「温“古”知新」で若手経営者が集まるカミフル~新潟市上古町商店街~
ポイント
- 見て楽しい情報発信と来て楽しいイベント等のソフト事業
- 安全・安心を追求したハード整備
- 「温“古”知新」で愛されるまちづくりへの取組
- 場所:
- 新潟県新潟市
- 人口:
- 80万人
- 分類:
- 【商店街販促】【イベント】
- 協議会:
- あり
- 実施主体:
- 新潟市上古町商店街振興組合
- 支援策:
- 戦略的中心市街地商業等活性化支援事業費補助金(経済産業省)
- 参考URL:
- 新潟市上古町商店街振興組合
1.まちの概要
(1)規模・人口
新潟市は新潟県の県庁所在地であり、古くからみなとまちとして栄えています。平成19年には本州日本海側では初の政令指定都市となりました。人口803,719人(平成24年5月現在)、面積726.1k㎡で本州日本海側で最大規模を誇ります。
(2)交通アクセスなど
新潟市は首都圏から車で約3時間、新幹線では約2時間で直結しており、国際空港・国際港湾をもつ利便性の高い都市です。また上古町商店街のある新潟市古町地区へは、新潟駅からバスで約10分ほどで行くことが出来ます。
(3)中心市街地の状況
新潟市の中心市街地は、新潟駅を中心にビジネス街が広がる「新潟駅周辺地区」、昭和に入ってから飛躍的に大型店や百貨店が集まった「万代地区」、そして信濃川をまたぐ萬代橋を渡ると、古くから百貨店や老舗の小売店が並ぶ商業集積地であり、新潟市の商業・行政・文化の中心地区となっている「古町地区」の3地域に区分されます。
3つの地区が連携して多様な魅力を提供するまちを目指し、平成20年3月に中心市街地活性化基本計画を策定、内閣総理大臣の認定を受けました。
2.中心市街地活性化への取組
(1)課題・問題
新潟市では、市街地の人口増加に伴い、市民の生活の場も郊外へと拡がりました。郊外型の店舗が増えたことで中心市街地の空洞化が進み、事業所数や商業販売額、歩行者通行量は減少傾向にあります。新潟市はモノが集まるみなとまちとして発展してきたことから、特に商業の衰退は大きな問題です。
中心市街地活性化基本計画において、基本方針の一つに、「官民の協同による満足度の高い、魅力的な商業空間づくり」が掲げられています。
(2)活性化の取り組み(「上古町商店街」)
上古町商店街は、新潟市総鎮守である白山神社から古町地区の中心部まで約500mの沿道に集積する商店街で、白山神社や新潟市役所、新潟市文化会館などの文化ゾーンと古町中心部の商業ゾーンを結んでいます。
元々古町地区は、白山神社の門前町として、現在上古町商店街がある古町1丁目から4丁目までが商業集積地として発展しました。しかし昭和以降万代地区に大型店舗が次々と進出したことや、商店主の高齢化による廃業等で徐々に店舗が減少し、まちは求心力を失う危機にありました。このようなまちの衰退に歯止めをかけるべく、平成16年、「上古町まちづくり推進協議会」が発足しました。
上古町まちづくり推進協議会では、初め「NPO法人まちづくり学校」のサポートを受け約1年間まちの勉強をしました。また情報発信は重要であると認識し、まちのマーク「カミフルマーク」作成、情報誌「カミフルチャンネル」の発行、ホームページの開設などの情報発信ツールを整えました。
そして、商店街に足を運んでもらうためのきっかけとして、「上古門前市(かみふる門前音楽市)」や「かみふるまち食の福袋」など個性的なイベントをスタートさせ、今では認知度も高まっています。
このような活動の中、近隣住民や来街者に商店街に関するアンケートをとった結果、「明るいアーケードがほしい」という意見が多数を占めたことから、平成18年、上古町まちづくり推進協議会を前身とした「新潟市上古町商店街振興組合」を設立し、老朽化したアーケードを改築することになりました。
上古町商店街は、「人にやさしい、温かい商店街」をコンセプトに、幅・高さ・照明・色など、まちに最適なアーケード改築のために研究・実験を綿密に行いました。市や商工会議所と協議を重ねた計画は、「上古町商店街アーケード再整備事業」として中心市街地活性化基本計画に組み込まれ、「戦略的中心市街地商業等活性化補助金」を活用して平成21年完成に至りました。
歩道についても歩行者・自転車にとって安全・安心なものを徹底して研究し、舗装タイルには、店舗側に明るい色を配置することで店舗に明るい印象を持たせるなど、人を呼ぶためのさりげない工夫が凝らされています。また歩道の各所に街歩きマップの「上古町小路地図」を置くことで、来街者にとって優しく楽しい商店街づくりに取り組んでいます。
3.取組の効果
上古町商店街は「温古知新」(人に温かいまち、古きよきまち、心知り合うまち、新しいことにチャレンジするまち)をコンセプトにしています。時代が変わるにつれて店も変わることを認識しているからこそ、テーマに縛られない自然体で柔軟性のあるまちを目指しています。
上古町商店街には、「商店街の雰囲気に惹かれた」、「商店街の雰囲気と店のコンセプトが合う」という理由から若手経営者による個性的な店舗が増えています。空き店舗率は年々減少し、平成20年には24.7%だったものが平成23年には3.6%にまで回復しました。
また、個性的な店舗やまちの温かな雰囲気、イベントなどが話題を呼び、来街者も増加しています。現在では口コミによる新潟県内外からの出店希望の打診や、他の商店街からの視察も多く訪れています。
4.今後の課題
今後の上古町商店街においては、経営者やオーナーの意識の共有化が重要となります。
商店街の中にはまだ空き店舗は無くなっていません。かつては商売が営まれていた場所でも、事業から退き、新たに貸されることなくシャッターが閉められたままの店舗もあります。1.新規出店者が増える、2.通りが賑わう、3.商店街の価値が上がる、さらに新規出店者が増える、という良い循環を生むため、商店街の中でいかに「まちを活性化させる」という意識を共有化していくかが課題です。
5.関係者の声 まちの声
「まちの活性化のためには、各店舗はそれぞれ魅力をアップさせるという役割、商店街にはまちに人を呼ぶという役割がある。商店街として、お客さんに街を歩いていただき、店に入りたくなるような工夫をすることが商店街の役目。」と、新潟市上古町商店街振興組合の酒井専務理事は語られました。何よりも、お客さんに来ていただくために情報発信やイベント開催、環境整備など、コンセプトに沿った商店街づくりをしているとのことでした。
6.取材を終えて
上古町商店街には、ふと立ち寄ってみたくなるお店がいくつもありました。ゆっくりとした雰囲気の商店街は居心地が良く、何度でも訪れたくなります。また研究・実験を重ねられたアーケードや歩道を、実際に歩いてみると、歩道の幅や段差など来街者に対する細やかな配慮を実感出来ました。
様々なイベントは商店街を知ってもらうきっかけに過ぎず、普段は自然体で温かく来街者を迎えてくれるからこそ、上古町商店街が愛される理由であると感じました。 上古町商店街には、これからも「温古知新」のコンセプトを大切に、ファンを増やしてほしいと思います。そして古町地区、ひいては新潟市を代表する商店街として発展していただきたいと願っています。
<取材日H24年6月>