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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

買い物弱者対策を推進する団地商店街(東京都武蔵村山市)

政府が発表した令和元年度版高齢社会白書によれば2018年10月1日現在の日本の高齢化率は28.1パーセントです。最も高齢化率が高い都道府県は約50パーセントであるといいます。(※高齢化率は総人口に占める65歳以上人口の割合)

今回、高齢者をはじめとする買い物弱者対策を進める村山団地中央商店会が位置する村山団地の高齢化率は約51パーセント(2019年9月現在)と高い水準にあります。まさに高齢化対策先進地区であり、その対策は高齢化が進む中心市街地地域にも参考になる事例です。

高齢者の生活を支える団地商店街の取り組みを村山団地中央商店会の会長である、比留間誠一氏(以下、比留間氏)に伺いました。

比留間氏
村山団地中央商店会会長 比留間誠一氏

高齢化率50パーセントを超える大型団地の商店街

東京都武蔵村山市の村山団地の高齢化率は約51パーセントです(2019年9月現在)。1966年(昭和41年)に完成した村山団地は、昭和時代の人口増加・経済発展を支えてきましたが、2000年を迎える頃には建物の老朽化対応のため建て替えが始まりました。この頃には、村山団地の高齢者率はすでに約45パーセントを超える高い水準でした。

建て替えは近隣に高層住宅を建築し、完成した建物に順次移り住んで行く形で現在も続いていますが、村山団地中央商店会が店を構える建物は、建て替えがまだ実施されていません。商店街から見れば、建て替えにより顧客が今までより離れてしまったことになります。

村山団地建て替えによる住民移動の概略図
村山団地建て替えによる住民移動の概略図

村山団地中央商店会と長い付き合いのある高齢者が、建て替えにより離れてしまったことや建て替え先の住居が高層であることからさらに外出が難しくなってしまったことが原因で、客足が鈍るようになりました。実際、それにより2007年には売上の減少が各店舗で見られるようになりました。

農林水産省によれば、店舗まで500メートル以上かつ自動車を利用出来ない65歳以上の高齢者の人数(食料品アクセス困難人口)は、2010年には382万人程度であり、今後、2025年には598万人まで増加すると推計している。(出所:買物弱者対策に関する実態調査(総務省2017年7月19日付))

村山団地中央商店会の買い物弱者対策

宅配サービスの展開

このような環境下で、比留間氏をはじめとする商店主は、「お客様がこちらにお越しになりたくてもできないなら、こちらが伺おう」と宅配サービスを開始することにしました。

この取り組みに共感した武蔵村山市商工会(以下、商工会)から、団地に限った事業ではなく、市全体でこのサービスを展開することを提案され、村山団地中央商店会は商工会とともに「まいど~宅配」と名づけられた宅配事業をスタートすることとしました。

この宅配サービスは特に、歩くことも難しくなった高齢者に好評で、現在も継続してサービスが提供されています。冬場に利用頻度が高くなるなど、利用回数に季節変動があるものの、安定したリピート利用があります。コスト削減のため商品集積所はなく、申込にあたっては利用者が買い物をしたい各店舗に連絡をする方式を取っています。

連絡を受けた店舗は、いくつか商品を見繕い高齢者宅を訪問し、コミュニケーションを取りながらニーズに応じた商品・サービスを提供しています。宅配サービスながら、食材の切り分けや、衣類の裾上げなどにも柔軟に対応するなど、各店舗がきめ細かな対応を続けています。

直近4年間の宅配サービス利用回数(月別)
直近4年間の宅配サービス利用回数(月別)
送迎サービスの展開

好評の宅配サービスですが、高齢者の中には商店街に赴き、じかに買い物を楽しみ、仲間ともおしゃべりをしたいといったニーズを持つ層がいることが分かりました。さらに、タクシーを使ってまで商店街を利用する高齢者がいることを知りました。

そこで、比留間氏ら商店主は、高齢者の方に負担なく商店街に来ていただくにはどうすればいいか話し合いました。話し合いを通して、東南アジアなどに見られる三輪人力タクシー(自転車の後ろや横に客席を設けた自転車)を活用し、安全に高齢者のお客様を送迎する考えに至りました。

