案
U・Iターンの方々への起業支援
各種活動の実施に伴う調整・助言

2. 協議会組織

(1) 協議会の組織構成

 協議会の組織構成は下図のとおり、総会の下に運営委員会があり、運営委員会の下に「ワーキング部会」の2部会(商業活性化部会と公共施設活用部会)と「タウンマネジメント会議」があります。  そして、事務局は商工会議所内にあり、構成は商工会議所、てごねっと石見、江津市が各2名の合計6名です。

 総会と運営委員会の開催回数は、年間で総会が1~2回、運営委員会が3回程度、ワーキング部会は必要に応じて随時開催ですが、タウンマネジメント会議は毎月活発に開催されており、特に江津市はTMを2名設置しており、うち1名は市内に在住していますので、キメ細かな協議会運営や事業推進上の調整に効果が発揮されています。

 毎月開催される会議としては、第1水曜日に開催されるタウンマネジメント会議と第2水曜日に開催される事務局会議の2つがあります。

江津市中心市街地活性化協議会組織図
(2) 協議会の取組事業

 江津市協議会の特長を、平成26年度(平成26年5月末の設立のため、実際の事業実施期間は10カ月間)活動実績から見ると次のとおりです。

下部機関の会議の開催が活発
ワーキング部会(2部会)が合計6回、タウンマネジメント会議(TMが未設置だったため、事務局長が招集:規約に規定あり。)を事務局会議等と合わせ20回開催。
構成員と市民に対する広報・情報提供活動が活発
協議会設立に合わせてホームページ(以下「HP」)を立上げ、市内全戸配布の協議会広報紙「ゴウツ エキマエシンブン(カラー)」を4回発行(うち1回は、新成人向けの特別号(成人式にて配布))
研修やワークショップの開催が活発
構成員対象の「研修会」が3回、民間事業実施予定者等対象の「専門人材確保事業(研修)」が5回、市民対象の「まちづくりワークショップ事業」を1回開催し、協議会関係者(TM候補者)対象の「人材育成事業(研修)」を1回(3種)実施。
地域イベントに対して、支援または共催で積極的に関与
市に設置の実行委員会で開催される「江の川祭(参加者数6万人)」、商店街で開催される「てつなぎ市(参加者数2千人)」に対して積極的に支援するとともに、江津万葉の里商店会主催の「江津うわさプロジェクト」には共催として参加。


参考URL

1) まちづくりワークショップ

ごうつ未来カフェ

 平成27年3月8日に、まちづくりへの新たな取組のアイデアや駅前に建設中の「公共公益施設」の利活用について、幅広い市民が集まり意見交換をしようというワークショップ「まちの魅力をつくる!見つける! ごうつ未来カフェ」が開催されました。

 このワークショップには、将来施設に配置予定の「市民交流センター」を起点に、市全体の活力の創出を多くの市民が中心となり推進していこうというねらいがありました。
 ワークショップには、高校生から60代まで幅広い年齢層の市民が38人集まりました。
 内容は、最初に公共公益施設の概要説明があり、その後、江津市を舞台に活躍している大学生、高校教諭、ビジネスコンテスト大賞受賞者から、取組内容や石見のやきものの歴史について発表が行われ、イメージが膨らんだ後に、「福祉」、「子育て」、「観光」、「まちづくり」等7テーマの少人数グループに分かれ、15分毎に別のテーマのテーブルに移動し、1人が3つのテーマで意見交換をするというものでした。

  老若男女が混じり合い、江津市の過去・現在・未来について下記のとおり、たくさんの意見が出されました。
 協議会では、今後もこのようなワークショップを開催することを予定しています。

●グループワークで出された意見
江津の魅力をもっと知りたい!発信したい!
石見焼で色んなものを作りたい。
子どもと市内を散歩旅行したい。
●公共公益施設の利活用アイデア
集える、学べるフリースペース。
壁全体がホワイトボードの会議室にして意見を書き残し、仲間づくりのきっかけにする。
パブリックビューイングの大画面で地元スポーツチームの活躍をまち全体で応援。
小・中・高校生のファッションショーをケーブルテレビで中継。
*一部加筆

