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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

郷土への愛着と未来への想いが息づくイベント

ポイント

  • 町並みを活かしたイベントの実施
  • 地元住民とイベント企画者の融合
  • 未来を見据えた戦略的なイベントの仕組み
場所:
兵庫県篠山市(河原町)
人口:
4.3万人
分類:
【イベント】
協議会:
あり
実施主体:
ササヤマルシェ実行委員会
支援策:
--
参考URL:

http://www.sasayamamarche.com/ 別ウィンドウで開きます


1.まちの概要

規模・人口・交通アクセスなど

 平成11年に多紀郡4町(篠山町・西紀町・丹南町・今田町)が合併して誕生した篠山市は、兵庫県の中東部に位置しており、40~50km圏内には、大阪、神戸、京都の3大都市圏があります。JR福知山(宝塚)線や山陰(嵯峨野)線、舞鶴若狭自動車道、京都縦貫自動車道の整備により、これら都市圏へのアクセスは1時間圏内となっています。 人口は、約4万3千人、面積は377.61k㎡で、約4分の3を森林が占めており、今なお日本の原風景ともいえる素晴らしい景観が残っています。

歴史・由来など

 1609年(慶長14年)、徳川家康の命により天下普請で築城されたのが「篠山城」であり、「ささやま」の名は築城の礎となった丘陵「笹山」の名に由来しています。また、現在も城跡の周辺には歴史的な街並みが保存地区として残されています。中でも「河原町妻入商家群」や「御徒町武家屋敷群」は平成16年(2004年)12月に、国の「重要伝統的建造物群保存地区」(以下「重伝建地区」と称します)に指定され、平成19年(2007年)2月に「美しい日本の歴史的風土100選」に選ばれました。

まちの特色

黒豆

 篠山市の中心市街地は、阪神地域から車・JRとも約1時間圏と恵まれた立地が幸いして、京阪神間を中心に多くの観光客が訪れています。その主要な目的は、黒豆、黒枝豆、大納言小豆、栗、山の芋など、丹波篠山の地から産出する地場産品の購入や飲食であり、特に秋の味覚シーズンになると、これらの地場産品を求めて多くの個人客・団体客が訪れています。 また、篠山市では、丹波篠山さくらまつり、デカンショ祭り、丹波篠山味まつり、陶器市など、年間を通じて多くのイベントが実施されているほか、篠山城大書院や大正ロマン館をはじめとする史跡・歴史的建造物や美術館、博物館、そして豊かな自然、歴史、文化を堪能できるなど、訪れる観光客を魅了しています。 

2.中心市街地活性化の取り組み

河原町の風景

 中心市街地の中で、かつて賑わいの中心であった河原町は、周辺地域への輸送バスの拠点として大いに繁栄し、往時は多くの商店が存在していました。その後、平成14年のJR本篠山バスターミナルの廃止を機に、河原町の商業の低迷化・衰退化は顕著となっていきました。

 このような状況の中、平成16年12月に、国の「重伝建地区」の指定を受けて以降、情緒ある町並み・家並みを活用した取組みや店舗としての再利用が始まり、現在、土日・祭日を中心に、歴史的な趣に魅かれて来街する観光客が増えつつありますが、河原町により多くの人を呼び寄せるには、河原町自体が如何に魅力をつくり出していくのかが課題になっています。

 そのような中、河原町を未来に残していくために、河原町の魅力を感じ多くの人に歩いてもらいたいとの思いから始められたのが、「ササヤマルシェ」のイベントです。

 この「ササヤマルシェ」は、「ハナシ、ハズム、マルシェ」を合い言葉に、人と人とのふれあいや会話を通して「自分にとって本当に良いもの」を見つけ、そこから生まれるつながりを楽しんでもらうことをコンセプトに実施され、河原町の江戸情緒の町並みに、日用品、雑貨、陶器、料理、ワークショップ、丹波杜氏のお酒、地場産品などのお店が軒先を揃えます。  開催時期は、秋の味覚の最盛期である10月に行なわれており、丹波篠山味まつりに併せて実施しています。

配布チラシ

 昨年(2010年)は、10月9日(土)~11日(月・祝)、16日(土)~17日(日)、23日(土)~24日(日)と3週にわたり実施され、この7日間のイベントで、1日間だけの出店も含めると50店舗を越えるお店が参加しています。また、本年(2011年)も、10月8日(土)~10日(月・祝)、15日(土)~16日(日)、22日(土)~23日(日)に実施されました。

 河原町の町並み、家並みそして情緒を楽しみながら、お店をまわったり、カフェでゆっくりとした時間を満喫できるなど、さまざまな楽しみ方ができるイベントとなっています。

ササヤマルシェの風景

3.取り組みの効果

 このイベントには特筆すべき点があります。それは、多くの地域で、地元住民や自治会と新しい取組みをする団体が連携することは難しいとよく聞きますが、この河原町では、自らの主張をはっきりとしながらも新しい流れを受け入れる土壌と人情のおおらかさを持ち合わせているということです。

 この源流となったのがイベントの先輩格にあたる「丹波篠山まちなみアートフェスティバル」であり、その流れを受け継いでいるのが、このササヤマルシェです。

 地元自治会とイベント企画者が何度も何度も話し合い、企画を進めていく。これは、携わる関係者が、篠山や河原町の魅力を知ってもらい、多くの人に足を運んでもらいたい。そして、篠山の魅力を感じ、将来、この地域に住んでももらいたいという一致した想いからにほかありません。

 また、このイベントにはもうひとつ特筆すべき点があります。それは、実行委員会自らが出店先の候補を選定し、自ら出店を呼びかけているという点です。実行委員会は、決してイベントの成功だけを考えているわけではなく、この篠山に魅力を感じ、近い将来この地に店舗を出してもらいたいというお店や、篠山や河原町にふさわしいお店に戦略的に声がけしているのです。

 この取組みにより、すでに篠山市の中心市街地およびその周辺には6店舗のお店がオープンしており、着実に結果を残しています。

 イベントは一時的なものとよく言われますが、将来の河原町をどうつくっていくかといったビジョンをもとに戦略的に実施されるこのイベントは、期間中の成功のみならず、未来への試金石になっていることを強く感じるところです。

4.今後の課題

 河原町やその周辺地域には、少しずつ魅力ある店が増えてきています。しかし、集客の見込める休日対応型の店舗がまだまだ多いのが現状で、今後は魅力ある店舗をさらに誘致し、平日も対応可能な地域にしていくことが望まれます。また、現在のこれらの取組みと、既存の商店街とが連携することにより、より多くの観光客が満足する仕掛けづくりをしていくことが期待されています。

5.関係者の声、まちの声

 実行委員会のメンバーの方から、「篠山には、自然・文化・歴史、そして伝統的建造物等、正に本物に出会える環境がある、もっと多くの人に魅力を感じてもらいたい。」と語っていただきました。彼自身、この篠山に来たのは友人の紹介で訪れたのが最初、以来篠山の魅力を感じ、その魅力を広く伝えることに全力をささげてきています。

 「現代の若い世代は、街に魅力があれば必ず来てくれる。大事なのは、この篠山でしか感じられない魅力をいかに知ってもらうか、そして篠山でしか感じられないものをいかにつくっていくかが必要だ」と語ってくれました。

<取材日H23年9月>