早速、宅配サービスを協働する商工会に相談。資金面や送迎自転車の開発など運用に向けた話し合いを重ねました。その結果、資金は武蔵村山市の補助を得ることとなりました。運営にあたっては、商工会の事業支援を受け、村山団地中央商店会をモデル地域として、2009年10月から送迎サービスを展開することとなりました。

それを受けて村山団地中央商店会は、空き店舗を活用して送迎受付と送迎利用者の待合所を整備し、運転手には有償ボランティアや商店主を据えることで、低コストで事業展開できる体制を整えました。

空き店舗に整備された送迎サービスの受付・待合所
空き店舗に整備された送迎サービスの受付・待合所

こうして導入された送迎サービスは、宅配サービスと同様に、季節による利用者数の変動があるものの、心温まるサービスを心がけた結果、リピーターの利用が多くなりました。

直近4年間の送迎サービス利用回数(月別)
直近4年間の送迎サービス利用回数(月別)

利用促進にあたっては、送迎自転車運転手(有償ボランティアや商店主)が送迎自転車で団地内を回遊し、高齢者に声をかけ利用を求めた。サービス開始時は、高齢者に「利用するのが恥ずかしい」と印象を与えたが、「利用してみると快適で便利」と口コミで評判が広まり、利用者が増えてきた。
今ではさらなる高齢化から、宅配サービスへシフトが進み、利用回数は減少傾向であるものの、依然として高齢者の足として不可欠な存在である。

高齢者宅から直接商店街に呼び込むこの取り組みに、様々な店舗が高齢者対応サービスを展開するようになりました。例えば、米屋が高齢者のニーズに即した惣菜の提供を始め、魚屋は客の希望に応じて購入した魚を焼き魚にして提供するサービスを始めました。このようなサービスにより高齢者の満足度がさらに高まりました。

商店街が団結して高齢者対応に注力した結果、サービスを展開して10年以上経つ今でも宅配サービス、送迎サービスの利用数はそれぞれ年間2,000件から2,500件に上ります。これらが商店にとっても商機につながっていることはいうまでもありません。

送迎自転車
送迎自転車

上記送迎自転車は、サービス導入から5年後に導入された新しい送迎自転車。この開発にあたり、村山団地中央商店会は、製造業が集積する地元で開発できないか商工会工業部会に打診。商工会はこれを受け商業部会と工業部会が協働して開発にあたった。その結果、地元製造業11社が協力して製作。利用者の足場の拡大や風雨をしのぐカバーの設置、そして何より、シルバーカーが載せられるようになり、利便性が大幅に向上した。

地域の見守り

村山団地中央商店会が展開する宅配サービス、送迎サービスは、商店街の商機を生むだけでなく、「高齢者の見守り」という重要な役割も担っています。村山団地中央商店会は市の地域包括支援センターと協力し高齢者の支援を行っています。

先述の通り、宅配サービス、送迎サービスの利用者の多くはリピーターです。サービスを提供する中で、有償ボランティアや商店主は、こうした高齢者の動きに気を配るようになります。

具体的には、普段利用する高齢者の利用が無いことや、高齢者夫婦のどちらかが入院したなどの情報を得たときは、すぐに地域包括支援センターと情報を提供し対策を講じています。

また、村山団地中央商店会と地域包括ステーションとの定期的な連絡会議を開くなど、情報共有を密にしています。さらに、認知症サポーター講習会を実施し、高齢者支援力を高めています。

村山団地を取り巻く高齢者支援スキーム
村山団地を取り巻く高齢者支援スキーム

まとめ

村山団地中央商店会が取り組んできた宅配サービスや送迎サービスといった高齢者対応策について紹介しました。比留間氏は、「買い物弱者問題が全国的に取り上げられた時期に、送迎サービスを展開したこともあり、新聞やテレビなどのマスコミから取材を受けることが多い。これがきっかけとなり、市町村や商店街からの視察があり、その中には送迎サービスを取り入れた商店街もあった。高齢者支援としてお役に立てたことをうれしく思う。」と語ります。

また現在、宅配サービスや送迎サービスの運営には補助金が投入されていますが、自主運営も視野に入れた方策を比留間氏は思考しています。さらに、送迎自転車の耐久性や利便性など日々の運営の中から課題を洗い出し、送迎自転車製造に取り組む様々な企業や開発者と情報を共有するなど事業の改善にまい進しています。

以上のように高齢化先進地区で課題解決に取り組む村山団地中央商店会の取り組みに今後も注目です。