飯田市におけるエリアマネジメントへの取り組みとまちづくり会社の活動
飯田市(長野県、人口約10万6千人)では、安心して暮らせる新しい街づくりを目指して、りんご並木の横に再開発事業により住宅を中心とした複合施設の整備に取り組みました。
この事業は、(1)商業機能、(2)行政・交流機能、(3)住宅機能を併せ持った居住施設の整備でした。
飯田市におけるこの取り組みは、まちなかにおける居住人口の増加を図る事業の代表例として全国にも広く紹介されたところです。
橋南第一地区市街地再開発事業
事業年度 平成9年度~平成13年度
- 1階
- スーパーマーケット ほか店舗
- 2・3階
- 福祉事務所、子供サロン、市民サロン、歯科医院など
- 4~10階
- 住居(免震構造)
- 駐車場棟
- 1階 店舗、
2~6階 駐車場 121台
今回は、その後の飯田市におけるまちづくりの取り組みについて紹介したいと思います。
まず飯田市の取り組みでぜひ紹介したいのは、「エリアマネジメントへの取り組み」といえます。
多くの地域でまちづくりへの取り組みが進められていますが、事業が単独で行われることが多く、エリア(地域)としての新しい魅力や楽しさなどを創造・再生するまでには至っていない地域が多いのが実状です。
また、その地域が有する資源や機能とうまく連携・協調できていないとも言えるのではないでしょうか。
飯田市では、第一地区の再開発事業に続き、その通りに面した地域で新たな再開発事業などに取り組むことにより、隣接したりんご並木の資源を生かしながら、当該エリア(地域)での魅力や楽しさ、暮らしやすさなどを総合的に高めることに取り組んでいます。
橋南第二地区市街地再開発事業
事業年度 平成11年~平成18年度
第一再開発事業に続き、通りを挟んで反対側に第二の再開発事業が進められました。
この事業は、「文化を愉しむ街、ショッピングや食を愉しむ街、暮らしを愉しむ街」をコンセプトに開発が進められました。
具体的には、「川本喜八郎人形美術館」やイベント等を行うことができる「広場」の整備、飲食を中心にファッションや生活雑貨など個性的な店舗の整備、業務施設や都市型分譲住宅(29戸)、駐車場(地階、74台)が整備されています。
堀端地区優良建築物等整備事業
事業年度 平成16年~平成19年
「みんなが集う、健康に生きるためのまちづくり」への取り組みが進められています。
1階は、専門店やオフィスで新しい商店街を整備、2階は健康・医療・福祉に関するサービス、3階はケア付き高齢者賃貸住宅、4・5階は権利者住宅や分譲住宅となっています。
また、この建物は建物の断熱性を高めた「外断熱工法」を採用し、ソーラーシステムによる空調も取り入れ、省エネルギー型の環境住宅となっています。
りんご並木ストリートマネジメント
りんご並木周辺の賑わいを創出するため、(株)飯田まちづくりカンパニーが主体となり、りんご並木周辺の空き店舗等を意欲ある民間事業者とマッチングさせることにより、「にぎわいの回復」に取り組んでいます。
地域資源を活用した店舗の整備
地元の農産物を活用したレストラン
地元で有機栽培をおこなっている農家と連携し、素材を生かした体に 優しいレストランの整備が図られています。
これは、単なる有機野菜の販売にとどまらず、素材を生かした「食を提供」することにより、新たな付加価値の創出や地域の魅力や楽しさの創出、農業との連携による地域内循環に役立っているといえます。
市内の和菓子店の逸品を一同に紹介・販売
飯田市のまちなかには、銘菓といわれる代表的なお菓子がたくさんあります。それが半生菓子(水分10%以上~40%未満)だそうですが、市内の和菓子を一同に集め紹介する店舗が整備されました。
各お店の独創性にあふれたお菓子や、四季それぞれの素材を活用したお菓子が楽しめます。
エコハウス(環境共生住宅)
これらの施設のほかにも、太陽光の利用や熱交換、断熱や通風、換気といった自然エネルギーや地域の気候風土を活用した快適な住宅も整備されています。
特にりんご並木に面した開口部を格子戸や障子で整備し、断熱や強い日射の遮断などの対策により、室内の温度を調節する取り組みは、建物の景観にも優れており、一見の価値があります。
まちづくり会社と行政
次にご紹介したいのは、まちづくり会社と行政がうまく連携し、まちづくりに取り組んでいることです。
まちづくり会社の活動、これもなかなかうまくいっている地域は少ないようです。
そもそもまちづくり会社は、中心市街地の都市機能の整備、商業の活性化、にぎわい再生、楽しさ、暮らしやすさ、サービスの向上などを目的に、行政や企業、商業者、市民などが中心となって設立されたものです。
しかしながら、中心市街地における事業は、その事業環境から、また、まちづくり会社の資金力や組織力などから、まちづくり会社が単独で事業を行うには余りにも大きなリスクがあると言わざるを得ません。
こうした中、行政による事業計画による位置づけやまちづくり会社への支援や連携が重要になってきます。
飯田市では、行政とまちづくり会社がうまく連携しあい、各種事業に取り組んでいます。このことにより、まちづくり会社の活動は民間事業者や地権者、商業者とうまく連携が取れ事業が進んでいるといえます。
(株)飯田まちづくりカンパニー
飯田まちづくりカンパニーは、中心市街地再生の調査、研究、企画等シンクタンク部門と自らが開発の事業主となる事業部門、そして民間の事業投資を支援するプロデューサー部門を併せ持ち、さらには自ら直営店を出店したりイベントを企画、実施したりといった中心市街地活性化のためのマルチカンパニーとなっています。
まちづくり会社の概要
- 設立
- 平成10年8月
- 資本金
- 2億1,200万円
- 出資者
- 商業者、企業、市民有志、行政、金融機関、商工会議所
- 専従社員
- 5名
エリアマネジメントの重要性
まちづくりを進めていくには、事業を推進していく者が必要です。行政だけではなく、民間の事業者や市民、NPOの方々など幅広く参加してもらう必要があります。この橋渡しや調整をするのがまちづくり会社ではないでしょうか。
行政ではできない事業、民間で取り組むにはいろいろと調整が必要な事業、
先行的な事業、社会的な事業などまさしくまちづくり会社が行政の支援を得て、民間事業者や市民等と連携し事業を進めていくことかと思います。
これらの事業を効果的に進めるに当たっては、エリアマネジメント(面的な取り組みにより地域の魅力や価値を高める取り組み)や地域資源を如何にうまく活用していくかといった取り組み、まちづくり会社の活躍がこれからはますます重要になってくるのではないでしょうか。
参考
飯田市の概要
- 人口
- 10万6千人
- 世帯数
- 3万8千世帯
- 高齢化率
- 27.8%
- 計画認定
- 平成20年7月
- 計画区域
- 151ha
- 計画事業
- 54事業
(一部画像は、飯田市のパンフレットから活用させていただいています。)