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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

松江市中心市街地活性化協議会

取組のポイント

行政、商工会議所、協議会の連携体制
柔軟性に富む協議会の組織構成
歴史的観光資源の活用

松江城

1.協議会の概要

協議会名:
松江市中心市街地活性化協議会
所在地:
島根県松江市
設置日:
平成18年12月7日
構成員:
39名
【都市機能増進】(公財)松江市観光振興公社
【経済活力向上】松江商工会議所
主な構成員:
松江市、松江商工会議所、(公財)松江市観光振興公社、島根大学、松江まちづくり(株)、NPO法人 松江ツーリズム研究会、NPO法人まつえ・まちづくり塾、合同会社 だんだんまちづくり会社、松江商店会連合会 他
参考URL

松江市中心市街地活性化協議会 別ウィンドウで開きます


2.まちの概要

位置・人口・交通アクセス

 松江市は島根県の東部(出雲地方)に位置し、宍道湖と中海をつなぐ大橋川の南北に大きく広がる人口20万6千人の県庁所在地です。平成17年度・23年度の2回にわたって八束郡8町村と合併しています。市の中心部は、松江城を中心とする旧城下町と隣接する明治期に開設されたJR松江駅周辺を含むエリアで、江戸時代から今日にいたるまで商業や暮らしの中心となっています。

 交通アクセスは、出雲空港から連絡バスで40分です。

松江市の位置

3.中心市街地活性化への取組み

(1)まちの現状

中心市街地エリア

 松江市全体の人口はほぼ横ばいで推移していますが、中心市街地ではこの20年で約2割減少しています。また、高齢化率は全市の24%に対し中心市街地では29%と高くなっています。

 商業では、周辺に立地した郊外店の影響や往年の商業の中心だった南殿町に出店していた百貨店の移転などによって商店が少なくなり、駐車場や空き家があちこちに増加しています。京店商店街は近年飲食店が増え、空き店舗も減少し賑わいが回復しています。

 観光客は中心市街地の観光入込では年間350万人訪れていますが、松江城周辺の限られたエリアに集中しており、他の施設への入込数は減少しています。

(2)主な活性化事業

 1期基本計画の各種事業が平成20年7月から取組まれました。

 「観光・交流」・「近隣集客拠点」・「まちなか居住」の3つの基本方針の下、実施された主な事業は次のとおりです。

 (ア)松江歴史館及び宍道湖しじみ館整備事業
 (イ)松江開府400年祭の開催(複数年)
 (ウ)母衣(ほろ)町地区暮らし・賑わい再生事業(日赤病院の建替え)
 (エ) 南殿町地区第1種市街地再開発事業(店舗・住宅の複合施設) 他

松江歴史館

そして、平成25年3月に2期基本計画が認定され、活性化への次のステップがスタートしました。

 2期基本計画の主な事業は次のとおりです。

 (ア)千鳥町(松江しんじ湖温泉地区)ビル再生事業(商業・老人ホーム・温浴施設)
 (イ)武家屋敷、小泉八雲記念館等の修理・整備
 (ウ)まちあるき観光推進事業
 (エ)商店街イベント、チャレンジショップ支援事業 他

4.協議会について

(1)概要

 1期基本計画により核となる施設が整備されました。この間、協議会の活動は各事業の推進に関与していましたが、「基本計画への意見」「基本計画事業の進捗確認」「構成員相互の情報交換」が中心でした。

 また、部会等の下部組織はなく、協議会として具体的に事業について検討するということはありませんでした。

 しかし、計画が満了する約1年前から、「満了後の取組みをどうするか?」「今のままの組織と活動で良いか?」という問いが事務局の中から生まれ、事務局は構成員1人1人を訪ね、1期の総括を含め今後の方向性について意見を交わしました。

 その結果、現在の協議会は次のように変わりました。

(2)協議会組織

 商店街組合等との連携をより強化するために、2名のまちづくりサポーター(常勤)が配置されました。

 事務局は、行政、商工会議所、まちづくりサポーターの三者で、毎月「運営会議」が開催されています。運営会議以外でも日常的に立寄り、相談や打合せが頻繁に行われています。