2) ゴウツ エキマエシンブン

ゴウツ エキマエシンブン

 江津市内全戸に市の広報紙と合わせ配布される「ゴウツ エキマエシンブン(以下「シンブン」)」は、平成25年7月に第1号が発行されました。

 この時点では協議会が未設立だったため、協議会の前身ともいえる「江津駅前地区活性化推進協議会」が発行元で発刊されました(平成26年秋号から協議会が発行)。

 制作は、委託により、てごねっと石見が行っていましたが、今年度から紙面制作の部分は協議会事務局が直接行っています。

 さて、中心市街地活性化は、事業内容が幅広く、また、市全体から見て一部地域への集中投資となるため、計画事業の円滑な実施と施設の効果的利活用を図るには、中心市街地活性化の考え方や各種事業の内容を多くの市民に理解してもらうことが必要不可欠です。

 シンブンは、中心市街地でのまちづくりの情報を、市民や市外縁故者に提供することにより、基本計画事業の円滑な推進と市民等のまちづくりへの積極的な参加促進を目的にしています。
 そのことから、シンブンは市民にとって読みやすく、分かりやすい編集に工夫が凝らされています。

 紙面には、施設整備の説明や先進地視察報告もありますが、新しく整備される施設へ入居予定の子育て支援のNPO法人等へのインタビュー、新しく市内に出店したお店と店長の紹介、駅前で開催される朝市等のイベントの案内等、身近で読みやすい話題が盛りだくさんに取上げられています。

 なお、シンブンの発行経費は、市から協議会へのまちづくり補助金が原資になっています。

3.関係者の声

 宿泊施設を建設する、株式会社江津未来開発代表取締役 今井久師氏(協議会運営委員:商工会議所地域開発委員長)は、ゴウツ エキマエシンブ創刊号で次のように述べられています。  「この会社の目的は、ホテルを建てて終わりだとは思っていません。建てたホテルを地域でどのように活用していくかを考えることも大切な事と考えています。最終目的は、定住や流動人口の増加、つまり賑わいを創出すること。ここに一役買いたい、きっと一役買えると思っています。」

 また、協議会事務局長の河崎敏文氏は、これからの活動で大事だと思うこととして、次のとおり語られました。
 「重視したい活動は、新たな民間による取組の発掘、リーダーの育成そして市民への情報発信です。協議会の活動計画もこれに沿って立てられています。3月に開催したごうつ未来カフェ等により、たくさんのアイデアが出され、新たな市民の取組が始まり、そしてリーダーが出現してくることを期待しています。」

河原氏脇田氏千原氏木島氏

4.取材を終えて

 江津市では、多くの市民の参加を促す取組の効果も相まって、官民一体でまちづくりを進めていこうという気運が盛り上がっています。
 ホテル建設は、前述の株式会社江津未来開発があたっていますが、その設立には企業だけでなく、市民にも出資を要請し、県外出身者を含め94法人・142個人から1億9,500万円が集まっています。
 江津市は、人口25.000人の小都市なため、大都市に比べ各種事業の効果はより直接的に出る可能性があります。
 今後の活性化に目を離せなくなっています。

取材:平成27年8月

江津市の概要

江津市の位置

 江津市は、島根県西部石見地域の日本海沿いにあり、人口は25,000人です。
 中国地方最大の河川、江川(ごうがわ)が日本海に注いでいます。
 江戸時代から赤色の石州瓦の産地として知られ、現在も生産が続いています。
 江津駅南側(山側)には、市役所、商工会議所やグリーンモール(協同組合のショッピングセンター)があり、駅西側には病院、公園、公営住宅、Aコープ等があります。また、今回ハード事業が集中している駅北側(駅出口のある海側)には江津万葉の里商店会があります。

協議会の概要

協議会名:
江津市中心市街地活性化協議会
所在地:
島根県江津市嘉久志町2306-4(江津商工会議所内)
設置日:
平成26年5月30日
構成員:
43名
法定組織者:
【都市機能増進】NPO法人てごねっと石見
           (中心市街地整備推進機構)
【経済活力向上】江津商工会議所
参考URL:

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