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家族のような商店街! チャレンジショップ事業から専門店が次々に出店

ポイント

  • 商店街が県の支援でチャレンジショップを運営
  • 商店街有志によるチャレンジャーへの熱心なサポート
  • 県市の施策連携から商店街出店、さらには移住促進へ
場所:
高知県四万十市
人口:
人口34,998人(平成27年12月1日現在)
分類:
【空き店舗活用】【人材育成】
協議会:
あり
基本計画:
第2期基本計画策定に向けて模索中
実施主体:
天神橋商店街振興組合
関連リンク:

天神橋商店街振興組合 別ウィンドウで開きます

ちゃれんじshop TJB(天神橋) 別ウィンドウで開きます

四万十市 別ウィンドウで開きます

高知県(高知家“こうちけ”で暮らす - 商店街で開業したい) 別ウィンドウで開きます

天神橋商店街(四万十市)の皆さん(天神橋商店街振興組合提供)

1.事業内容

(1)背景

四万十市中心市街地は、土佐の小京都といわれる旧中村市にあって幡多(はた)地域と呼ばれる広域から人が集まる商業地域です。なかでも天神橋商店街は、市内で唯一アーケードを備え、物販・サービス業19店舗、飲食関連15店舗から構成されています。

郊外に大型店が出店するなかで中村の顔として賑わった同商店街も、近年になって空き店舗が目立つようになりました。1990年代後半には1万人以上あった通行量が2009年には2千人を切る状況となったのです。

そこで、天神橋商店街振興組合(代表理事 國吉康夫氏)では、高知県の支援施策「チャレンジショップ事業費補助金」(平成24年度~)を活用して、商店街振興組合が事業主体となってチャレンジショップ事業を実施することとしました。

アーケードを備えた天神橋商店街、天神橋商店街と関係者の皆さん

(2)事業概要

天神橋商店街内「ちゃれんじショップTJB」の店舗

「チャレンジショップ事業費補助金」は、チャレンジショップを運営する商店街等に定額を補助(平成28年度より市町村も負担)するもので、チャレンジショップの家賃、事務局の人件費、広報費等が含まれます。卒業後に天神橋商店街に独立して新規開業する意欲があり、原則として小売業を営む人を対象にしています。

運営を任された商店街等ではチャレンジショップでの挑戦を募るとともにチャレンジャーの育成を担います。さらにチャレンジショップから卒業して商店街に出店後もフォローアップを行います。
チャレンジショップの募集内容は以下のとおりです。

○ チャレンジショップ募集内容

所在地/四万十市中村天神橋54
営業時間/10時から19時(定休日:水曜日)
費用負担/店舗使用料等8,000円から10,000円程度(組合費等を含む)
店舗面積/1店舗あたり面積約7坪(1施設あたり3店舗)
業種/小売・サービス業など
過去のチャレンジャー/ミシン修理・販売、ハワイアン雑貨、整体院、自転車店、中古楽器など
問い合わせ先/チャレンジショップTJB事務局 0880-35-2019

チャレンジショップから商店街へ出店する場合は、高知県の空き店舗対策事業費補助金(改装費等の補助対象経費の1/2以内で上限100万円)、さらに四万十市も上記補助金を受けた場合で一定の要件を満たす場合は上限37.5万円の補助を行っています。

天神橋商店街の國吉理事長は、チャレンジャーは商店街に変化を与えてくれる存在と語ります。さらに、チャレンジショップ運営会議を行うことを提唱。毎月1回、商店街関係者のほか、県、市、商工会議所も同席して出店者の経営状況を聞いて経営戦略や販売促進に知恵を絞ることで、商店街を挙げてチャレンジャーをフォローする体制を整えました。

大田文雄副理事長は、チャレンジの卒業者が商店街内に出店を検討しているときに、採算の取れる家賃水準を考慮して地権者と話し合いを行いました。まちの将来を思い、商店街でのご縁を大切にしたいとの大田副理事長の熱意に地権者も協力を表明。その甲斐あって、10年埋まっていなかった空き店舗のシャッターが開くこともありました。

こうして、2009年に28店まで減少した組合加盟店が、今では39店までに回復しました。  既存店も、チャレンジャーが商売への思いを語ることが刺激になるとともに、高齢化が進む商店街で新規出店者がアーケード内の飾り付けを行うなど頼もしい戦力になっています。