松江市、松江商工会議所、まちづくりサポーターの方々

 現在、まちづくりサポーターは、商店街組合等の各種会合に出席し、地域の各種団体等との連携強化を図っています。

 そして、1期基本計画から継続した3つの基本方針(観光・交流、近隣集客拠点、まちなか居住)毎に「ワーキンググループ」として3つの「部会」が設置されました。メンバーは構成員を中心としつつ、構成員の横のつながりの中から「ワーキンググループにこの組織、人に入ってほしい。」という方々に声をかけ参加してもらいました。組織で入っている場合は、1人でも2人でも会議への出席人数は自由です。

部会(チーム)の活動風景

 各部会の人数は平均10人で、月に1回のペースで会議が開かれています。

 それぞれ取組課題を協議し、協議会(全体会)に状況を報告します。

 さらに、3つの基本方針毎に作ったワーキンググループ(3部会)ですが、部会ごとに開催した最初の会議時に、「自分(達)はこのような取組をしたい。」というプレゼンを行いました。その結果、取組のテーマが同じ者同士数人で「チーム」を立上げ、これまで熱心に意見が交わされています。チームでの協議結果は、各部会内で毎回共有します。

 また、協議が進み具体性を増し、実現する可能性が高くなった取組は、協議会の了承の下、関係者を加えた実行組織である「プロジェクト会議」としてスタートします。

 このことから、2期基本計画で取組まれる事業は決まってはいますが、今後、これを超え多くの新規事業が生まれる可能性が高くなっています。

 現在のところ、3部会のチームは次の6種類です。

ワーキンググループ チーム
○観光・交流部会 (1) 駅周辺短時間観光プラン
(2) 2~3泊ゆっくり観光プラン(お昼のランチのご紹介を含む。)
○近隣集客拠点部会 (1) 空き家をこじあけよう
(2) G・G(おじいさん・おばあさん)プロジェクト
(3) 市立病院跡地を考える
○まちなか居住部会 (1) 学生をまちなかへ呼ぼう
松江市中心市街地活性化協議会組織図

5.今後の課題

 1期基本計画の取組みを満了しても、多くの観光客が集まる松江城と駅周辺の商業エリアの回遊性の向上や、まちなかで様々な世代の人たちが住まう環境づくりが課題となっています。  また、まちなかに集まりつつある人の流れを経済活動につなげていく取組も課題です。

 これにはハード・ソフト両方の取組みが不可欠です。

 このため、1期基本計画での施設整備や各種イベント事業の展開をベースに、2期基本計画ではさらなる施設整備と「ワーキンググループ(部会)」・「プロジェクト会議」による活発な取組が推進されます。

 協議会がこれからどのように発展・進化し、各種事業が展開されていくのか、関係者の間で期待が高まっています。

 ちょうどこのタイミングで、協議会がより機能を発揮できるよう、行政、商工会議所、協議会そしてまちなかの各種組織等が有機的に結びついたネットワークが出来上がりました。

 中心市街地活性化にハード整備は重要な要素ですが、松江市ではそれに加え、ハードを活かす広汎な人の輪が広がっています。第2期協議会の構成員は現在の39人から増える見込みです。

 中心市街地活性化エリアの活性化に向け、協議会をはじめとするこれらの組織がどのように連携し動いていくのか注目されます。

 これからの課題として、構成員の増える協議会と、プロジェクト毎に立ち上げるプロジェクト会議の間を調整する何らかの仕組みを置くことが必要になるかもしれません。それにより、取組事業のスムーズな実施と組織全体としての強さの向上が期待できます。

6.まちの声

 南殿町の方に聞いてみました。  「昔、デパートがあったころは商店もたくさんあり、賑やかなまちでした。今は、人が歩いていない寂しいまちになっています。でも、松江歴史館ができたり、マンションが建ったり、開府400年祭が開催されたりと、まちに明るい話題が聞こえるようになりました。このようなことがもっと行われるよう、取組んでいる方々にはがんばってほしいと思います。」と、関係者への大きな期待が寄せられました。

7.取材を終えて

 松江市の協議会は大きく変わりました。歴史の重みある都市のイメージとは逆に、今の協議会の運営は、若く明るくフットワークの良い軽やかな印象を受けるものでした。

 これからどのように発展し、新しいイベント等の事業が展開されるのでしょうか。

 2期基本計画の5年間を注目したいと思います。

取材日 平成25年5月