Minna-project:Shunan 合言葉は「街をみんなのものに!」
まちづくり会社「まちあい徳山」の取り組み
ポイント
- できるところから着手し、地域からの協力・支援を獲得しているまちづくり会社の取り組み
- にぎわい創出を図る魅力あるイベントの戦略的な展開
- 場所:
- 山口県周南市
- 人口:
- 15万人
- 分類:
- 【空き店舗・空きビル】
- 協議会:
- あり
- 実施主体:
- まちづくり会社「まちあい徳山」
- 支援策:
- --
1.まちの概要
- 規模・人口
2003年4月、徳山市・新南陽市・熊毛町・鹿野町が市町村合併して誕生した周南市は、山口県の東南部に位置し、北は中国山地を背に、南は瀬戸内海を望み、その海岸線に沿って大規模工業が立地し、それに接して東西に比較的幅の狭い市街地が続いています。北側には、なだらかな丘陵地が広がり、その背後の広大な山稜には農山村地帯が散在しています。また、島しょ部は、瀬戸内海国立公園区域にも指定されており、美しい自然景観を有しています。人口は149,253人(推計2011年3月現在)、面積656.13㎢であり、共に山口県内第4位の規模です。 - 交通アクセスなど
周南市の玄関口は、JR徳山駅。山陽新幹線と山陽本線が乗り入れています。徳山駅の南300mの場所には、離島の大津島や大分県国東市(竹田津港)への航路の発着港である徳山港があり、ホームから海が見える唯一の新幹線駅です。 また、市内には山陽自動車道のインターチェンジが3つ、中国自動車道のインターチェンジが1つあり、山陽自動車道を走る東西主要都市への高速バス路線があります。 - まちの特色
周南市を語るうえで忘れてはならないのが、海岸部に集積するコンビナート(工場群)です。周南コンビナートの起源は、明治時代に旧日本海軍により石炭燃料基地が設けられたことに由来します。大正時代にはそれが改組拡張され、海軍燃料廠が開庁。軍需用石油精製拠点となりました。その後、第二次世界大戦の大空襲で壊滅するも出光興産が跡地を払い受け、1956年に当時日本最大規模の徳山製油所の建設に着手。周南コンビナート形成の口火を切ることになりました。
高度経済成長期には「工業整備特別地域整備促進法」の適用を受けて、重化学工業を発展させるための様々な政策が実施され、1965年当時2,930億円だった製造品出荷額をわずか4年で倍増させるほどの経済発展を遂げたのです。(ちなみに2008年工業統計調査では約1兆9,515億円の製造品出荷額を記録しています)そして海岸部における石油・化学・鉄鋼など重厚長大の工業集積によってヒト・モノ・カネが一極集中することで、巨大な商業集積を生み出しました。
今でも残る徳山商店街の銀南街にある商住一体型のアーケード、2階層式店舗、空中デッキはその名残です。40年以上も前にこの先端的な機能を有する商業空間を形成していたのには驚かされます。当時は近隣の下松市や光市、さらに遠方からも多くの人が訪れ、週末を徳山商店街で過ごすということがステータスになっていました。
飛ぶ鳥を落とす勢いで発展した工業城下町は、1980年代後半から日本中が好景気に酔いしれたバブル期に至り、少しずつ陰りを見せ始めます。バブル崩壊後はそれに一層拍車が掛かり、モータリゼーションの進展及び郊外への大型店舗進出とも相まって、2000年前後には徳山駅周辺の大型店舗店が次々と閉店。人の肩がぶつかり合うほどの賑わいが商店街から潮が引くように失われてゆきました。こんなデータがあります。中心部(みなみ銀座2丁目から半径600m圏)の昼間人口は1995年から2000年の間に約27%減少、事業所数は2001年から2006年で約50%、従業者数も約47%減少しています。1商店当たり年間販売額は1997年から2002年で約3,000万円も減少したのです。徳山の中心市街地は坂道を転げ落ちるように勢いを失い、栄華を誇った商店街はシャッター街の様相を呈するようになっていったのでした。
