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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

人に優しいスローライフが輝く街を目指す!

ポイント

  • 活発な市民団体などによる地域活動
  • 食によるまちおこし
  • 空き店舗への起業支援
場所:
福岡県久留米市
人口:
約31万人
分類:
【医療・福祉】【空き店舗・空きビル】【イベント】
協議会:
あり
実施主体:
久留米市、NPOシニア情報プラザ、(株)ハイマート久留米、久留米商工会議所
関連記事:
シニア情報プラザ久留米
 

http://www.kurume-mutsumon.info/index.html 別ウィンドウで開きます

 
六角堂広場
 

http://www.highmart-kurume.co.jp/rokkakudo/index.htm 別ウィンドウで開きます


1.まちの概要

(1)規模・人口

久留米市の位置

 久留米市は福岡県南西部、福岡市から約40Kmのところに位置する県内第3位の都市です。九州新幹線で博多・久留米間は15分、JR在来線快速でも35分という近さです。道路網も発達しており交通の利便性の非常に高い地域です。そのため福岡市のベッドタウンとしての色彩が強まっています。

 古くは久留米絣や足袋の製造で栄えましたが、足袋がゴム底の地下足袋へとつながり、これがゴム長や運動靴そしてタイヤへと進化し、世界最大手のタイヤメーカーへと発展しました。

 主要な駅は中心市街地エリアの東西端約1.5Kmの間隔でJR久留米駅と西鉄久留米駅の2つがあり、JR寄りが市役所・商工会議所や問屋街、西鉄寄りが大型店をはじめとする商業集積になっています。

2.まちの活性化への取組

(1)まちの課題

 久留米市の中心市街地エリアの商業は、市外近隣の大型商業集積と市内郊外の巨大SCの影響から非常に厳しい状況になっています。

 歩行者通行量、販売額、店舗数、売場面積は減少し、大型店の閉鎖や空き店舗の増加も目立ち、賑わいが失われつつあり商圏はずい分狭くなってきています。

 そして潜在購買力といえる中心市街地エリアの居住人口は12,000人台から微増していますが、高齢化率が市全体より高くバリアフリーなど施設の改善が求められています。

 一方、中心市街地エリアの南北に病床数1,000を超える大型病院が2つあり、県内外からの通院や見舞いに訪れる人が多く、公共交通機関を利用する高齢者などは中心市街地を経由するため、回遊性の向上が求められています。

(2)取組内容と効果

 このような状況を背景に基本計画が作成され、中心市街地の活性化が進められていますが、基本コンセプト「人に優しいスローライフが輝く街」を受けた「市民活動が活発に行われる街づくり」と「高齢者や子育て世代が安心して住みやすい街づくり」の2つの基本方針のもと以下の取組が実施されています。

(ⅰ)タウンモビリティ(事業主体:久留米市、NPOシニア情報プラザ)

こうれい研代表吉永美佐子氏

 タウンモビリティとは、外出しにくい高齢者や障がい者を対象に、自宅と市内中心のシニア情報プラザ間を送迎し、そこを起点に電動スクーター、車椅子、ベビーカーなどをボランティア同行で無料で貸し出し散策してもらうという取組です。利用者は年間1,200人前後です。NPO「こうれい研」の働きかけで2000年から開始されました。こうれい研代表であり地元病院理事の吉永美佐子氏は次のように語っています。

 「このような方々は外出するだけでパッと表情が明るくなり気持ちも元気になります。介護予防と社会保障費削減の観点からも重要なことと思っています。2005・6年度に利用者の購買調査をしましたが、1人当たり2,700~3,800円の購買で、中心市街地での一定の経済効果も発揮しています。」

(ⅱ)六ツ門大学(事業主体:(株)ハイマート久留米)

 中心市街地のほぼ真ん中の六ツ門地区に、2004年賑わい創出を目的として、おしゃれな六角堂広場が整備されました。そして、これを機に地元六ツ門商店街では有志が、新しいコミュニティ活動をつくろうと、(株)ハイマート久留米のバックアップを得、空きビルを活用した生涯学習拠点「六ツ門大学」を開校しました。内容は古典文学、経済学、外国語、絵画などですが、全体的に本格的な内容で、中身の濃さと手頃な授業料のため受講生の評判は上々です。年間550の講座に5,000人が受講しています。学生には顔写真付きの立派な学生証が発行され協力店での買物の割引が受けられます。

六つ門大学9月のカリキュラム表

(ⅲ)B級グルメの聖地(まち)事業(事業主体:久留米商工会議所)

食の八十八か所巡礼の旅通い帳

 1998年に久留米市の基幹産業である企業が経営破たんしました。この中、故郷を何とか元 気づけようと有志が「元祖とんこつラーメン」によるまちおこしを開始しました。続いて2003 年に地域ミニコミ誌と焼きとり業界がタッグを組み「焼きとり日本一」(人口当たり日本一焼 きとり店が多い(当時))を宣言し、以来「日本一の焼きとりフェスタ」を中心に取組まれて います。さらに地域のうどん店が結集し「筑後うどん振興会」を組織し、地域ブランドづく りと日本三大うどんの一角になることを目指す活動が開始されました。これらを背景として 2008年に第3回全国B-1グランプリ久留米大会が、翌年には九州大会がともに20万人以上 を集客し開催されました。

 久留米商工会議所では、これを機に「B級グルメの聖地」を宣言し、地域の食文化を広く 発信するとともに「食の八十八カ所巡礼の旅(スタンプラリー)」を2009年から毎年開催して います。これらは中心市街地をメインエリアとし、単なるブームでなく食文化の紹介という 視点で息の長い地域に根付いた活動として取組まれています。

 タウンモビリティなどの事業は地域に定着し継続的に取組まれており、来街や賑わい創出面で効果を発揮しています。さらに、活動を進めるなかでNPOをはじめとする市民活動グループが育ってきています。今後、地域活性化やコミュニティづくりの分野で大きな力になることが期待されています。

3.今後の課題と対応

久留米商工会議所商工振興課長行徳和弘氏

 中心市街地の課題として、まず歩行者通行量の減少があげられます。目標数値である休日の歩行者数は回復せず厳しい状況が続いています。一方で空き店舗率は改善しつつあり、飲食サービス業のシェアと居住人口は目標数値をクリアしたあるいはしつつあります。

 エリア内にマンションが多く建設され、売行きも好調で完売の物件も多いようです。

 また、空き店舗への起業を推進する「街なか起業家事業」が推進されており、行政、商工会議所をはじめとする関係者による手厚い集中的な支援体制ができています。この事業は2009年から始まりましたが、1~3期生の6人のうち3人は目標月商の1.1~2倍を達成しており、あと3人は今のところ2割ほど下回っていますが明るい見通しとなっています。これらのお店は中心市街地内の空き店舗に出店しており注目を集めています。起業による空き店舗対策の一層の推進が望まれます。

 今後の大型開発として、六ツ門地区での市民ホール(収容1,600人)とコンベンションホールの複合施設の建設が進められています。これは閉鎖した百貨店の跡地と六角堂広場を更地にして建設されるもので、現在の六角堂広場の機能は内包されます。これにより天候にかかわらずイベントが開催可能となり、活用策と効果が大きく期待されています。

4.取材を終えて

 六ツ門地区での複合施設が完成すると集客力が大きく改善されます。交通アクセスの良さを背景にイベントや展示会などの工夫と努力により中心市街地活性化への大きな力になる可能性があります。これに活発となった市民活動が連携し、また、商店街内への起業が推進されたならと、将来への明るいイメージを膨らませつつ取材を終えました。

<取材日H24年8月>