本文へ

中心市街地活性化協議会支援センター

文字サイズ
まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例
  • HOME
  • まちづくり事例
  • 地元ブランドとのコラボで地域の逸品をつくり出す!! ~大垣商店街振興組合青年部~

地元ブランドとのコラボで地域の逸品をつくり出す!!
~大垣商店街振興組合青年部~

ポイント

  • 商店街の若手が集まり「石黒塾」という商店街の活性化を目的とした商い塾を立ち上げました。
  • 「石黒塾」では「メイド・イン 大垣」プロジェクトと称して、大垣が誇る地域の品を、様々な企業や店舗とコラボレーションし、戦略的にプロデュースすることによって、より魅力的な商品価値のあるものにしていこうという試みを行っています。商店街を活性化させるために、これまでに無い若手ならではのセンスを活かした取り組みが反響を呼んでいます。
場所:
岐阜県 大垣市
分類:
若手商い塾、地域ブランド
人口:
16万人
協議会:
あり
実施主体:
大垣市商店街振興組合連合会 青年部
参考URL:
無し

まちの概要

規模・人口

人口16万人。大垣市は日本列島のほぼ中央に位置し、古くから東西の経済・文化の交流点として栄え、俳聖・松尾芭蕉が「奥の細道」の旅を終えた結びの地としても知られている。
豊富で良質な地下水を活用して、県内有数の産業都市として発展を遂げてきた。

交通など

大垣市は、東京と大阪の間に、また名古屋のすぐ北西に位置しており、大都市へのアクセスが容易。市域には東海道本線、東海道新幹線、名神高速道路などが通り、主要都市圏へのアクセスが便利。名古屋から鉄道で30分と近い。

現状

名古屋から鉄道で30分と都心部へのアクセスが容易であるのと、都心部には無い自然や歴史的な赴きが今もなお息づいていることから、身近に楽しめる観光地として、商店街では芭蕉にちなんだイベントなども行い、賑わいづくりに取り組んでいる。

まちの課題と、行った取り組み

課題・問題

県内有数の産業都市として発展を遂げてきた歴史的経緯があるため、大垣市は工業中心の土地柄。長らく商業振興は低迷していた。
あきらめ感が漂う親世代に対し、危機感を持った若い商店主たちが「これからの商店街は、ただ単にお店が集まっているだけでは生き残れない。わざわざ足を運びたいと思わせるような商店街にするにはどうすればいいのか?」という課題に真っ向からチャレンジ。
外部から専門家を呼び、若手の商人塾「石黒塾」を立ち上げ、若手ならではの自由な発想と柔軟な連携によって、大垣にしか無いものを生み出す「メイド・イン・大垣」プロジェクトを始動させた。

事業の目的

大垣が誇る地域の品を、様々な企業や店舗とコラボレーションし、戦略的にプロデュースすることによって、より魅力的な商品価値のあるものにしていこうという試みを行うことにした。
ただ単に地域の特産を商品化するだけの地域ブランドづくりとは一線を画し、流行に敏感で購買意欲のある若い世代とマスコミに受けるような話題性のある商品開発を試みた。

具体的な方法

商品開発とプロモーションも手がける石黒靖敏氏を塾長として、「石黒塾」を立ち上げ、必要なノウハウと大垣市の歴史やエポックなど地元を学ぶことから始めた。そして、とにかく既存の考え方にとらわれないように商店街の組織や中心街の店舗であるか無いかなどの垣根を超えて広くメンバーを集った。

議論も形式にはまらずフリートークを基本とし、「大垣の素材を使って大垣で作り上げる」という軸にこだわりながらも自由な発想でユニークなアイディアが出し合える環境づくりを意識した。
そして、出てきた発想については「ファッション性の有無」「実現可能性の有無」「利益が取れるか」という視点で厳しく評価しあい、取り組む内容を吟味した。
こうしてアイディアを出し合っている中、石黒塾のメンバーの一人でもあり大垣市に本店を置き、岐阜県内、名古屋、大阪にも店舗展開するファッションブランド「GLAMDY(グラムディ)」のデザイナー兼オーナーである塩谷昇氏のアイディアが支持を得て、「メイド・イン・大垣」プロジェクトはGLAMDYとのコラボTシャツを発信するという方向で徐々に具体的になっていった。

取り組みの効果

GLAMDYのネームバリューと相まって、マスコミにも取り上げられ、大阪や名古屋からも注文が来るほどの反響があった。またデザインには、商店街の老舗店舗の名前が使われているものもあり、店の名前を広く知ってもらうことにも一役買っている。

さらに、この追い風を受けて、新たなコラボ商品も次々誕生した。
一つは、大垣の造り酒屋の三輪酒造と金蝶園総本家のコラボ商品で「酒水まんじゅう」だ。お互いに江戸時代末期の大垣藩家老小原鉄心に縁があることから、三輪酒造製造の日本酒「バロン鉄心」を素材に大垣名物水まんじゅうを作り、金蝶園総本家で売り出した。1週間限定で発売したが、数日で完売するほど大盛況だった。
二つ目は、大垣の特産である升を使った商品で、和菓子など大垣の名産品を集めた「メイド・イン大垣名産ギフト」だ。大垣市は木曽や東濃等日本有数の桧の産地に近く、良質の天然桧を入手するには恵まれた土地で「ます」の生産量全国シェア80%を誇っている。

ギフトは2種類。プレミアムセット(4980円)は、有名な地元3業者の和菓子をヒノキの香り豊かな木升(1升)に詰め、GLAMDYのオリジナルブランド風呂敷で包んだもの。「石黒塾」で作った大垣まち歩きマップも添えているという。
また、和菓子の種類を少なくし、別の風呂敷を使った手頃なセット(2280円)も用意。地元百貨店にて個数限定で売り出したところ、すぐに完売した。「大垣市民も我が町を特徴付ける商品を求めている。ニーズはある」と取り組みに確かな手応えを感じたという。

今後の課題

失敗と成功を繰り返しながらも着実に成果を残している「石黒塾」だが、主たる実行メンバーは限られているらしく、もっとメンバーを増やす必要があるということだ。
また、「石黒塾」塾頭の松本正平氏は、「異なる立場のメンバーの志気を一定に保っていくのは至難の業で、商店街の組織の違いや中心街の店舗や郊外の店舗などの垣根を超え、まち全体を魅力的にするという共通の目的を共有し、広く仲間を集めてより効果的な取り組みを行っていくことが今後の課題だ」と話す。

関係者の声 まちの声

「石黒塾」塾頭 松本 正平さん

「今『石黒塾』にいる30~40代の若手は、商店街の記憶が残る最後の世代だと思っている。20歳以下の若い世代は、シャッターの閉まった商店街の姿しかしらない。だから、このまま何もしなければ、本当に商店街は無くなってしまう。今がラストチャンスだと考え、今後は空き店舗対策にも力を入れて、賑わいを少しでも呼び戻したい。『メイド・イン 大垣』プロジェクトで話題が生まれても、空き店舗があると人は来ない。地主と賃料を交渉したり、駅前には飲食、郭町にはサブカル的な店舗を積極的に誘致するなど、エリアの特徴に合わせた店舗を集積させていければ、その土地の魅力を引き立て、賑わいを引き寄せることにつながるのではないだろうか」