小田原ブランド元気プロジェクト
ポイント
- 地域資源と地場産品の有効活用
- 地元商業界と木製品業界、異業種連携による地域活性
- 場所:
- 神奈川県小田原市
- 人口:
- 19.8万人
- 分類:
- 【地域資源】
- 協議会:
- あり
- 実施主体:
- 小田原ブランド元気プロジェクト実行委員会
- 支援策:
- 地方の元気再生事業(平成20~21度:内閣官房地域活性化統合事務局)
1.まちの概要
規模・人口
小田原市は神奈川県西部の中心都市で古くは後北条氏時代からの城下町として、また、江戸時代には東海道の宿場町として栄えてきた街です。小田原城を中心に町が形成され、大正時代以降は小田原駅を核に中心商業地が形成され、現在では神奈川県西部から静岡県東部までのエリアを商圏とする人口19.8万人の特例市です。
交通アクセスなど
富士・箱根・伊豆への玄関口である小田原駅は、JR東海道新幹線・東海道本線・小田急電鉄・伊豆箱根鉄道大雄山線・箱根登山鉄道の5つの鉄道路線が乗り入れする交通の要衝で、東海道新幹線で東京から35分、小田急線特急ロマンスカーで新宿から1時間10分の距離にあります。
また、道路アクセスでは、東名高速道路・厚木ICから小田原厚木道路を経由して東京方面から約1時間30分の距離にあります。
まちの現状
小田原市の中心市街地は一大商業集積地としての地位を長く保ってきましたが、中心部の人口減少、観光客の減少、郊外への大型商業施設の進出、中心部百貨店の撤退などの影響を受け、事業所数および年間小売販売額の減少(事業所数:ピーク時(S63)の29%減、年間小売販売額:同38%減)や地場産業である木製品業界の衰退など空洞化の傾向にあります。
こうしたなか小田原市では、かまぼこ、梅干し、和菓子などの名産品や小田原漆器、箱根寄木細工、小田原鋳物などの伝統工芸品といった地域資源・地場産業を活用してまちの回遊性向上を図る取り組みとして、街歩きスポット「街かど博物館」や「なりわい交流館」の整備・運営などを行い、中心市街地の活性化に取り組んできました。
2.まちの課題と活性化の取り組み
(1)まちの課題
豊富な地域資源・観光資源を有する小田原市ですが、まちの活性化の面においては次のような課題が指摘されていました。
1.伊豆・箱根方面への通過点となっている!
2.豊富な地域資源を十分活用できていない!
3.多様な資源が一通り揃っているが、中途半端!
そこで、十分に活用できていない小田原の地域資源を新たな視点で活用し、小田原に立ち寄ってもらえる新たなものを開発することになりました。これが「小田原ブランド元気プロジェクト」です。
(2)活性化の取り組み
小田原ブランド元気プロジェクトは、優れた地場産品である小田原漆器や箱根寄木細工などの木製品業界と城下町の歴史が育てた食文化を有する商業界が協力し合い、小田原の魅力を複合的に開発・発信していくものです。その中心となるのが、「小田原手形」による回遊事業と新名物「小田原どん」の開発です。
(3)具体的な方法
「小田原手形」とは、箱根寄木細工を施した携帯ストラップ型の木札に二次元バーコードを付したもので、商店街の加盟店舗を利用する際にこれを提示すると、料金割引やドリンクサービスなど各店独自のサービスを受けることができます。
市内および近郊の消費者をターゲットとしており、駅周辺の店舗で1枚500円で販売しています。手形の購入者が携帯電話で二次元バーコードを読み込むと、特設サイト「元気おだわら」から加盟店のサービス情報が得られ、さらにメール登録することで小田原のまちの情報「元気おだわら瓦版」を定期受信することができます。これにより加盟店の利用促進や街なか回遊の向上を図るものです。
小田原どんの例
一方の「小田原どん」は、(1)小田原の伝統工芸品である小田原漆器の食器に、(2)地場の食材を1品以上使用したオリジナルのどんぶり料理を盛って、(3)小田原をもっと好きになってもらえるおもてなしでお客様に饗することを定義としており、これまで当地を素通りしていた観光客が立ち寄る機会を増やすことにより交流人口の増加を図ることをねらいとしています。平成21年2月に小田原市商店街連合会が選定した市内の飲食店10店舗で始めたこの取り組みは、多くのメディアに取り上げられたこともあって人気を博し、2年目となる平成21年12月にはさらに10店舗が選定されました。
3.取り組みの効果
小田原手形は製作販売数が6,400個と順調に販売枚数を延ばしており、スタート時では58店舗だった加盟店は現在112に増加しています。小田原手形と小田原どんの取り組みにより、観光客の立ち寄り機会が増え、加盟店への誘客および回遊性の向上が促進されています。
また、平成22年1月に石川県金沢市において開催されたイベント「全国丼(どんぶり)サミットいしかわ2010 D-6」には小田原どんから2店舗が参加し、地元どんぶりを全国にPRしました。さらに同年10月には小田原市で「第2回全国丼サミットおだわら2010 D-7」が開催され、7団体36種類のご当地丼が味わえるイベントとなり、約16万人のお客様にご来場いただきました。このイベントは、今後も毎年全国各地で開催されていく予定で、いずれは「B-1グランプリ」に並ぶイベントに発展することが期待されています。
4.今後の課題
ご当地グルメとして定着しつつある小田原どんや小田原手形の取り組みは、地方の元気再生事業(平成20~21年度:内閣官房地域活性化統合事務局)による支援制度を活用して実施してきました。今後これらの事業を継続していくためには、事業運営を担う体制の強化と財源確保が当面の課題となっており、自立化を図っていく必要があります。
5.関係者の声 まちの声
地域資源の活用には、一つではなく複数の資源を複合的に発信していくとともに、その担い手である様々な職種の人々のコラボレーションなど、多様な「民の力を融合する」ことが効果的であると感じています。今後も地域の眠れる資源や力を掘り起こすための効果的な取り組みを期待しています。
6.取材を終えて
「小田原ブランド元気プロジェクト」は、地元商業界と木製品業界がタッグを組み、地域資源を発掘し、磨き上げ、域内外の客を惹きつけ活性化を図っていくといった地域独自の活動です。今後も、競争力のある商品・サービスを丁寧に提供していくプロセスに地域の人を巻き込み、ステークホルダーを増やしながら活性化を推進していくことを期待しています。
<取材日H23年3月>