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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

カラコロエリアの集客拠点形成により中心市街地活性化をけん引!

ポイント

  • 松江城などの市内観光スポットと商店街の回遊性の強化
  • 「観光・交流」、「近隣集客」の拠点形成と商店街との連携
  • 地域生活文化・歴史の新たな情報発信
中心市街地内の主要施設位置
場所:
島根県松江市
人口:
206千人
分類:
【市街地整備・改善】【商業施設】
【空き店舗・空きビル】
協議会:
あり
実施主体:
松江まちづくり株式会社

1.中心市街地の概要

 松江市は、鳥取・島根両県を統括する支店が多く置かれ、地域企業の本社も多く、山陰経済の中核都市です。また、城下町らしい街並みを活かした観光スポットも多く、宍道湖に接する水の都であり、歴史文化と自然に恵まれた「国際文化観光都市」です。

 松江市中心市街地は、戦災を免れ、城下町の町割りが残されている半面、車社会に対応して行政、商業、居住などの諸機能の多くが郊外に移る傾向にあり、都市機能の空洞化が進行しつつあります。

2.中心市街地活性化への取り組み

中心市街地内の主要施設位置

 中心市街地の大橋川北側は、南殿町商店街、京店商店街、カラコロ工房などが集積し、松江城、松江歴史館、松江大橋、松江駅を結ぶ観光回遊ルートのつなぎの位置にあり、市の顔とも言うべき中心エリアで、「カラコロエリア」と呼ばれています。「カラコロ」とは、明治期の文人小泉八雲が当時木橋であった松江大橋をわたる下駄の響く音を「カラコロ」と表現したところに由来しています。 エリアでは、平成10年に一畑百貨店が松江駅前に移転し、来街者が大幅に減少したことから、まちの活力が低下することに危機感を抱いた地元有志によって、平成17年10月に松江まちづくり㈱が立ち上げられました。以来、「カラコロエリア賑わい創出事業」に取り組んでいます。

 この間、松江市では、平成18年12月に松江商工会議所を中心に中心市街地活性化協議会を設立、平成20年7月に中心市街地活性化基本計画の認定を得ました。引き続き、平成25年3月には二期計画の認定を受け、継続的に中活事業に取り組んでいるところです。

3.カラコロエリア賑わい創出事業の取り組み

①一期基本計画(平成20年7月~平成25年3月)

 平成12年、日銀松江支店跡建物を活用した「カラコロ工房」が開館したことを契機に、平成19年5月に松江まちづくり㈱は老舗旅館であった「蓬莱荘」のリノベーションを実現させました。 そのような中で、平成20年3月、中小機構は「松江市中心市街地活性化 サポート事業C型 別ウィンドウで開きます 」を実施し、「松江らしさに触れるまち」というエリアコンセプトを明確にし、エリアの小路の整備やソフト事業をまとめ、「カラコロエリア賑わい創出事業構想」として提言しました。

 この提言を基に、平成20年6月末には殿町地区でまちなか居住を進める市街地再開発事業が実現、平成24年9月末には旧山陰合同銀行北支店が「ごうぎんカラコロ美術館」としてオープンするなど、構想の一部が実現しています。また、平成19年度から5年間開催された「松江開府400年記念博覧会」における「縁結び」をテーマとした「まち歩き観光」の取り組みで、カラコロエリアを回遊する観光客も増加しつつあります。

リニューアル後の施設

②二期基本計画(平成25年4月~平成30年3月)

中心市街地内の主要施設位置

 しかしながら、エリア内のカラコロ通りは、観光回遊動線としての立地性を活かしきれていない現状があり、沿道の老舗書店を中心とした共同建替えを通して、来街者の回遊性を高め、交流人口と同時に居住人口を増やす集客拠点形成を二期基本計画の重要事業として取り組むこととなりました。

 中小機構では、平成24年10月から平成25年3月までの半年間、

プロジェクト型サポート事業(旧C型) 別ウィンドウで開きます

を実施し、集客拠点形成事業の組み立てとともに、エリアの具体的な整備のあり方を検討するお手伝いを行い、「カラコロスクエア(仮称)事業構想」として提言しています。

4.カラコロスクエア(仮称)事業構想

 本事業構想は、身の丈開発による共同建替え事業を方向づけ、カラコロエリア全体を松江らしい文化性をつなぐ「知の地域づくり、ネットワークづくり」をコンセプトに、その中核となる拠点づくりとして「周辺のカラコロ工房やごうぎんカラコロ美術館とともに、カラコロエリアの文化的機能を発信する、複合機能を持った新しい文化情報発信拠点」を実現させることを目指しています。

 また、商業的な拠点とするため、新たな発信力のある業態を考案して、カラコロ工房・ごうぎんカラコロ美術館と一体となった松江らしい生活文化・アート拠点を創り出しつつ、周辺商店街の空き店舗の活用、かつ、奥の小径沿いの既存建物の修復・再生を連動させ、小規模な飲食や若者がチャレンジするアトリエ・工房等をネットワーク的に誘導する構想です。

リニューアル後の施設

5.事業効果への期待と今後の課題

中心市街地内の主要施設位置

 カラコロエリアは、松江城や京橋川の流れを背景に景観的魅力が潜在しており、本事業による拠点形成及び散策路等の整備によって、街なか観光の回遊性を促すとともに、、商業機能と居住機能が複合する豊かな居住ゾーンとして、松江市の中心市街地活性化の先導的事業効果が期待されます。

 カラコロエリア賑わい創出事業は、点を線あるいは面に繋げていくことが課題ですが、松江まちづくり㈱の組織強化によって、その役割を一層力強いものとし、南殿町商店会の活動もけん引する形で、エリア内の様々の事業をネットワーク化し、エリアとしてトータルなまちづくりを実現させていくことが、松江市中心市街地活性化の重要なポイントといえます。

6.関係者の声

中心市街地内の主要施設位置

 「カラコロエリア賑わい創出事業」におけるサポート事業の効果について、松江まちづくり(株)のマネジメントリーダーは次の3点を強調されました。

 一つ目は、エリアとしてのまちづくりの有効性に視野がひろがったことで、松江まちづくり㈱が、単発の事業実現に対する役割だけでなく、南殿町商店会との連携、多様な関係者を結びつけ、コーディネーターの役割を果たすことの必要性を認識できたことに意義があった。

 二つ目に、身の丈開発による段階的、連鎖的整備の実効性に気づいたことで、事業効果を狙うあまり、規模をかせいで事業を実現させようと考えるのではなく、出来るところから、効果的な事業を選択し、確実に実現させていくことの実効性を再認識し、まちづくりのプログラムを発想するに至ったことは大きかった。

 三つ目に、商業的ソフト戦略の重要性が自覚できたことで、事業的に単にテナントで店が埋まればよいと考えるのではなく、起業・出店したいもの、出来るものを集め、希望者と共にプロジェクトコンセプトを共有し、全体として事業性を上げていく意識が芽生えたことで、商店街との信頼関係が深まり、連携がより強まっている。

7.終わりに

 元来、伝統文化資源に恵まれた松江市ですが、それらを「松江らしさ」として新たな魅力にブラッシュアップしようとする中心市街地活性化の取り組み姿勢は、多くの地方都市で身の丈を考えるまちづくりの参考となるものと思われます。

<取材日H25年9月>

関連リンク

松江市中心市街地活性化協議会