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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

商店街に人々が集まる場づくり 小浜駅通り商店街

ポイント

  • 商店街内に人が集える場づくり
  • 毎日10時店頭のラジオ体操でお店のコミュニケーション
  • 市民が自ら参加し主体的に動けるしくみ
小浜市空撮
場所:
小浜駅通り商店街
人口:
3.1万人
分類:
【商店街販促】【イベント】
協議会:
なし
実施主体:
小浜駅通り商店街(はまかぜ通り商店街)
参考URL:
小浜駅通り商店街

http://hamakaze-st.net/ 別ウィンドウで開きます


1.まちの概要

市役所
規模・人口

 古代から日本海を隔てた対岸諸国との交易が開け、日本海側屈指の要港として栄えた小浜市は、福井県の南西部、若狭のほぼ中央に位置しています。北は国定公園の指定を受けた若狭湾に面し、南は東西に走る京都北部一帯に連なる山岳で、一部滋賀県とも接しています。面積232.87k㎡、人口31,000人(平成23年9月現在)で、福井県にありながら風俗、習慣、言語などは近畿圏域とのつながりが深いまちです。

明通寺
交通アクセスなど

 平成23年7月に、兵庫県三木市(吉川ジャンクション)から福井県敦賀市(敦賀ジャンクション)を結ぶ舞鶴若狭自動車道が、小浜市の中心部近くの小浜ICまで開通し阪神方面とのアクセスが向上しました。平成26年度には敦賀まで全線開通の予定です。鉄道でのアクセスは敦賀駅-東舞鶴駅間を結ぶJR小浜線小浜駅が玄関口となります。また、小浜と京都をつなぐかつての鯖街道の一部である、小浜駅とJR近江今津駅(滋賀県高島市)間を路線バスが結んでいます。

小鯛笹漬け
まちの現状

平成23年に市制施行60周年を迎えた小浜市は、律令制の時代から都との関わりが深く、また奈良時代からの文化財が数多く残るなど「海のある奈良」とも呼ばれています。国宝明通寺や、「お水送り」で知られる神宮寺を始め、人口約3万人のまちに130を超えるお寺がひしめき、人口に占めるお寺の数は日本一と言われています。

 また伊勢志摩や淡路島とならび都に食材を提供していた御食国(みけつくに)であり、海産物や塩を朝廷に供給していました。鯖・甘鯛・カレイなどの「若狭もの」や、小鯛ささ漬、へしこ、鯖寿司など食に恵まれたまちです。

 食を通じた教育「キッズ・キッチン」など、「食のまちづくり」は全国の先進地として知られています。

 小浜市中心部西側は近世城下町の面影をよく残し、平成20年6月に約19.1haが国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。べんがら格子の灯るまちとして、建物などの整備が進められています。

 近年は小浜市が舞台となったNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」の放送や、当時アメリカ大統領選挙の候補者であったオバマ大統領と発音が同じという縁で盛り上がった市民活動による「オバマフィーバー」もあり、全国的に知名度が高まりました。

2.中心市街地活性化の取り組み

(1)課題・問題

 中心市街地人口の減少や中心市街地にあった商業施設の撤退、まちなかにおける複数の複合商業施設の存在、小浜ICの供用開始や同IC近くでの新たな商業集積の誕生など、まちを取り巻く環境は変化しています。また名勝や寺院をはじめとした観光などの資源は郊外に多く点在しており、こうした中、生活や観光面も含め、まちなかを活性化していくことが求められます。

(2)活性化の取り組み

 小浜駅通り商店街(通称:はまかぜ通り商店街)では、減少傾向にあるにぎわいを取り戻そうと、日曜日に商店街内のはまかぜプラザで、ライブや寄席などを定期的に開催しています。現在、同商店街振興組合の会員数は約80件で、空き店舗への新たな出店もある一方、飲食関係など夜間だけ営業する店もあります。こうした中、はまかぜ通り商店街は、わくわく・ドキドキする商店街、愉しくて儲かる商店街を目指し、積極的に活動を展開しています。

 また、趣のあるまちなみや食などの地域の資源を活かし、まち歩きなど、観光を切り口としたまちづくりを行っています。

3.具体的な方法

はまかぜプラザ

はまかぜプラザ

 平成18年7月に、老舗旅館の廃業に伴い譲り受けた建物を改修し「はまかぜプラザ」としてオープン。商店街の会合やイベントの打合せに使われるなど、市民などが気軽に使える場として機能しています。毎月第1日曜日は音楽の「はまかぜライブ」、第2日曜日はカードゲームの「はまかぜカードバトルチャンピオンシップ大会」、第3もしくは第4日曜日は「小浜はまかぜ寄席」をそれぞれ定期的に開催しており、これらには県外からも来訪があるなど、一定の集客に寄与しています。

 また「ちりとてちん」資料館として、「ちりとてちん」の撮影風景の写真も展示されており、市内のイベントチラシなどの情報提供も行っています。

集客をお店の売上向上に

ちりとてちん寄席

 小浜市がドラマ「ちりとてちん」の舞台となったことをきっかけに、これまで小浜で寄席が100回以上開催されてきており、はまかぜプラザでの開催は平成23年11月で40回を数えています。

