コミュニティが次々と生まれるまち
ポイント
- 空き店舗活用で地域コミュニティづくり
- 高齢者と幼児と親との世代間交流
- コミュニティビジネスの新規開業
- 取組の全体をつなげる人材の存在
- 場所:
- 愛媛県四国中央市
- 人口:
- 約9.2万人
- 分類:
- 【空き店舗・空きビル】【交流施設】【コミュニティビジネス】
- 協議会:
- あり
- 実施主体:
- 川之江栄町商店街振興組合、特定非営利活動法人「にっこりーの」
- 支援策
- 中小商業活力向上事業(経済産業省)、
地域子育て支援拠点事業(厚生労働省)、
地域流通モデル構築支援事業(農林水産省)、
緊急雇用創出事業(愛媛県)、
にこにこルームの運営委託事業(四国中央市)
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1.まちの概要
(1)四国中央市の概要
愛媛県東部に位置する四国中央市は、平成16年4月に、川之江市、伊予三島市、土居町、新宮村が合併して誕生しました。古来から瀬戸内海の舟運で栄え、伊予、土佐、阿波への要衝の地で、香川県、徳島県、高知県と県境を接し、四国4県都へ向けて高速道路が分岐しています。臨海部には二百年の歴史を持つといわれる製紙業が立地し、紙製品の出荷額は全国一を誇ります。
(2)中心市街地の概要
幹線道路沿いにはロードサイド型の大型店が出店しています。川之江地区の中心市街地はJR川之江駅周辺の商店街を中心とするエリアです。
2.中心市街地活性化の取り組み
川之江栄町商店街振興組合(以下「商店街組合」)では、平成16年の市町村合併の際に空き店舗を活用した情報発信基地「四国中央ドットコム(みんなの広場)」を整備しました。そこでは、レンタルボックスを設置して住民による手作りグッズの販売や各種教室、パソコン教室などが1階で開かれています。参加者のなかから世話人が現れるなどサロン的な雰囲気が好評でアクティブシニアの来訪者が増えました。
レンタルボックスの展開を受けて、アマチュア作家や主婦の手作り作品を販売する店舗(栄町エコサロン『ドリーム』)が商店街の空き店舗に進出し、現在では主婦グループが独立運営をしています。
転勤族の子育て世代が多い地区の特性から、3歳までの子どもを対象に会員制(無料)による親子のくつろぎスペース「にこにこルーム」を2階に開設したところ、口コミで利用者が毎月1,000人(県外からも!)を越えるようになりました。さらに主婦の口コミで選んだ市内の施設等を紹介するマップも作成。そして1階に集まる高齢者と2階の子育て世代との交流が自ずと始まりました。「にこにこルーム」は、平成19年に設立されたNPO法人が市からの委託を受けて運営を行っています。
アーケード内で商店街組合が地元漁協と提携して行う鮮魚などの生鮮市「食の回廊」事業は、常設店舗でも営業を行うようになり、平成24年4月からは観光物産館「えぇ~もん屋」と統合し商店街組合が運営しています。魚は調理済で、さらに一人暮らしの住民でも購入しやすいよう少量でも販売されています。また、民間の介護施設も商店街内に新規創業するなど連鎖の動きが見られます。商店街と周辺の事業所は、市から土地を借り上げて商店街の利用者に無料で駐車場として開放しており、このことも利用者の利便性につながっています。
このように、川之江栄町では「みんなの広場」の取組みがきっかけで住民の心がつながり、コミュニティ事業が波及していきました。初動期には各省庁の補助金を活用するものの、実験事業終了後も担い手が現れて継続して取組みを続けています。
3.取組みの成果
商店街が地域コミュニティの場を提供していることが高く評価され、まちに足繁く通うファンが生まれたことで、飲食店・カフェ、一部の買回品店では売上増加につながっています。
4.今後の課題
商店街が「新しい公共」の担い手としてコミュニティの賑わいが実現できました。今後は商店街(個店)のファンづくりを計画的に実施していくことが望まれます。
5.関係者の声
四国中央ドットコムの取り組みには、アイデアを実現化し運営に至るまで関わっている栄町商店街の高原茂副理事長の存在が欠かせません。呉服屋の4代目でもある高原さんは「人のつながりからコミュニティが次々と生まれています。場を提供することは商店街の使命と考えます。」と語っています。
高原副理事長の熱意と思いが共感の輪を拡げ、手作り感のある施設に人が集まってきています。1階を利用する今村ハルミさんは2階の「にこにこルーム」にも顔を出します。「子どももお母さんも、おばあちゃんに会いたいと言ってくれるのがうれしい。」とのことです。川之江栄町は、きょうも大人も子供もたくさんの人々の居場所を提供しています。
<取材日H24年9月>