古都 中心市街地「商業振興インキュベーション施設 きらっ都・奈良」 変わりはじめた古都の商店街
ポイント
- 商業ビルの再生
- 中心市街地における、商業インキュベーション施設としての役割
- 場所:
- 奈良県奈良市
- 人口:
- 36.5万人
- 分類:
- 【空き店舗・空きビル】【商業施設】
- 対象地域:
- 奈良市中心市街地
- 協議会:
- あり
- 実施主体:
- 株式会社まちづくり奈良
- 関連HP:
- まちづくり奈良
1.まちの概要
規模・人口
奈良市は奈良県北部に位置する県庁所在地であり、市域面積276.84㎢、人口約365千人の中核市です。710年に「平城京」として都が開かれ、現在市では、1300年の歴史が生み出した資源を有効に活用し、多くの観光客で賑わう「国際観光経済都市」をめざしたまちづくりが行われています。
中心市街地の現況
平成20年3月12日に認定を受けた「奈良市中心市街地活性化基本計画」に基づき、様々な事業がこれまで行われてきました。中心部の主な商店街には、近鉄奈良駅前から南北方向に延びる、「東向商店街」、「小西さくら通り商店街」、古い町並みが残る“ならまち”に至る「もちいどのセンター街」と、JR奈良駅に向かって東西に延びる「三条通ショッピングモール」があります。
特に、今回、ご紹介する施設「きらっ都・奈良」が立地する「もちいどのセンター街」は、起業家を集めた商業インキュベーション施設「もちいどの夢CUBE(キューブ)」や戦略補助金を活用したスーパーマーケット「オーケスト」が展開している全国的にも名高い商店街です。
2.「きらっ都・奈良」 事業・施設の内容
1.事業の経緯・目的
「旧奈良マーチャントシードセンター(NMSC)」(市外郭団体運営)は、平成3年に、もちいどのセンター街入口に開館され、商業近代化と地域経済の活性化を図ってきましたが、平成22年に閉館の方針が出されました。その後、当施設の利用方法について、市と中心市街地活性化協議会、地元商業者が中心となり、検討を行ってきました。
市の「奈良のスター起業家の育成」という目標もあり、平成23年に設立したまちづくり会社が事業主体となって、商業振興インキュベーション施設としての役割を担うこととなりました。
2.事業内容
まちづくり会社が、NMSCを「商業振興インキュベーション施設」として再生・ 整備していくにあたり、中小機構の
中心市街地商業活性化診断・サポート事業 別ウィンドウで開きます
を活用しました。その中で、市民ニーズの調査結果を踏まえ、必要機能、施設コンセプト、施設の運営・管理体制、収支計画等について検討しました。施設全体のコンセプト設定も当初から地元関係者と議論を重ね、「時めくヒト、ときめくモノ・コトが集う場」と決定しました。
そして、施設の1階から4階、それぞれにテーマ・機能を持たせ、テナントミックスを行いました。
施設の名称も、「きらっ都・奈良」に決定し、平成24年10月1日(月)には、1階全区画の出店者が決定した状態で、リニューアル・オープンしました。
フロア | フロアテーマ | 機能 | 部屋数等 |
---|---|---|---|
4階 | きぎょう | きらめくアイデアを持つアーリーステージの起業家が、ビジネス経験を積み、将来奈良のスター起業家となって時めくべく力をつける場。 |
まちづくり会社入居。 他6室貸室、貸会議室 |
3階 | らんくアップ | 起業支援者による経営相談・デザイン指導・メンタリング等のサポートが受けられ、起業家がランクアップ・レベルアップしていく場。 |
貸研修室 他3室貸室 |
2階 | つながり | 起業家・起業支援者・商業者・市民等が、セミナー・展示会等イベントを通じて交流、繋がりを深め、ときめきの“相乗効果”が生じる場。 | 貸フリースペース |
1階 | ときめき | きらめくアイデアを持ったアーリーステージの商業者が、店舗経営経験を積み、将来奈良のスター起業家となって時めくべく力をつける場。又、お店を訪れる消費者が、きらっと光る商品・サービスに出会い、心ときめく場。 |
10室貸室。 飲食、小売が中心 |
3.施設完成後の状況
「きらっ都・奈良」は、オープンから約1年が経過しました。この間、1階(ときめきのフロア)では、テナント構成の見直しを図りながらも、地元起業家のスタートラインの場として、まちづくり会社が中心となって、地元起業家10者の事業計画を見据え、経営をサポートしています。2階(つながりのフロア)では、ビジネスカフェや映画上映会、音楽イベントを開催する等、様々な市民活動が行われています。
一方で、もちいどのセンター街全体に、新しい動きがでてきています。前述した、商業インキュベーション施設「もちいどの夢CUBE(キューブ)」の向かいには、平成25年2月に、雑貨を中心としたショップが12店舗入居する「夢長屋」がオープンしました。もちいどのセンター街は、こうしたショップへの来店を目的とした、若者の流れが非常に多くなりました。
4.今後の課題
もちいどのセンター街内の3つの商業施設を中心に、若者・起業家のエネルギーが他商店街を含め、まち全体に波及していくためには、まちづくり会社の役割は一層重要となりました。商業活性化事業と併せ、様々な取組みが中心市街地全体で行われ始めた中、中活計画等をベースに、長期的なビジョンを共有していくマネジメント的な活動も求められるようになってきました。
5.関係者の声
今回、中小機構の 中心市街地商業活性化診断・サポート事業 別ウィンドウで開きます の中で、「もちいどのセンター街」への来街目的、当該施設「きらっ都・奈良」に備えるべき機能について、市民調査を行い、オープン前に検証できたことは、特に、1階店舗のテナント業種構成のヒントにつながりました。また、2階フリースペースの活用については、他地域の市民交流事例を参考に、利活用の方向性を定めることができました。
6.取材を終えて
奈良といえば、日本人なら誰もが、古都というイメージを抱く中、中心市街地は、ならまちを中心に、昨今は多数の外国人観光客が訪れ、商店街の業種構成は、観光客向けの業種が多くなっています。 「奈良のスター起業家の育成」という目標は、これまでとは違う切り口で中心市街地を盛り上げていく要素として、興味深いものです。 まちづくり会社が入居、管理・運営する「きらっ都・奈良」が、奈良の新しい拠点としてまちの魅力を発信していくことを市民が期待しています。
<取材日H25年8月>