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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

民間事業者の活力を引き出すプロポーザル方式について

ポイント

  • 中心市街地活性化基本計画の骨子を提示し、目標に合致する事業案を民間事業者から募集
  • 公募では事業内容を重視して民間事業者を選定
  • 市有地の既存建物の取り壊しを市で実施
場所:
新潟県十日町市
人口:
56,499人(平成27年7月末現在)
分類:
【商業施設】【交流施設】【空き店舗(空き蔵)活用】
協議会:
あり
基本計画:
あり(計画期間:平成25年7月~平成30年3月)
実施主体:
株式会社ファイン・テン、株式会社フジタ 
関連リンク:
十日町産業文化発信館 いこて

http://www.hachaikote.com 別ウィンドウで開きます

アップルとおかまち

http://www.apple-tokamachi.com/ 別ウィンドウで開きます

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ

http://www.echigo-tsumari.jp/ 別ウィンドウで開きます

1.事業内容

(1)背景

 十日町市は、新潟南部の長野県との県境に位置している、人口約57,000人の都市で、全国有数の豪雪地帯です。

 十日町市は、平成16年の中越大震災による大型集客施設の撤退を受け、平成23年に中心市街地の大型空き店舗を2か所(旧娯楽会館、旧田倉(たくら))取得しました。その活用方法については、中心市街地活性化基本計画の策定を見据え、民間事業者の資本投資による開発を行ってもらうため、市内事業者の意見を集めるべく商工会議所で勉強会を開催するなどの検討を重ねてきました。

鶴岡市基本計画

(2)事業概要

旧鶴岡工場

 平成24年3月には、実際に事業を行う民間事業者の選定のため、民間事業者から事業提案の公募を行いました。事業対象区域は、基本計画区域とし、2か所の大型空き店舗以外の場所も含めた提案を募りました。

 募集対象事業は、中心市街地の将来像である、“「新たなにぎわい」に満ちた「魅力あるまち」の創造”に合致する内容で、3つの指標(1.歩行者・自転車通行量、2.中心市街地の人口、3.市民交流人口)を増加させると見込まれる事業です。

 選定にあたっては、基本計画策定委員と学識経験者を審査員とし、審査会を開きました。審査件数は12件で、内訳としては、旧娯楽会館跡地が4件、旧田倉跡地が3件、その他の場所が5件でした。

 旧田倉跡地では、地元十日町市の建設会社がコアメンバーとなる特定目的会社として設立した株式会社ファイン・テンが事業主体となる、「共生」「安心」「賑わい・マッチング」「利便性」のある複合施設の事業が選定されました。平成25年6月に認定された基本計画では、旧田倉跡地活用事業として、「老人デイサービス施設整備事業・子育て支援施設整備事業」、「サービス付き高齢者住宅整備事業・ファミリー向け都市型住宅整備事業」が掲載されています。平成26年5月に工事着工し、建物名を「アップルとおかまち」として平成27年9月1日に施設がオープンします。

 旧娯楽会館跡地では、地元十日町市の建築会社である株式会社フジタが事業主体となる、住民の「趣味」「興味」「交流」のできる空間の提供、十日町の食・文化の発信をテーマとした、市内でも実績のある著名な建築家による雁木のある木造2階建て建築事業が選定されました。基本計画には、旧娯楽会館跡地活用事業として、「(仮称)産業・文化発信館整備事業」が掲載されています。旧田倉と同じく平成26年5月に工事着工し、平成27年6月14日に「十日町産業文化発信館 いこて」としてオープンしました。当事業については、平成24年度に中小企業基盤整備機構の中心市街地商業活性化診断・サポート事業(プロジェクト型)の支援を活用し、商圏分析を踏まえた事業構想の精緻化と事業化に向けた検討を行いました。

鶴岡市基本計画

(3)特徴的な取組み

(ア)中心市街地活性化基本計画の骨子を提示し、目標に合致する事業案を民間事業者から募集

 事業提案の募集に際し、十日町市は中心市街地活性化基本計画骨子により将来像を示したうえで、対象区域、募集内容と募集対象者のみを指定し、施設の目的、用途、規模等については、提案をする民間事業者に任せました。また、土地の売却または賃貸の価額について、要領には「地方自治法」、「十日町市財務規則」及び「十日町市財産の交換、譲与、無償貸与等に関する条例」に基づいたものであるとだけ記載しました。選定にあたっては、中心市街地の将来像に合致し、かつ事業効果が高い事業であるという点を重要視しました。これは、本事業の目的が、大型店跡地を「高く売る、高く貸す」という点にあるのではなく、地域の民間事業者に自らのアイデアで中心市街地活性化に参画してもらうことを目標としたためです。

【募集内容と対象者】

  1. 自ら用地を取得又は借地し、店舗、事業所、共同住宅等を建設し経営を行う民間事業者
  2. 十日町市が指定する土地を、自ら取得または借地し、店舗、事業所、共同住宅等を建設し経営を行う民間事業者
  3. 中心市街地への来街者の回遊性を向上させる事業や、年間を通じたイベントの開催や空き店舗の活用等を自ら行う民間事業者(市民、NPO等を含みます)

