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中心市街地活性化協議会支援センター

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まちづくり事例さまざまな市街地活性化課題解決のヒント
まちづくり事例

行政マーケティングの実践(宮崎県日南市)

課題
  • 人口減少に歯止めをかける戦略の立案と実施

行政マーケティングの実践

【行政マーケティング】
 マーケティングの概念を解りやすく「売れて儲かる仕組みづくり」と表現するケースも多く、1940年代から発展してきたものです。この表現には主語として「商売人が」という言葉が隠されています。しかしながらこの合理的な考え方をまちづくりに取り入れたのが日南市です。
まちの活性化の仕組みづくりとも言える、いわば「行政マーケティング」の実践について、日南市産業経済部 商工・マーケティング課の阪元氏、川越氏にお話を伺いました。

【なぜIT企業を誘致するのか】
 そもそも取材させていただく目的は、なぜIT企業を誘致し続けているのか?ということをお聴きすることでした。
しかし、話を聴いていくうちにその根拠と明確な狙いが存在していることがわかりました。その背景にはデータ分析による仮説と、その解決方法たる打ち手の決定に至る行政マーケティングの存在があります。

(日南市の将来推定人口:日南市のデータより)
(日南市の将来推定人口:日南市のデータより)

まず、日南市民から収集したアンケートを基に重要度が高く、満足度が低い項目を抽出した結果、「商店や商店街」「企業や工場」とともに、「雇用環境」が挙げられました。

(市民アンケートによる分析:日南市データより)
(市民アンケートによる分析:日南市データより)

 そこで、「雇用環境」について現状を把握します。
日南市の有効求人倍率は1.16(平成30年3月時点)です。これは100人の求職者に対して116人分の求人があるということを意味し、雇用環境は決して悪いものではないと捉えられます。2013年の有効求人倍率が0.55ポイントであったことを考えると大きな進歩であるとも考えられます。
しかし、職種別の内訳を見ると、事務職の有効求人倍率が0.33であることが解りました。人数でいうと178人が職不足となっているという大きな課題が存在していました。  これは事務職を求める若者が数百人規模で日南市以外に流出する可能性が高くなることを意味しています。つまり、住民アンケート、及びデータに基づく分析は「有効求人倍率の上昇は雇用環境の改善だけではなく人手不足の悪化である」というものでした。

(事務職の有効求人倍率:日南市データより)
(事務職の有効求人倍率:日南市データより)

 この問題を解決することは日南市の年代別人口について若者から高齢者まで均等にするといった“人口ピラミッドのドラム缶化”を目指すものでもあり、まちの永続的存続に大きな役割を果たすものとなります。

(日南市の年齢別性別人口:日南市データより)
(日南市の年齢別性別人口:日南市データより)

【課題解決の打ち手はIT企業誘致】
 この分析をもとに、日南市商工・マーケティング課では若者層の吸収力が高い事務職を誘致する、という方向性を示します。
生産年齢人口減少が迫る中、一人当たりの生産性向上とともに、新たな生産年齢人口増加のためにも、女性や育児中の方々などへの雇用促進、あるいは働き方の多様化(テレワーク、社内事務簡素化、クラウドソーシングの活用など)といった労働市場の外部環境を踏まえIT企業の誘致を打ち手としました。

(日南市 産業経済部 商工・マーケティング課の阪元氏(左)、川越氏(右)
(日南市 産業経済部 商工・マーケティング課の阪元氏(左)、川越氏(右)

【IT企業誘致による効果】
 ここまで打ち手が明確であると、行動は早いです。早速東京のIT企業にアプローチ。
IT企業のスピード感に負けない行政側の対応が評価され、IT企業第一号としてポート株式会社と合意を取り付けました。
 ポート株式会社は日南市の油津商店街の取り組みに賛同し、空き店舗にオフィスを構えることとなりました。おしゃれな外観のオフィスは2016年グッドデザイン賞、第29回日経ニューオフィス賞を受賞しました。

(商店街空き店舗に入居したポート株式会社日南オフィス)
(商店街空き店舗に入居したポート株式会社日南オフィス)

 IT企業誘致の効果は早速現れます。ポート株式会社が日南オフィス開設メンバーを10名募集したところ、約300名の応募があったとのことです。

 ポート株式会社の進出と多くの応募があったことは、県内外のメディアに大きく取り上げられ、地方への進出を考えていたIT企業からの問い合わせが急増しました。
その結果、2018年末時点でIT企業の日南市への進出は13社となり、2021年度末までの雇用計画が287名となっています。2018年12月年末現在で既に129名を新規に雇用しており、そのうちの4割が新たな日南市民になったとのことです。

 行政マーケティングを実施した結果、①若者の雇用創出、②空き店舗解消、③まちのブランド構築、などの効果が現れてきています。

 マーケティングは戦略を司る礎でもあります。まちづくりにおいてマーケティングを導入する効果は、中短期的な賑わいの効果とともに長期的なまちの存続発展につながる戦略を見出す効果的な手法である。日南市の事例は大きなヒントを与えてくれた気がします。

【まちの概要】
 日南市は日向灘に面した宮崎県南部に位置し、人口約5.2万人を擁する県南の拠点都市です。温暖多照な気候に恵まれ、古くから林業(飫肥杉)や漁業(油津港)等の産業で栄えてきた一方で、昭和30年代には大手製紙会社が立地するなど、多様な産業を有しています。
 日南市中心市街地は宮崎市内から日南線で約1時間30分の距離にあります。
九州の小京都と称される城下町の飫肥、日向灘に突き出した鵜戸神宮、風光明媚な日南海岸、サーフィンスポットとして有名な梅ヶ浜等の観光地の他、自然や農林水産物等の地域資源も豊富です。広島カープや西武ライオンズをはじめとするスポーツキャンプ地としても知られています。