2.中心市街地活性化の取り組みと効果
このままではいけない。かつての元気を取り戻そう。周南市も、中心市街地の再生に取り組み始めました。2010年11月末に中心市街地活性化協議会を立ち上げ、現在は中心市街地活性化基本計画の認定に向け、官民一体となって計画策定を進めています。
その中心市街地活性化協議会にあって活性化の原動力となっているのが「まちあい徳山」。中心市街地に関わる全ての人が便利に暮らせて楽しく過ごせるまちづくりを実現するため「街を、人を、その気にさせる」を企業理念として、中心市街地で商店等を営む30~40代の若手事業者を中心に2010年10月設立された法定まちづくり会社です。構成員は徳山商店連合協同組合の青年部5名と徳山商工会議所局長1名。まだ1年にも満たないこの若手集団が中心市街地に新風を巻き起こしています。
(1)projectⅠ(イベント)
今年に入って「街をみんなのものに」を合言葉にした「Minna-project:Shunan」を発動。徳山駅周辺を中心とした市街地を『みんなの空間・パークタウン』として体現するプロジェクト第1弾として6月12日「みんなのバザール」を開催しました。これは今まで複数の地元団体が個別に開催していた5つのイベント(1.青空マーケット、2.G-market、3.はなマルシェ、4.徳山駅前骨董市、5.はつもみぢ酒蔵まつり)をひとつのコンセプトのもと連携して効率的に開催するという試みでもありました。当日の天候は雨。しかし悪天候にも拘わらず来街者は1万人を超え、普段は閑古鳥が鳴いている駅前立体駐車場が満杯になったそうです。
また「まちあい徳山」とまちづくりを支えるコミュニティネットワーク「まちづくり女子の会」の共同企画による「街歩きツアー」も同時開催。街なか散策&試食&お買い物など盛り沢山のメニューに、参加者は徳山商店街の魅力を体験され街歩きを楽しまれたとのことです。
(2)projectⅡ(チャレンジショップ)
「まちあい徳山」が次に企画したのは、みんなのプロジェクト第2弾「g+minna」。この7月に徳山商店街の銀南街にチャレンジショップをオープンさせました。それも単なる床貸しではなく、(1)「チャレンジサポート」として、相談・コンサルティング・店舗運営サポート、(2)「独立サポート」として、独立のコンサルティング・物件探し・独立支援補助金申請を支援して、起業家を強力にバックアップするもの。
店舗のプロデュースは「オレンジカフェ」などで山口県内の顧客から大きな支持を得ているSOFAが担当。カフェ1店舗、雑貨2店舗の構成で洗練された空間を創出しています。
3.今後の課題
中心市街地活性化協議会のコアメンバーとして、周南市や徳山商工会議所と協働で基本計画策定に取り組み、一方では「Minna-project:Shunan」という街を元気にするプロジェクトを推進する「まちあい徳山」ですが、現在の課題はマンパワーと資金。自らのお店を営みながらの活動は深夜にまで及ぶこともあり、マンパワー不足の解決が急務となっています。
4.関係者の声、まちの声
周南市の中心市街地に癒しとたまり場をテーマにした滞留型中規模プロジェクトを動かす予定です。そして、イベントを通じてまちに来るきっかけを創出し、まちの小さくても変化に気づいてもらうことが大切と考えています。今後ともこうしたイベント等と平行してまちに変化を起こし、まちの魅力を向上していくに取り組んでいきたい。」と、これからも街をみんなのものにしていく想いを熱く語ってくれました。
5.終わりに
出来ることから始めた「まちあい徳山」の取り組みは、行政や支援機関・民間企業・市民団体の協力を得て大きな輪となって広がりつつあります。斬新な企画を次々に生み出す彼らの活躍にこれからも目が離せません。
<取材日H23年6月>