富良野の食文化と市民・観光客交流の拠点施設「フラノマルシェ」オープン
ポイント
- 富良野の豊かな食材を活かし、まちを育む人のネットワークにより、複合商業施設「フラノマルシェ」オープン
- 人口わずか2万5千人のまちの、民間主導によるまちなか活性化事業
- 場所:
- 北海道富良野市
- 分類:
- 【複合商業施設】【遊休地】
- 人口:
- 2.5万人
- 協議会:
- あり
- 実地主体:
- ふらのまちづくり(株)
まちの概要
- 位置・人口
北海道のほぼ中央に位置し、自然に恵まれた観光と酪農業のまち。
人口は約25,000人(平成17年)で、ピーク時に比べ30.7%減となっています。 - アクセス
富良野市内まで、車で旭川市街地から約1時間、札幌市街地から約2時間30分、また電車で旭川駅から約1時間の距離にあります。 - 現状と課題
スキー場、ラベンダー畑、ドラマ「北の国から」の撮影地など市郊外や隣接町にある観光スポットには年間約200万人が訪れていますが、中心市街地へは約8万人しか引き込めない現状にあります。
また中心市街地にあった大型店の撤退や隣接町への大型SCの出店、さらに平成18年に中心市街地の核であった大型病院が駅東側に移転し、中心市街地の衰退が顕著になっていました。
事業内容・目的
(1)これまでの取組み
現状に危機感を感じたまちづくり会社や商工会議所が中心になり、平成19年中心市街地活性化協議会を設立。同協議会において民間が主体となり、中心市街地活性化基本計画の原案を策定し、市に提出しました。この中で基本計画の基本コンセプトである「ルーバン・フラノ」構想(*)や「フラノマルシェ」の事業などが提唱されました。
平成20年には国から基本計画の認定を受け、まちなか活性化事業第1弾として地域の期待を集め、「フラノマルシェ」の事業が着手されました。
(*)「ルーバン・フラノ」構想・・・「ルーバン」は「ルーラル(田舎)」と「アーバン(都会)」を合わせた造語で、「ルーバン・フラノ」構想とは、都会の魅力と田園の魅力を併せ持ち、快適で心豊かな田園都市を自分たちの力で育んでいこうとする構想をいいます。
(2)オープン
成22年4月22日、郊外の観光スポットを訪れた観光客をまちなかに引き込む”まちの玄関”として、また富良野の食文化の拠点施設として、富良野圏初の地元産品を集めた複合商業施設「フラノマルシェ」が華やかにオープンしました。
「民間が主体となってつくったフラノマルシェがまちなか活性化のきっかけとなることを期待したい」と富良野市長からエールがあり、それに応えるように、オープンを待ち望んでいた主婦など多くの市民が訪れ、ショッピングなどで終日賑わいました。
(3)食文化の拠点施設「フラノマルシェ」
広さ約2000坪の敷地には、中央にイベント広場、その周りに3棟(400坪)の施設を設け、
- 富良野野菜を直売する農協経営の「オガール」
- 富良野野菜を使ったオリジナルスイーツや焼きたてパンを提供するまちづくり会社経営の「サボール」
- 他では手に入りにくい富良野の物産品を販売する(株)物産公社運営の「アルジャン」
- 富良野の食材をふんだんに使ったファーストフードを提供する、地元人気店を中心としたテイクアウトショップ群「フラディッシュ」
の4部門8店舗が店を構えます。
この他にまちの情報発信コーナーや100台収容の駐車場を備えています。
「フラノマルシェ」のセールスポイントは、富良野の食文化を一度に味わい楽しめることにあります。野菜ブランドイメージ調査でナンバーワンを誇る富良野野菜(アスパラ、にんじん、たまねぎなど)や酪農品など新鮮で豊かな食材とそれらを使った味覚が堪能できます。
富良野の豊かな食文化を味わってもらう場であるとともに、観光客へのおもてなしの場、市民の集いの場、そして富良野の魅力発信の場となる役割が期待されています。
支援策
「フラノマルシェ」は、商工会議所、商業者、市民など民間が主体となって出資したまちづくり会社が約2億8千万円をかけ取り組んでいます。
人口わずか2万5千人のまちでは資金面で厳しいことから、国の「戦略的中心市街地商業等活性化支援事業費補助金」約1億3千万円を申請し、また中小企業基盤整備機構の中心市街地商業活性化サポート事業や中心市街地商業活性化アドバイザー制度を活用しました。
取組みの効果とポイント
オープンして半月、多くの観光客や市民で連日賑わいを見せています。目標年間来場者30万人を上回る、1日あたり約3,000人が来場し、特に4月29日~5月5日には約3万人が詰め掛けました。各店の売り上げも好調です。
ここまでの成功について、西本ふらのまちづくり(株)社長は次のように話されます。
「私たちは、食材、自然、そして”富良野”というブランドも含め地域資源に恵まれました。そして富良野を想い、まちを育んでいこうとする人々のネットワークに支えられ、民間の力を結集できたことが大きいです。私たちは富良野を想い(passion・情熱)、富良野の未来のために何とかしなくてはいけない(mission・使命感)と考え、フラノマルシェを立ち上げました(action・行動)。ポイントは、パッション、ミッション、アクションですね」
苦労した点
もっとも苦労したのは市民の合意形成の難しさといいます。まちへの想いは同じでも方法は異なる。計画をまとめ、理解を得るために、社長自らプレゼンの日々が来る日も続きました。これを乗り越えられたのは「説明の機会があればいつでもどこへでも出向く「粘り強い話し合い」と、利害関係に立つ人への説明は行政に担ってもらう「官民連携の役割分担の妙」にあったといいます。合意形成は大地に水がしみこむように少しずつ浸透していったそうです。
今後の課題と対応
今後の課題について西本社長は「リピーターの確保が大事。富良野を好きになってもらううえでも、お客様へのホスピタリティの高さが大切です。富良野のお店のお手本になれるようにしていきたい」と抱負を語られます。
さらに「フラノマルシェ」に引きつけた観光客をまちなかにどう回遊させていくか。大きな課題ですが、次の事業が計画されています。
- まちなかの商店街の魅力をアップさせるために、市内 に在住するプロ・アマのアーチストの作品を商店街のショーウィンドウに展示し、ギャラリーロード化します。
- まちなかに車で来街しやすいように、旧百貨店跡地に憩いの広場のある大型駐車場を設けます。
- 同駐車場を起点にレンタサイクルによる「まちなかパークアンドライド」を実施し、回遊を促します。
- 富良野の食材を使っている飲食店に「グリーンフラッグ」を掲げ、観光客に富良野の食材の美味しさを堪能してもらい、まちなかへの誘引を図っていきます。
まちの声
オープン初日に訪れた地元の若い女性は「富良野には自然だけでなく、美味しい食べ物がこのようにいっぱいあることを知ってもらいたい。そしてまちなかにこのような賑わうところができ、まち全体が盛り上がれたらいい。」とまちの明るい話題にうれしそう。
また近くのレストランの女性店主は「フラノマルシェには食事スペースを設けていないので、周りにある飲食店に立ち寄って、オムカレーなど富良野の味を楽しんでもらいたい」と期待を寄せていました。