(イ)公募では事業内容を重視して民間事業者を選定

 審査会では、事業プランの内容は踏まえつつ、中心市街地活性化基本計画に掲載するために十日町市と具体的な協議を行う民間事業者を選定しました。したがって、選定された事業者と十日町市との協議の中で、国県などの支援策が得られず、事業の実現が困難であると判断された場合は、その事業は中止するという状況もあり得ました。また、要領に記載されていなかった土地の売却または賃貸の価額についても、その後の協議において二つの跡地の売却が行われ事業着工を迎えることができました。

(ウ)市有地の既存建物の取り壊しを市が実施

 十日町市が所有していた旧田倉及び旧娯楽会館跡地に付随する建築物の取り壊し費用は市が実施することを募集要項に記載しました。取り壊しを市の負担で行い更地での公募を行ったことで、事業コストの軽減に繋がり、民間事業者が応募しやすい環境を整えることができました。

2.今後の取組み

 十日町市では、上記の取組みに続いて、「市民と一緒につくる」をテーマに、十日町市が事業主体となる「(仮称)市民交流センター整備事業(本町分庁舎)」、「(仮称)市民活動センター・まちなか公民館整備事業」(基本計画記載)の建設に取り組んでいます。平成26年度には以下のような体制で市民と一緒に整備内容の検討を行い、今年度より施設の建設に着工しています。

鶴岡市基本計画

 平成25年12月から、市民ワークショップ(カツドウ部)を11回、カタチ部での検討5回、シクミ部での検討7回を開催し、延べ約500人が参加しました。平成26年6月には設計者を公開審査で選定し、青木淳建築計画事務所に決定しました。設計者のプロポーザルには約100件もの応募があり、予想以上の多数の応募があった事について、市の担当者は、「大地の芸術祭(※)の効果で、建築関係者に十日町の知名度が高いことと、市民と一緒につくるということへの関心が高かったのではないか。」と話していました。市民交流センター、市民活動センター・まちなか公民館は平成28年春にオープン予定です。

(※)大地の芸術祭とは、過疎高齢化の進む日本有数の豪雪地・越後妻有(新潟県十日町市、津南町)を舞台に、2000年から3年に1度開催されている世界最大級の国際芸術祭。

3.取材を終えて

 平成27年は、3年に1度開催される「大地の芸術祭」の年であり、約380の作品が展開され、過去最高の入込が予想されています。また、「十日町産業文化発信館 いこて」のオープンを皮切りに、平成28年春に向けて、行政、民間事業者、市民が連携して検討してきた市民交流センター等の施設が次々にオープンする予定です。その他NPO等が取り組むソフト事業も順調に行われており、今後の十日町市の中心市街地のますますの発展が期待されます。

4.まちの概要

(1)規模・人口

 十日町市は、新潟県南部の長野県との県境に位置しており、東は南魚沼市、魚沼市、西は上越市、柏崎市、南は湯沢町、津南町、北は小千谷市、長岡市などと接しています。 十日町市の人口は57,662人(平成26年)で、減少傾向にあります。また、老年人口比率は33.5%(平成26年)で、高齢化が進んでいます。一方で、合計特殊出生率の推移をみると平成22 年が1.78 となっており、全国平均の1.39及び新潟県平均の1.43 を上回っています。また、平成22 年の値を平成12 年と比較すると0.03 ポイントの上昇となっており、年によって若干の変動はあるものの、少子化の進行には一定の改善傾向がみられます。

(2)交通アクセス

 十日町市内には、6本の国道が通っています。また、十日町駅には、新潟県と長野県を結ぶJR飯山線と、首都圏と北陸方面を結ぶ北越急行ほくほく線が通っています。各交通網での所要時間は、東京方面から関越自動車道経由で約3時間、上越新幹線及び北越急行経由で約2時間、北陸方面からは北陸自動車道経由で約2時間30 分、北越急行経由で約2時間30 分です。

(3)まちの特色

 縄文中期(約5,000 年前)の遺跡からは、「火焔型土器」が大量に出土し、特に笹山遺跡出土の土器群は、平成11 年に縄文土器として初の国宝に指定されています。  毎年の平均積雪が2mを超える、全国有数の豪雪地帯であり、1年の3分の1以上が降積雪期間で、独特の生活文化の形成などに大きく影響しています。「現代雪まつり発祥の地」として今年で第67回を迎える「十日町雪まつり」は全国的に有名であり、毎年2月には全国から大勢のお客様が訪れています。 また、2000年から3年に1度、越後妻有(新潟県十日町市、津南町)を舞台に開催されている「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」は、世界最大級の国際芸術祭です。農業を通して大地とかかわってきた「里山」の暮らしが今も豊かに残っている地域で、「人間は自然に内包される」を基本理念としたアートを道しるべに里山を巡る新しい旅は、アートによる地域づくりの先進事例として、国内外から注目を集めています。

<取材日 平成27年7月>