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商店街の空き店舗は、埋めて撤退してもまた埋める! —17年間で約50の空き店舗を店舗化—

ポイント

  • 商工会が17年にわたり空き店舗対策を推進
  • 商工会が空き店舗への出店者に初期投資経費の一部を助成
  • 商工会の他に、市と2つの組織が空き店舗・空き屋対策を推進
場所:
兵庫県篠山市
人口:
4.3万人
分類:
【空き店舗・空きビル】
協議会:
あり
実施主体:
篠山市商工会
 

http://scic.tanba-sasayama.com/ 別ウィンドウで開きます


1.篠山市商工会の取組

(1)空き店舗対策事業の経緯と概要

 篠山市中心部の商業は、平成に入ったころから郊外への大型店の出店、商店街区域での人口減少、後継者不足等により、厳しい時代を迎えることになりました。

 そのため、通りには空き店舗が増え始め、空き店舗対策の取組が強く求められるようになりました。このような状況を背景に、篠山町商業振興協同組合では平成8年度に、「篠山町商店街空き店舗対策調査計画策定事業」(兵庫県の補助事業)を実施し、商店街の空き店舗の状況と今後の方策を検討しました。

 平成9年度は、この流れのなかで、篠山町(当時)商工会が2つの空き店舗を店舗化し、これが、商工会の行う空き店舗対策のスタートとなりました。そして、平成10年度に篠山市商工会は、「商店街空き店舗対策モデル事業」(中小企業庁の補助事業)に取組みました。この事業は、45の空き店舗のうち10(うち4は期間限定店舗)が店舗化するという、大きな成果をあげることができました。この時は、店舗化工事の様子を見た隣の空き店舗の地権者が急きょ参加申込みするということも起こりました。

 その後も空き店舗対策は継続して進められ、平成25年度までに48店(平均2.8店/年)を店舗化しています。

空き店舗に開業した店舗

 なお、出店した店舗は、その後の環境変化などにより、他所へ移転したり、やむなく閉店となったケースもありますので、全部の店舗がそのまま残っているわけではありません。 しかし、商工会としては、商店街の街並み維持のため、この取組を継続し推進しています。

(2)空き店舗対策事業の仕組

(ア)空き店舗対策事業と助成金制度

 商工会では、日頃から中心市街地エリアの空き店舗の状況に注意を払い、それが誰の所有なのか、また貸す意思はあるのかなどの情報を収集しています。そして、その情報は空き店舗位置図に落とし込まれ、出店希望者(以下「チャレンジャー」)が現れた際、すぐに対応できるように整備しています。

空き店舗位置

  篠山市は観光都市でもあるため交流人口が多く、チャレンジャーにとって魅力ある地域になっています。そのため、商工会が関係方面に周知しなくても年間を通して一定数のチャレンジャーが、市役所や商工会に問い合わせのため訪れます。市役所に訪れたチャレンジャーは、市の制度の説明を受け、市では商工会の取組も紹介します。そうして、市経由または商工会に直接訪れたチャレンジャーは、「チャレンジャー登録」をし、以降、商工会は相談対応にあたります。

 商工会は、市が関与している「篠山市商工会元気商店街創造事業助成金制度」(以下「助成金」)に取組んでいます。この助成金は、中心市街地エリアの空き店舗に出店するチャレンジャーに対し、初期投資経費の一部を助成することを内容にしており、平成16年度からスタートしました。

 予算額は、市から商工会への補助が75万円、これに商工会が90万円を上乗せし、総額165万円が確保されています。助成金の額は、初期投資経費の50%以内で上限が30万円です。

 なお、市の助成金制度は、「篠山市起業支援助成金制度」といい、平成24年度にスタートしました。市全域を対象としており、商工会の助成金と制度内容に若干の違いがあります(後述)。

