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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

2核中間点の空き蔵を活かして賑わいを創出

ポイント

  • 歴史ある建物の活用
  • 二分された賑わいを一つにまとめる
場所:
埼玉県川越市
人口:
34.5万人
分類:
【商業施設】【交流施設】【空き店舗(空き蔵)活用】
協議会:
あり
実施主体:
株式会社まちづくり川越
参考URL:
株式会社まちづくり川越

http://www.machikawa.co.jp/ 別ウィンドウで開きます


1.まちの概要

(1)規模・人口

川越市の位置

 川越市は、江戸時代幕府の北の守り、武蔵国一の格式ある大藩川越藩の城下町として栄え、「小江戸」(こえど)とも呼ばれる埼玉県南西部の中心都市です。人口は伸び率が鈍化したとはいえ増加傾向にあり、市内の観光名所には県内・近県を中心に年間約600万人の観光客が訪れます。都心からのアクセスでは池袋から東武東上線急行で30分という近さです。

 市中心部は、近接したJR川越駅、東武東上線川越駅、西武新宿線本川越駅の3駅とショッピングロード(クレアモール)やいくつもの大型店が立地している「南部地区」と住商混在の中間地域をはさみ市役所や商工会議所そして歴史的建造物や蔵づくりの街並みが続く観光地域でもある「北部地区」の2地区で構成されており、これらが中心市街地となっています。

川越中心部

2.まちの活性化への取組

(1)まちの課題と取組

 全体的には発展を続けている川越市ですが、中心市街地に目を向けると平日の歩行者通行量は減少しており、特に南部地区でこれが進んでいます。一方、休日は微増していますが、来街者の多くが3駅を起点として南部地区を通過して北部地区を訪れる傾向があります。それは小売業年間販売額の大幅な減少(平成9年、19年の比較で23.5%の減少)にも表れています。

 また、商業・飲食店数も減少しており、市内外では近隣自治体を含め郊外型大規模小売商業施設の進出が拡大しています。

 中心市街地の大きな課題は「賑わいの二分と商業の全般的落ち込み」であり、この課題を解消することが強く望まれています。

 川越市ではこの課題に対応するため、主だったものだけでも次の取組が行われています。
  昭和61年 コミュニティーマート構想へエントリー
  昭和63年 町づくり規範の策定
  平成元年 都市景観条例の施行
  平成 4年 蔵づくりの町並みの一番街電線類地中化完成
  平成11年 伝統的建造物群保存地区都市計画の決定
  平成11年 駅前商店街モール「クレアモール」の完成
 そして、平成21年には中心市街地活性化基本計画が認可され、今回訪問した「小江戸蔵里(こえどくらり)」をはじめとする活性化策が展開されています。

ショッピングモール

(2)小江戸蔵里の事業内容

  小江戸蔵里は、商業地域(南部地区)と観光地域(北部地区)の中間に位置します。中間地域で代々事業を営んできた鏡山酒造が明治・大正・昭和の時期に建設し、現存する蔵を、明治蔵は「おみやげ処(土産品販売)」、大正蔵は「まかない処(飲食)」、昭和蔵は「くら市場(地場野菜、・弁当・惣菜販売)」に、さらに隣接の瓶詰め作業場と倉庫は「つどい処(ギャラリー、会議室)」として平成22年に生まれ変わりました。この施設のねらいは、北部地区の観光客と南部地区市民の憩いの場として、また文化活動の場として利用してもらい賑わいの回復を図ることです。施設の運営管理は川越市、川越商工会議所などが株主の(株)まちづくり川越が行っています。

小江戸蔵里

 大正蔵にはステージがあり、落語会やコンサートなどが、また各蔵の外の広場には休憩のためのテーブルとベンチが置かれフリーマーケットや野菜の朝市さらにB級グルメ物産展などの各種イベントが開かれており、市民交流の絶好の機会となっています。

 取扱商品で特徴的なこととして、ここに出店している菓子店が新たに菓子を開発した際、それを市街地の本店ではなく小江戸蔵里だけに置き、アンテナショップとして活用している例が見られます。また、地元の特産織物を材料に市内の授産施設で作られた工芸品を置いており、一定の売上を確保しています。

(3)取組の効果

 これらの活動と小江戸観光協会や市と連携した都内ターミナル駅や横浜駅での観光客誘致イベントにより、小江戸蔵里前の歩行者・自転車通行量は、休日では0.4%の微増ですが平日では51%増加(平成19年と24年の比較)しており、全体的に大きな前進がみられます。来街者についても、従来は少なかった神奈川県や千葉県からも増加している感触があり将来に期待がふくらんでいます。

 また、予想外の嬉しい来店者として、市内高齢者施設の方々が施設のマイクロバスで訪れるようになりました。皆さん嬉しそうに買い物をし、おしゃべりをし、食事をされるそうです。久しぶりの機会のためか客単価も一般のお客様より高めとのことで、本当に思わぬプラス効果になっています。

 この、神奈川県や千葉県そして高齢者施設の方々は今までほとんどいなかった新規の来街者で通行量や購買額の増加に直結しています。

4.今後の課題と対応

植木さん

 明るい状況も見えてきている小江戸蔵里ですが、オープンしてまだ1年半ということもあり、施設の売上額が目標の7割と下回っています。商品アイテムごとの売上と陳列スペースを見直し、これまでの商品は6割のスペースにとどめ、新たな4割のスペースには別の商品を陳列するなど効率化に努力していますし、バックヤードに野菜用の冷蔵庫を新規導入し、夏場の品切れを防止し売上アップを図るなど店舗運営の改善にも取り組んでいます。さらに今後も来街者アップを図るため、県内外のターミナル駅でのPRや市内高齢者施設への来街・来店勧誘そしてイベント活動などの販促活動にも力を注いでいく予定です。

また、(株)まちづくり川越としてのこれからの活性化対策ですが、7月にはタウンマネージャーが設置され、秋には「コミュニティサイクルの社会実験」が始まります。自転車ターミナルを乗り継ぐことにより、さらに遠くの名所旧跡への移動が容易になることから広域的な回遊性の向上が期待されています。また、民間ベースのワーキンググループを組織して①空地・空き店舗対策②滞在時間向上対策③街づくり活動への支援を進めていくことになっています。

小江戸蔵里の植木営業マネージャーに今後の抱負をお聞きしました。

 「小江戸蔵里は独立採算のため、いろいろな事業を行うには一定の収益の確保が必要です。今後とも販促活動に一層力を入れていきたい。今の感触として売上目標の達成は射程に入っています。
 また、(株)まちづくり川越は行政や商店街との連携のもと、一本の賑わいのある商店街が二本・三本と増え、面としてもっと賑わうようになることを目標に努力していきます。」

5.まちの声

  大正蔵(まかない処)の従業員の方がこんな話をしてくれました。「この施設には観光客だけでなく地元の方もたくさん来て欲しいんです。みんなに愛される小江戸蔵里になって欲しいんです。ですから地元の方にも売れるようボリューム感のある見た目の華やかなお弁当や惣菜の新メニューを工夫していろいろ作っているんです。」

 孫子に「上下、欲を同じくする者は勝つ。」という言葉があります。

 マネージャーだけでなく従業員の隅々にまで小江戸蔵里の果たす役割が理解され、同じ気持ちで賑わいのあるまちづくりに取組んでいることが分かりました。小江戸蔵里の今後の発展に期待がふくらみます。

<取材日H24年6月>