(3)特徴的な取組み

チャレンジショップの制度を活用する方はいても、それがなかなか商店街への出店に結びつかないところもあると思いますが、四万十市の特徴は、商店街が主体的に活動していることです。また、「高知家(*)」というコンセプトの下、移住・交流コンシェルジュを設置して情報提供から移住後のフォローアップまでを行っている高知県及びそれに協調する四万十市の施策も後押し。商店街を生業の舞台として収入が確保できる機会を発信することで、清流四万十川、サーフィンのメッカである周辺の渚の魅力と相まって四万十市へ移住するライフスタイルを提示しています。

*「高知家」:高知県民は一つの家族という考えで、観光を中心に高知県の基本理念として打ち出されています。

平成25年に、チャレンジショップから自転車店を開業した森嘉太郎さん(森自転車 四万十店)は「商店街での人間関係が励みになった。」と語ります。

ミシンの修理販売店や中古楽器の修理販売店が出店するなど、商店街に不可欠な専門技術を持った業種が揃うことで商店街の構成に幅と厚みが増しました。

森自転車の森さん、サウンドスペース カリヤの仮谷文治さん

3.取材を終えて

四万十市の商業の中心地(旧中村市)として賑わった天神橋商店街は、今も地域の人々の暮らしが息づいています。2012年には、商店街を舞台にした民放ドラマ「遅咲きのヒマワリ」が放映され、地元では大いに盛り上がりました。

コモディティ化と呼ばれる汎用品の価格低下が進み、大手フランチャイズチェーンの浸透などの外部要因に加えて、人口減少、少子高齢化、将来に不安を感じる若者が増大するなど地域商業を取り巻く環境は年々厳しくなっています。

しかし、独自の技術や感性を訴求しつつ顔が見える関係を活かせば、小規模店ならではの事業機会が生まれます。また、中小都市では地権者の協力が得られれば採算性が取れる水準に家賃を設定できる利点もあります。

チャレンジショップを仮説の検証と顧客獲得をめざす「お試し」の場と位置づけ、行政や商工会議所と連携しつつ商店街の仲間から励ましや助言を受けることが空き店舗対策、商店街での新規創業につながっていく—。地方の小都市の取り組みでありながら、四万十市の天神橋商店街の取り組みは全国の中小都市のモデル事例となるのではないでしょうか。

取材:平成27年12月

4.まちの概要

(1)規模・人口

四万十市は、高知県西南部に位置する人口34,998人(平成27年12月1日現在、住民基本台帳)、16,483世帯(同住民基本台帳)、面積632平方キロメートルの自治体です。土佐の小京都と呼ばれ、高知市から120キロ隔てて独立した都市圏を持ち、幡多地域の商業、行政機能の中心を担っています。

(2)交通アクセス

自動車は、高知市と松山市を結ぶ国道56号線が中心部を通ります。高知市からは高知自動車道路が四万十町まで開通し、四万十市に向けて延伸が予定されています。また、中心市街地から周辺に向けては国道441号、439号で四万十川流域の自治体と繋がっています。

鉄道は、土佐くろしお鉄道(中村線)の中村駅が中心市街地から1.5kmにあり交通の要所となっています。中村駅はJR四国(予土線)の窪川駅と接続、岡山からは直行となる特急南風号で結ばれるとともに、宿毛線で宿毛市と接続されています。

バスは、高知西南交通が市内各地と高知県西部の自治体(宿毛市、土佐清水市、大月町、黒潮町)を結ぶ路線を運行しています。

(3)まちの特色

四万十市の商圏人口は旧幡多郡全域から約10万人が見込まれ、観光客は年間約118.2万人(出典:四万十市観光動向調査 平成26年データ)が四万十市内(旧西土佐村を含む)の四万十川観光に訪れます。

商業規模を見ると、小売・商店数654、売場面積78,001m2、年間販売額49,864百万円で1店舗当たり売上76百万円(出典:平成16年商業統計調査)となっています。

四万十市中心市街地は、四万十川、後川に囲まれた地勢的にまとまりのある地域です。中心市街地には市役所、図書館、郵便局、病院等の公共公益施設ならびに国や県の出先機関が集中し、7つの商店街・283店舗(出典:四万十市中心市街地活性化基本計画)があり、幡多地域一円から集客する経済・行政機能の中心を担っています。一方で、国道56号線沿い、四万十川対岸の具同(ぐどう)地区では大型店が進出し、近隣から集客しています。