開業店舗の概況

 いよいよ出店意思が固まったチャレンジャーに対し、商工会では次のように対応し具体的な開業につなげています。

  先ずはチャレンジャーと物件探しを行います。地元不動産関係者を交え、空き店舗位置図などを活用し、適合する空き店舗を選定します。空き店舗を選定すると、チャレンジャーを商店会長と自治会長に紹介し、商店会や町内会の行事や役割を伝えます。そして地権者とは改修費や家賃の協議をしてもらいますが、商工会ではお互いに言い出しにくい部分を双方に伝えることで、着地点を見つけます。

 一連の流れの中で商工会は、「テナントミックスによる出店調整」というより「チャレンジャーの意向尊重」の立場をとっています。

(イ)助成金が交付されるまでの流れ
貸店舗

 チャレンジャーは、商工会との相談を経て、いよいよ開業に向かい、店舗の内外装をどうするか、設備・什器はどうするか、資金調達はどうするか等の具体的な検討に入ります。商工会は、このような相談にその都度対応し、商工会と市の助成金制度の説明を行います。

 また、要望があれば、工務店や設備事業者の紹介にも応じます。商工会への助成金の申請は「申請書」と「店舗改装の内容と経費明細」によって行われます。商工会は、「元気商店街創造事業推進委員会」(以下「委員会」)で審査を行います。この委員会の委員には、その地区から選出されている「振興委員(*)」が就任しています。審査は、「どうしたら出店と出店後の経営がスムーズにいくか。」という視点で行われます。そのため、場合によっては交付決定に条件が付くこともあります。

 そうして開業となり助成事業が完了すると、チャレンジャーは「完了報告」と「助成金交付請求書」を商工会に提出し、助成金が交付されます。

*振興委員

商工会・商工会議所と地区内小規模事業者との身近なパイプ役として、主に地区(集落)ごとに商工会・商工会議所が委嘱する委員。商工振興委員、小規模企業振興委員ともいう。

篠山市商工会元気商店街創造事業助成金制度の流れ

出店希望者が商工会にチャレンジャー登録

「やる気ある個人または法人」

チャレンジャーは商工会へ経営計画書を提出

空き店舗のマッチングと不動産契約

チャレンジャーは商工会へ助成金を申請

「申請書」と「店舗改装の内容と経費明細」
*助成金額は、出店(開業)計画に基づく
初期投資経費(設備・什器の取扱いは応相談)
の50%以内で上限30万円

商工会は委員会で審査・交付決定

出店完了後、チャレンジャーは商工会へ完了報告

助成金額の決定

チャレンジャーは商工会へ助成金を請求

「助成金交付請求書」

商工会はチャレンジャーへ助成金を交付 

2.市内で取組まれている商工会以外の取組

 篠山市には、商工会の行う空き店舗対策以外に、市と2つの組織による取組が進められています。
 開業希望者は、自身の開業プランや意向によって選択することになります。

(1)市の「篠山市起業支援助成金制度」による取組

 対象エリアは市全域で、業種は商工業全体です。初期投資経費の20%、上限は50万円、市周縁地域は重点地区として、上限が20万円加算されます。商工会と連携しながら進められており、商工会の経営指導を受けることが必須条件になっています。また、例えば同じ内装工事等、同一部分での商工会の助成金との併用は、運用上対象外になっています。

   なお、商工会の助成金も同様の取り扱いになっていますが、今のところ、ひとつの開業に市と商工会の2つの助成金を組み合わせた事例はありません。この制度の内容は商工会の制度と似ていますが、助成率の割合と上限から、おおよそ、商工会より規模の大きな開業の利用者が多いようです。

(2)一般社団法人ノオト(NOTE)による取組

 一般社団法人ノオト(以下「ノオト」)の前身は、篠山市が100%出資の人材派遣を手がける(株)プロビスささやまが、平成21年に発展改組し誕生した社団法人で、理事長には元副市長が就任しています。