出演者と店主の掛け合いによるお店紹介

 文化面や集客のみならず、お店のファンづくりをねらいとした取り組みも始まっています。寄席などの来訪者に店主の人柄やお店を知ってもらうため、会場で出演者と店主が掛け合いをしながらお店の紹介などをすることによる来訪者と店主との接点づくりや、寄席に続いて来訪者がお店を順番に巡る「ワクワク・どきどき!お楽しみお店ツアー」も始まりました。このツアーでは、店内の雰囲気や様子を知ってもらうとともに、生活の知恵などお得情報を聞けたり、ちょっとしたサービスなどを受けることもできます。

ワクワク・どきどき!お楽しみお店ツアー

 参加者からは、これまであまりお店のことを知らなかったがいいお店があることが分かった、店主の人柄を垣間見ることができた、普段入る機会のないお店に入れ店内の様子が分かった、お店からは、店内に入りお店の様子を知ってもらえる、お店のウリや技術を知ってもらえるのはありがたいとの反応が寄せられています。実際に、その後の店舗へのリピートに結びついています。今後も一時的な集客やイベントにとどまらない、お店のファンづくりや売上に結び付く仕掛けを継続していきます。

まちなかの商店街をステージに、市民が自ら考え活動するしくみ

やさしさいっぱいまちなか夢通り

 まちなかの商店街をステージに、ボランティア団体などが参加した「やさしさいっぱい!まちなか夢通り」を秋に行っています。ボランティアなどの団体に、活動が身内だけになりがち、活動を広く知って欲しい、まちなかで発表したいといった思いがあり、一方でまちなかでは、賑わいの減少や空き店舗の増加といった課題がありました。こうした両者の状況や思いを理解し、これらをマッチングさせるところから始まりました。

 小浜市社会福祉協議会などが本事業の中心となり、商店街などと協力し場所は提供するので、それぞれがやりたいことを考え、自ら実施してもらうなどのコンセプトをしっかりつくった上で、それをきっちりと参加者に伝える、何をするかは各団体が考えて自ら実施してもらう、そのプロセスでは、団体同士が内容や時間などを調整しながら動いてもらう、団体の催しだけでなく、事業者は必要な食材を提供するなど、それぞれができることをしながら関わっていきます。

子ども店長

 特筆すべきは、事務局がしっかりサポートしながら、参加者がやりたいことを自ら考え、自ら動き、団体同士が繋がっていく仕組みをつくっていることで、これをきっかけに団体同士の出会いや横のつながりが生まれ、団体などの日常の活動に活かされています。主催者側は、やらせるのではなく、やりたい人がやりたいことが出来る環境を用意してバックアップする、ボランティア側はやりたいことが認められるとうれしい、そこに好循環が生み出されていきます。

 参加団体は数十団体に及び、100円商店街やフリーマーケット、保育園児による演奏、中高生によるパフォーマンス、まちなかギャラリーなどが賑やかに行われています。平成23年度は、小学生が商店街のお店の店長となった「一日子ども店長」が行われるなど、回を重ねるごとに内容は充実し、本事業等に合わせて近隣のエリアで新たな動きが始まるなど、面的に捉えた波及や相乗効果も生まれています。

毎朝店頭での「ラジオ体操」でお店同士のコミュニケーション

ラジオ体操

 はまかぜ通り商店街では、毎朝10時に商店街のスピーカーからラジオ体操を流し、店主などがアーケード下の各店舗の前に並び「ラジオ体操」を行っています。健康増進は言うまでもありませんが、店主などが毎朝顔を合わせることにより、店主同士などの関係づくりに寄与しています。会社や工場では普通に朝礼やラジオ体操が行われているが商店街にはない、商店街でもあってもいいのでは、とのことで始まり、平成21年5月1日から正月三が日を除き、現在でも毎日続いています。

4.取り組みの効果

  まちの活性化を図るため、前述の事業をはじめ様々な取り組みが行なわれています。市民が集い、憩い、楽しめるまちを目指し、観光面も含め、効果のある取り組みが展開されていきます。

5.今後の課題

旭座

 中心市街地で更地となっている商業施設跡地の整備、近代の演芸場として県内唯一の遺構である明治時代の芝居小屋「旭座」の保存・活用が直近の課題です。芝居小屋は大正時代の全盛期には全国に3,000はあったと言われていますが、その99%は失われ、今では30程しか現存していないとのことです。また、タウンマネジメントをより機能させていくことも今後の課題と言えます。

6.関係者の声、まちの声

 今回、小浜市役所や小浜駅通り商店街振興組合、まちづくり会社などの皆さんからお話を伺いました。まちづくりは、観光や食を中心に行っているとのこと。また、市民と公共との連携による新しい公共のあり方を模索できれば、とも語っておられました。

7.取材を終えて

ブロック交流会

 取材当日は、北陸地域と合同で近畿中心市街地市街地活性化ネットワーク研究会が小浜市で開催されました。小浜の熱い取り組みに、近畿・北陸の各地域の中心市街地関係者が熱心に耳を傾けておられました。地域を超えてお互いの良いところを吸収し、お互い刺激し合い活性化に取り組むことにより、それぞれの地域の活性化が一層進むことを期待しています。

<取材日H23年10月>