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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

ターゲットを設定した商店街のテナントミックス ~福島市~

ポイント

  • 商店街区ごとに顧客ターゲットを設定し、それに相応しいテナント誘致し街区の魅力アップを図り、にぎわいを創出
  • 空き店舗所有者、不動産会社と頻繁に情報交換を行い、まちづくり会社において空き店舗情報を掌握し、テナントミックスを促進
福島駅前通り
場所:
福島県 福島市
分類:
【空き店舗・空きビル】
人口:
29万人
協議会:
あり
実施主体:
(株)福島まちづくりセンター
参考URL:

http://www.fmcnet.co.jp/machicen/machi.html 別ウィンドウで開きます


まちの概要

規模・人口

 福島市は福島県中通り地方北部、宮城県と接し、吾妻連峰と阿武隈高地に囲まれた福島盆地に位置する面積約770k㎡の県庁所在地です。人口は約29万人(平成20年10月)で、平成14年ピークに横ばいで推移しています。

交通アクセスなど

 東北新幹線が縦貫し、山形新幹線の起点となっており、また東北縦貫自動車道、国道4号など、主要道路が四方に伸び、首都圏と東北圏を結節点となっています。

まちの現状

 江戸時代は福島城の城下町として栄え、とくに養蚕、生糸、織物が中心の商業のまちとして繁栄し、明治以降は、県都として、福島県の政治、経済、文化、教育の中心となっています。 一方、仙台市との関係は近年密接になり、東北新幹線や在来線で仙台に通勤・通学する者も珍しくなく、文化面においても仙台市への依存傾向が強くなっています。さらに、高速バスや快速列車の増発もあり、買回り品や専門品を仙台市で購買する傾向が生まれ、福島市中心部の空洞化が懸念されています。

まちの課題と活性化の取り組み

まちの課題

空き店舗の目立つ街区

 平成3年以降、郊外の幹線道路沿いにスーパーマーケット、ホームセンター等の大型店が大量出店、さらに平成17年に駅前にあった地元百貨店が撤退し、中心市街地の平成19年の年間販売額は平成9年に比べ45.2%減少、同じく売り場面積は21.4%減少する厳しい状況にあります。 とくに中心市街地商店街では、こうした外的要因に加え、後継者不足、魅力ある店舗の減少などの商店街の要因も重なり、空き店舗率が15.8%(平成18年)と、多数の空き店舗が発生し、街区としての魅力が著しく低下しています。

(2)活性化の取り組み

「商店街テナントミックス」 イラストマップ

 このような状況下、まちづくり会社では、イベント開催による一時的な集客効果より,空き店舗を埋め通行量を回復させ、まちなかのにぎわい創出に取組みました。

 福島市の中心市街地の現状では県外の有力テナントの誘致は困難であることから、空き店舗対策としては、商店街や空き店舗所有者を巻き込み、空き店舗にテナント誘致を図る「商店街テナントミックス」に着手しました。

 取組みにあたっては、商店街区ごとに、顧客ターゲットを設定し、ターゲットに相応しいテナントを誘致し、街区全体としての魅力向上を目指しました。先ず第一に実施可能な空店舗から着手することによってスピード感をもってテナントミックスを実施し、にぎわい創出の実績を積み重ねることにより、当初事業が困難であるような場所も納得・合意を得ていくことが可能となりました。

(3)具体的な方法

1.空き店舗の詳細な情報を収集し、まちづくり会社に集約

テナントミックス店舗1

 まちづくり会社スタッフが、頻繁に商店街へ出向き、空き店舗の立地、設備、坪数、賃料水準、不動産オーナーの意向等、商店街の空き店舗情報を直接収集しています。

 併せて効果的なテナントミックスを行うために、空き店舗所有者や不動産会社と連携をとり、空き店舗や出店希望者の情報入手に努め、空き店舗に関する貸し手側と借り手側の情報をまちづくり会社に集約を図りました。

2.商店街区ごとに顧客ターゲットを設定し、それに相応しいテナントを誘致

テナントミックス店舗2

 商店街区ごとに客層が異なることから、来街者アンケートや通りのイメージ調査を実施し利用者ニーズを把握し、収集した商店街のデータにもとづいて商店街区ごとに顧客ターゲットを設定し、それに相応しいテナントの誘致を図りました。

 ターゲットに沿ったテナントを集積させることで、各街区の特色を活かし、街区全体としての魅力をアップさせ、集客効果を高めています。

 ターゲットの設定にあたっては、商店街の合意形成が得やすいように、業種ではなく、「女性」「若者」「男性」など幅広い対象設定としました。

 まちづくり会社では、出店者に最適な空き店舗に誘導するために、空き店舗所有者と積極的にコミュニケーションを深め信頼関係築くことにより、高止まりしている家賃の引き下げ交渉を行ったり、当初貸す意思のなかった空き店舗所有者からスタッフが交渉を繰返し、貸出し条件を引出して出店に結びつけています。

3.家賃補助制度とチャレンジショップ制度の活用

テナントミックス店舗3

 まちづくり会社では中心市街地の空き店舗への新規出店者に対する市の家賃補助制度(3年間補助)を活用して、出店者の負担軽減を図り、この3年間に16店の出店を実現させ、テナントミックスの実績を上げています。また国の中小商業活力向上支援事業を使い、チャレンジショップ制度を起こし、流通OBであるタウンマネジャーの指導を1年間受けた卒業生を中心市街地の空き店舗にリーシングし、テナントミックスの実績をあげるとともに、地元からの新規出店者の掘り起こし、育成も図っています。

4.出店後の手厚い経営サポートで低い退去率を実現

タウンマネジャーの臨店指導

 出店したテナントに対しては、タウンマネジャーに全店を定期的に巡回してもらい、各店の経営上の問題点の把握に努めるとともに、その経験とネットワークを活かし、具体的な販促方法や仕入れ先紹介など実践的なアドバイスを行っています。また、4ヶ月毎に各店から売上を報告してもらい、課題のある店には個別に助言を行っています。これにより4年間で、閉店が2件のみという極めて低い退去率を実現しています。

3.取り組みの効果

 商店街テナントミックスの実施により、平成18年~22年の間に25の個性的なテナントが空き店舗に出店し、商店街区によっては通行量が40%増加(平成18年→平成20年)し、確実ににぎわいが創出されてきています。 こうした実績により、中心市街地商店街に人通りを増やしていくには、空き店舗を1店1店解消し、街区としての魅力向上に取組んでいくべきとの考えが商店街に理解され、テナントミックスに協力的な流れができたことが大きな成果といえます。

4.今後の課題

 テナントミックスの成果を今以上に上げていくことが大切です。そのためには、新規出店者対象のリーシングだけでなく、既存テナントの立地入れ替えが求められます。まちづくり会社では「不動産の所有と利用の分離」の手法を活用するとともに、立地入替えの助成対象化の検討を市に依頼中です。補助対象とすることによって、テナント入れ替えが一層促進され、設定したターゲットに適する街区形成が進み、まちなかの回遊性が高まっていくことが期待できます。

5.関係者の声 まちの声

 まちづくり会社の商店街テナントミックスご担当者は「私たちが地元の商店街に入り、不動産会社でも把握していないような空き店舗情報が入手でき、商店街との出店調整が図れるのは、テナントミックス事業開始前から、共通駐車サービス券発行事業や共通ポイント事業などこれまでの商店街支援事業の積み重ねがあったからだと思います」と話され、テナントミックス事業の成果をあげていくうえで、商店街との信頼関係の大切さを強調されました。

<取材日H22/9/7>