 活動地域は中心市街地を含む篠山市全域を中心に、空き店舗を含む古民家等の再生全般を事業範囲にしており、これに、篠山市からの指定管理業務やスローフード事業、暮らしのツーリズム事業、クラウド活用のIT事業等、幅広い取組を展開しています。

 空き家対策の特長は、古民家等の持つ歴史的文化的価値を次世代につなぐことをコンセプトに、地権者との調整、改修内容の設計、全体の事業設計・運営管理、そして、自らの資金調達とテナント誘致にあります。物件は地権者から一定期間借り上げ、改修した物件をテナントに転貸する事例が多く見られます。実績は、中心市街地を含む市全域で、設立後3年間で50近くの古民家等を再生しています。

参考URL 「ノオト」のホームページ
http://plus-note.jp/ 別ウィンドウで開きます

(3)NPO法人 町なみ屋なみ研究所による取組

 NPO法人 町なみ屋なみ研究所(以下「町なみ屋なみ研」)は平成22年に設立され、取組の一番の特長は、空き家等の町屋を購入し、大工等の専門家の指導の下、伝統的工法や耐震補強に配慮しつつ、参加の呼びかけに応えたボランティアの共同作業で改修するところにあります。

 改修後の建物は転貸や販売をしています。

 なお、ボランティアは県内だけでなく近県からも参加しており、改修後の建物を購入することもありますし、ここで覚えた技術を地元に戻って空き家改修に活用し、そこで自身が目的とする用途に利用するということもあります。

 前出のノオトや他の組織・団体の取組に改修協力することも多く、また、改修は店舗化だけを目的にしたものではなく、美しい街並みや風景を守るという文化的側面の濃い取組になっています。

参考URL NPO法人 「町なみ屋なみ研」のホームページとブログ

3.関係者の声

原田氏と波部氏

 商工会の空き店舗対策に当初から携わってこられた、原田事務局長は、次のように語っています。
 「取組の当初から担当してきました。現実の実態として、商店街の空き店舗は把握している以上に存在しており、いったん開業し埋まっても、状況変化により、移転したり閉店するお店も出てきます。人口減少と高齢化の進展等を背景に、今後も空き店舗は増加する厳しい状況が続くと思います。商工会としては、制度や取組をこれからの時代にあったかたちに改善していくことも考慮しつつ、継続して取組んでいきます。」

4.取材を終えて

 篠山市に取材で訪れ興味を引いたのは、17年の長期にわたり空き店舗対策を推進してきた商工会はもちろんですが、市、ノオトそして町なみ屋なみ研が、空き店舗・空き屋対策に取り組んでいることでした。

 そして、商工会とノオトの取組みにより100近くの空き店舗、空き屋、蔵などの未利用建物が再生されています。視点をかえ、もしこれだけの数の空き店舗等が再生されないまま放置されていたとすると、今の篠山市のまちの活気はなかったと思います。これからも空き店舗等対策の推進に期待したいと思います。

 また、原田事務局長から、「昔の開業者は、“商売を伸ばし一旗揚げるんだ、石にかじりついてでもがんばるぞ!”という方が多かったと思います。でも最近は、自分自身が好きなこと、ライフワークにしていることで開業したい、という方が増えているように思います。石にかじりついてでも、という気概や商売を伸ばすという強い意志を、以前ほど感じない方が増えているようにも思います。このような方に対しては、商工会の対応もそれに合わせて、何か一工夫していくことが必要かもしれませんね。」というお話がありました。世代や商売への考え方が異なる様々な方への支援はどうあるべきなのか考えさせられました。

<取材日 平成27年2月>

まちの概要

篠山市の位置

篠山市は、兵庫県中東部の内陸都市で、古くは京都への交通の要として栄えた城下町です。神戸・京都・大阪からの交通の便が良いため、武家屋敷や地元食材を使ったグルメを求めて多くの観光客が訪れます。丹波黒豆、ぼたん(猪)鍋は全国的にも有名です。

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