地域密着型コミュニティバス「金沢ふらっとバス」
ポイント
- 誰にでもやさしい、親しみやすいコミュニティバス
- 交通不便地域の解消
- 場所:
- 石川県 金沢市
- 人口:
- 46.3万人
- 分類:
- 【公共交通】
- 協議会:
- あり
- 支援策:
- 社会資本整備総合交付金(国土交通省)
- 実施主体:
- 金沢市
- 参考URL:
- 金沢ふらっとバス
1.まちの概要
(1)規模・人口
金沢市は、石川県の中央部に位置する石川県の県庁所在地であり、約468k㎡の都市です。人口は約46万人で、近年ではほぼ横ばいであるが微増傾向にあります。
(2)交通アクセスなど
金沢駅はJRの在来線特急・急行・寝台列車・トワイライトエクスプレスなどが発着しており、大阪をはじめ主要都市へのアクセスは容易となっています。また、2014年度には北陸新幹線の金沢~長野間が開業予定となっています。自動車では北陸自動車道の金沢東IC・金沢西ICから15分程度で中心街へ行くことができます。
(3)まちの現状
江戸時代には、加賀百万石の城下町として栄え、人口規模では江戸・大坂・京の三都に次ぐ大都市でした。第二次世界大戦でも戦災を受けなかったことから、城下町のまちなみが残っており、石川県の県庁所在地として、政治、文化、経済の中心として発展し続けました。現在では兼六園(日本三名園)、伝統工芸などにより、観光都市としても有名で、自ら世界に向け発信していく世界都市を目指しています。(金沢市中心市街地活性化基本計画より一部抜粋)
2.まちの活性化への取組み
(1)課題・問題
金沢市の中心部は戦災を免れたため、藩政時代の入り組んだ街路がそのまま残っており、通常の大きさのバスが通ることができない地域(交通不便地域)が存在していました。そして、その交通不便地域で生活する高齢者や主婦などの交通手段をもたない人々から交通不便の解消の訴えが上がっていました。
(2)取り組み
このような状況の中で、金沢市はコミュニティバス導入の検討を始めました。平成9年度には「コミュニティバス検討委員会」を設置して、路線や運賃について検討し、平成11年には「金沢ふらっとバス」と命名され、此花ルートが開通しました。続いて、平成12年に菊川ルート、平成15年に材木ルート、平成20年には長町ルートが開通しました。(現在は4ルート)
(3)具体的な方法
1.運営主体
「金沢ふらっとバス」は事業主体である金沢市が民間事業者(北陸鉄道㈱、西日本JR㈱)に運行を依頼し、実施しています。
2.路線
路線は此花ルート、菊川ルート、材木ルート、長町ルート の4ルートがあります。(金沢ふらっとバスルートマップ参照)
3.運賃
大人100円・子供50円(平成22年度より子供50円を創設しました。) 11枚綴りで1,000円の回数券も発行しています。
4.運行本数
4ルートとも15分に1本の一定の間隔で運行しています。
5.「金沢ふらっとバス」の名前の由来
「ふらっと」乗れる気軽さと段差のない「Flat」なバスにちなんで名づけられました。
6.運営財源
バスの運賃収入及び金沢市からの補填資金です。
平成22年度はバスの運賃収入約76,230千円、金沢市からの補填額約79,243千円。
バスの購入にあたっては、平成23年度は国土交通省の社会資本整備総合交付金を活用しています。
7.誰にでもやさしい、親しみやすい地域密着型コミュニティバスへ向けての取り組み
1. 子供による音声案内
次の停車駅までの案内は子供(小学生)によるアナウンスが流れます。
2. コミュニティボード
バス車両内にコミュニティボードを設置し、地域のイベント情報の発信などを行っています。
3.フラットな車両の床
バスはノンステップで段差のないフラットな床になっており、床の高さも28センチと高齢者や子供でも乗りやすくなっています。
4.車椅子固定装置
車椅子利用者のために、車椅子固定装置がついています。
5.貸出し傘・貸出しうちわ
急な雨に備えて貸出し傘が用意されています。また、貸出しうちわも設置されています。
6.停留所の間隔
停留所の間隔は200メートル程度となっており、短い移動にも気軽に乗れるように設定されています。
7.ゆったりとしたスピード
民家の間を通ることもあり、ゆったりとした安全・安心のスピードで運行しています。
3.取り組みの効果
課題であった交通不便地域の不便解消に大きく寄与し、地域住民の交通の利便性を向上させることができました。また、金沢ふらっとバス利用者が年間80万人近くに増加しており、中心市街地の回遊性向上に寄与しています。
「金沢ふらっとバス」運行事業は中心市街地活性化基本計画に位置付けられていて、計画期間内(平成19年5月~平成24年3月)の目標値は年間利用者数750,000人(平成24年3月)と設定されていますが、平成22年度時点で年間利用者数は799,778人となっており、すでに目標値を上回っています。
4.今後の課題・取り組み
現在、此花ルート、菊川ルート、材木ルートの3ルートは北陸鉄道㈱が運行しているため、ICカードが利用できるが、西日本JR㈱の運行する長町ルートはICカードが利用できないので、その問題解消に向けて調整したり、「金沢ふらっとバス」をより多くの人に知ってもらい、利用してもらうために、近隣の商店街のイベントの日にあわせ子供料金を無料とするなど、専門家や事業者などで構成された「金沢ふらっとバス利用促進検討委員会」で、より利用者に使いやすい事業となるように検討していきます。
5.関係者の声 まちの声
「金沢ふらっとバス」はゆっくりと走ること、コミュニティボード、小学生の音声案内など、親しみやすく、身近に感じるという声が上がっています。当初の予定通り、病院へ行く時、買い物へ行く時など高齢者や主婦などを中心に日常の足として利用されています。
6.取材を終えて
実際にバスに乗車してみると、バスは細い民家の間の道を進み始めました。民家前に停留所があり、家から出てきたご年配の方が、玄関からそのままバスに乗り込んできました。また、運転手が気軽に利用者に声をかけていて、本当に親しみやすく、生活に密着している印象を受けました。
民間業者による運営では交通不便地域の採算は成り立たないため、運行が難しいけれども、市民が生活のために必要としている、このような事業はまさに行政が実施することに適した事業だと感じました。
<取材日H23年12月>