伝統文化を活かし、街の景観を守りながら中心市街地活性化を目指す!
ポイント
- 伝統的建造物群保存地区・商店街・新ショッピングセンターの回遊性の強化
- 地元文化・伝統工芸の新たな情報発信
- 場所:
- 岡山県倉敷市
- 人口:
- 約48.2万人
- 分類:
- 【空き店舗・空きビル】
- 協議会:
- あり
- 実施主体:
- 倉敷まちづくり(株)
- 支援策
- 戦略的中心市街地商業等活性化補助金
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- 林源十郎商店
1.まちの概要
(1)特色
中国地域で広島市、岡山市に次ぐ第3の規模を誇る倉敷市は、全国的に知られた観光都市でもあります。
その中心市街地は、倉敷駅南側の年間約350万人が訪れる観光スポット「倉敷美観地区(伝統的建造物群保存地区)」を筆頭に、倉敷駅を挟んで北側に平成23年11月に開業した大型ショッピングセンター「Ario」と三井アウトレットモール、そして駅と美観地区の間に天満屋百貨店、商店街などを抱える商業地域、また年間約300万人と全国で5番目に来院数が多いと言われている「倉敷中央病院」があり、その交流人口は全国の地方都市でも有数なものとなっています。
しかし、駅南側の商店街では大型店舗の出店、商業者の高齢化などにより、空き店舗・空き地が増え、売上高や歩行者通行量も減少し、住民の高齢化が進み、交流人口の割には中心市街地の賑わいは精彩を欠いています。
2.中心市街地活性化への取組
このことに対して、倉敷市は基本計画を立案し、また、倉敷商工会議所が中心となって中心市街地活性化協議会を設立。平成22年3月に内閣府の認定を受けて新たな事業に取組んできました。
(1)倉敷物語館周辺整備事業
この事業は基本計画にも記載され、倉敷まちづくり(株)が主体となって、美観地区入口にある倉敷物語館周辺の空き店舗・空き地を活用して、倉敷駅ゾーンと商店街及び美観地区の回遊性強化を目的として商業施設等を整備するものです。
(2)林源十郎商店の再整備
その嚆矢(こうし)となるのが、林源十郎商店の活用でした。林源十郎商店は明暦3年(1657年)に誕生した薬種問屋で、350年の歴史を誇る倉敷でも有数の老舗である。その後、本社(現:㈱エバルス)を広島に移転し、長らく空き店舗・空き家になっていました。中小機構では、平成22年6月から12月の半年間、プロジェクト型サポート事業を実施し、活用の方針、テナントリーシング等について支援してきました。そして平成24年3月、経産省戦略補助金を活用し、古い趣を活かしながらリニューアルし、新たな姿を現しました。
そのテナント構成は、中庭を活かして倉敷の伝統文化を発信する「生活デザインミュージアム」、地場産業のデニムを活かした「オリジナルデニム工房」、地元の旬の食材にこだわった「創作料理店」などで構成されています。また、屋上からは倉敷の古い街並みが一望できます。
3.取組の効果
林源十郎商店はオープンから半年程度ですが、倉敷駅周辺の商業施設からの流入客、美観地区の観光客や地元住民にも支持を得て賑わっています。また、それまで商店街に足を向けなかった観光客が商店街で買い物をするという効果も出始めてきました。さらに、この事業に触発された商店街の若手経営者が、新たな事業に取組む動きも出てきました。24年度は林源十郎商店に続き、戦略補助金事業を活用し「奈良萬街区再生整備事業」、「白井邸整備事業」も進展してきています。
4.今後の課題
前述のとおり、倉敷物語館周辺整備事業は着々と行われていますが、近隣の一番街の再生事業、阿知3丁目の再開発、旧天満屋跡地の整備事業なども計画されています。これらの計画とこれまでの事業とをどのようにネットワーク化し、さらなる回遊性の向上を図ることが、倉敷市中心市街地活性化の重要なポイントといえます。
5.取材を終えて
伝統的建造物群保存地区など伝統文化に恵まれた倉敷市ですが、それを活かし、新たな資源としてリニューアルし、中心市街地活性化に取組む姿勢は、多くの地方都市での参考となると思います。
<取材日H24年10月>