「2核1モール」を再構築して賑わいを創出
ポイント
- 「あすとぴあ高田」と「イレブンプラザ」の、2つの核施設を商店街で結ぶ2核1モール構想の実現
- 2つの核施設に、地域ニーズに対応する店舗の誘致
- 集客イベントの充実により、商店街への来訪機会が増加
- 場所:
- 新潟県上越市(高田地区)
- 人口:
- 約20万人
- 分類:
- 【商業施設】【交流施設】【空き店舗活用】
- 協議会:
- あり
- 実施主体:
- 上越市、高田まちづくり株式会社、株式会社イレブンビル、
本町3・4・5丁目商店街振興組合、高田本町まちづくり株式会社
※上越商工会議所及び株式会社まちづくり上越は、当事業の推進を支援
1.「2核1モール」再構築の背景
高田地区の中心市街地では、平成22年4月に大和百貨店上越店が、同年6月には大型専門店ビル「高田共同ビル」が相次いで閉店し、「2核1モール」構想で「集客の核」と位置付けた2つの商業施設が失われ、歩行者通行量が減少している状態でした。中心市街地に関する県民意識・消費者動向調査(平成25年8月26日~9月13日)では、高田商店街に対するイメージとして、1位に「さびれている街」(27%)、2位に「お年寄りの街」(19%)、続いて「つまらない街」「よくわからない街」(各11%)、「上越の中心地」は10%に留まりました。
そこで、持続的な街のにぎわい創出のために、上越市や地元民間事業者、商店街などでは、「2核」の再整備と「1モール」である本町3・4・5丁目商店街の魅力向上に、官民一体となって取組みました。
2.「2核」の再整備
旧高田共同ビル跡地一帯では「あすとぴあ高田」、旧大和百貨店上越店跡地では「イレブンプラザ」が整備され、いずれも平成25年春にオープンしました。あすとぴあ高田は、食品スーパーを中心とした商業施設、ギャラリーなどの公益施設、居住施設、駐車場からなる複合施設、イレブンプラザは既存の商店街に取扱いのない最寄品を揃えた地域密着型店舗、屋根のある賑わい交流広場、駐車場からなる商業施設です。
あすとぴあ高田とイレブンプラザが整備された後、歩行者通行量は平日9,249人(前年度比732人、8.6%増)、休日6,281人(1,167人、22.8%増)に増え、これまでの減少傾向に歯止めがかかりました。また、子育て世代のファミリーや学生が増えるなど客層にも変化が見られるようになりました。
旧大和百貨店上越店が6階建の商業施設だったのに対し、イレブンプラザの商業施設は1階のみですが、1年間の来客数は旧大和百貨店上越店と同水準の約45万人です。百貨店時代と比較して1回の購入金額は減ったものの、1人が繰り返し訪れる回数は増加しました。これは、旧大和百貨店跡地整備事業を着手する際に地域のニーズを調査し、それを満たすテナントを誘致した結果であり、「週に2回来る街にしたい。」という、まちづくりに携わる地元関係者の狙い通りになったといえます。また、中小機構による中心市街地商業活性化診断・サポート事業(プロジェクト型)支援によって、同整備事業の事業計画をブラッシュアップし、商圏分析を踏まえて「身の丈に合った」拠点の形成に努めました。
3.「1モール」の魅力向上
あすとぴあ高田とイレブンプラザを繋ぐ「1モール」にあたるのが、本町3・4・5丁目商店街です。商店街の活性化を推進するため、本町3・4・5丁目商店街振興組合では共同で以下のようなイベントを開催し、来訪機会の増加を図っています。
4月:城下町高田・本町春フェスタ(来場者数約3万人)
7月:七夕まつり(来場者数約2万人)、高田開府400年祭(2014年開催)、上越まつり(祇園祭)
協賛イベント
- 10月:城下町高田花ロード(来場者数約5万人)、越後・謙信SAKEまつり(来場者数約7万人)
- 2月:レルヒ祭協賛イベント
各イベントは、小さな子供から大人まで楽しめるように考えられています。その効果で、イベントで本町商店街を訪れた30代のファミリー層が平常時にも商店街に買い物で訪れるようになりました。
他にも、偶数月の15日に年金サービスデーと称して商店街の各店舗で独自のサービスを提供しているほか、商店街内の交流スペースに高齢者向け休憩所「本町茶屋」を開設し商店街おすすめの商品で「おもてなし」を行っています。また、イレブンプラザ内の交流広場では、商店街PRアイドル「がんぎっこ」のライブをはじめ、キッズパークや物産展などのイベントを毎週末開催しています。
このような集客イベントに加え、商店街では、株式会社全国商店街支援センターの「繁盛店づくり研修」への参加、「本町商店街逸品創出事業」の取組み等で個店の魅力向上にも努め、個店への誘客を図っています
4.今後の課題
あすとぴあ高田とイレブンプラザという2核ができて歩行者通行量は増加したものの、まだ個店の来客者数や売上等へ効果が現れていないことが課題として挙げられます。また、これからは従来の主な客層である高齢者だけでなく、イベント効果で来店するようになった30代などのより若い世代への対応が求められています。空き店舗に関しても、「今の商店街に足りないものは何か」という視点を意識し、テナントや活用方法を考えていく予定です。
■高田地区中心市街地エリア内に位置する日本一古い映画館「高田世界館(旧高田日活)」
高田地区の取材の中で、日本一古い映画館である高田世界館を運営する、株式会社高田広告舎プラステンの岸田代表にお話を伺うことができました。
高田世界館は明治44年に劇場「高田座」として開業後、名称を変えながら現在まで操業しています。映画の上映のほかに、LIVEや落語、浄瑠璃、地元の学校の吹奏楽部の演奏会など様々な用途に利用されています。映画関係者も多数訪れており、平成25年には「シグナル 月曜日のルカ」という映画のロケ地にもなりました。岸田代表は、「撮影チームが来ると、地元に宿泊代、弁当代、交通代などのお金が落ちる。今後、フィルム・コミッションにも取り組んでいきたい」とおっしゃっていました。平成26年度は、公益財団法人 東日本鉄道文化財団の高田世界館再生事業でトイレの改修工事等が行われる予定です。歴史的・文化的資源を活用した中心市街地活性化に資する集客施設として、今後も注目の取り組みです。
<参考URL:高田世界館>
http://www.baba-law.jp/sekaikan/ 別ウィンドウで開きます
まちの概要
規模・人口
上越市は、新潟県の南西部に位置し日本海に面しています。昭和46 年に、当時の高田市と直江津市が合併して発足しました。直江津地区が古くから港町として栄えてきたのに対し、高田地区は江戸時代初期に都市計画的に整備された城下町であり、上越地方の商業、経済、文化、教育の中心地として栄えてきました。2014年で高田開府400年を迎える現在も街の形は大きくは変わらず、本町通りを中心に商店が集積し、それを取り囲むように住宅が密集しています。
上越市の人口は約20万人でゆるやかな減少傾向にあり、高齢化率は約28%です。高田地区中心市街地の人口は約7,000人、高齢化率は約36%に上ります。
交通
直江津地区では、直江津駅に信越本線、北陸本線、ほくほく線が乗り入れているほか、路線バスも18 路線が集中しています。一方で高田地区では、信越本線で直江津、長野方面と結ばれ、路線バス21 路線が集中しています。
<取材日H26年5月>