復興まちづくりのシンボルとなる商業施設「浜風きらら」の計画進行中  -福島県いわき市久之浜町―

1.まちの現状と課題(平成25年度まで)

(1)東日本大震災での被害状況(久之浜・大久地区)

(ア)家屋被害

 東日本大震災により久之浜町の1,683棟が被害を受けました。(2011年10月現在)
内訳は、次のとおりです。
全壊759棟(うち全焼71棟)、大規模半壊262棟、半壊338棟、一部損壊324棟
全壊  129,855戸  半壊257,739戸

(イ)人的被害

 人的被害は、直接死50人、関連死3人、死亡認定行方不明13人となっています。(2012年8月現在)

(2)まちの現状

(ア)住民の避難状況

 自宅を離れて避難されている世帯は、641世帯(全世帯数の約30%)あり、その約半数がいわき市平地区へ避難しています。避難世帯の内訳は次のとおりです。
平地区302世帯、内郷地区169世帯、常盤地区53世帯、小名浜地区46世帯、久之浜・大久地区27世帯、その他市内37世帯、市街7世帯。

(イ)復旧・復興状況

a)仮設商店街による復旧
浜風商店街

 東日本大震災の被害により約40店舗が壊滅したため、地域住民の生活にも支障が出てきていました。そこで、久之浜町商工会(以下「商工会」)が商店街を再興すべく2011年4月28日に商工業復興委員会を立ち上げ、いわき市内の空き店舗・空き工場等を活用しながら店舗の営業再開を図る計画を検討しました。しかしながら、住民の切実な声を聞いた商店主の多くは、いわき市内の他地区の空き店舗に入るより、久之浜町で営業再開し、住民の力になりたいという意見でまとまりました。

 商工会では、久之浜町での商店再開を図るために、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」)が東日本大震災での被災地域の復興を支援する仮設施設整備事業を活用して、商店街の建築部分の整備を行うとともに、福島県やいわき市の支援も受けながら、商店街再生計画を進め、2011年9月3日に市立久之浜第一小学校の校庭に日本で最初となる仮設商店街「浜風商店街」をオープンさせました。

b)住民参加の復興まちづくり

 復興を進めるためには、久之浜町の未来を描く必要があるため、地域住民が中心となり2011年4月20日に久之浜・大久地区における被災者の支援と復興対策、原発事故からの住民の安全について話し合うために「久之浜・大久地区東日本大震災・原発事故に関わる被害者支援及び復興対策協議会(以下「復興対策協議会」)を発足させました。

復興対策協議会は、被災者支援と復興の動きを着実に進めて行くために「まちづくり専門部会」、「安全専門部会」、「商工専門部会」、「農業専門部会」の4つの部会を設置しました。

 そのうちの「まちづくり専門部会」と「商工専門部会」が合同で久之浜・大久地区の復興に向けたまちづくり・グランドデザイン(以下「復興グランドデザイン」)の策定を担当しました。

 グランドデザインの策定にあたっては、外部有識者を外部支援員として招き、問題点の抽出、問題点を解決するためのアイデアを住民参加によるワークショップ等で意見を出し合い、その結果を被災地域再建のポイントとして纏めていきました。

 復興対策協議会は、このようにして取り纏めた「復興グランドデザイン」を、2012年3月27日にいわき市長へ「久之浜・大久地区における放射能除染及び復興計画に関する要望書」として提出しました。

 これを受けていわき市は、2012年6月7日に「いわき市復興整備協議会」を設立し、同年6月12日に被災地の土地区画整理事業区域等の都市計画の決定を行いました。

c)震災復興土地区画整理事業等の実施
久ノ浜復興土地区画整理事業区域内の状況

 被災地の復興のための基盤整備を行う事業として、「久之浜震災復興土地区画整理事業(以下「土地区画整理事業)」の事業計画(施行面積28.2ha)が2013年2月26日に認可されるとともに、平成27年度以降に住宅の建築着工が可能となるスケジュール(予定)がいわき市より示されました。

 その後、いわき市からは、土地区画整理事業区域内での商業施設街区の位置、面積(約2,300平方メートル)が示されました。また、福島県からも防災緑地計画に関する住民への説明も実施され、被災地の復興事業が2013年度から本格的に開始されることとなりました。

(3)課題

 このような状況の中、久之浜町の復興を加速させるためには住民が希望を持って、まちに戻ってこられる様な商業施設を実現するための計画策定が必要でした。

2.商業施設計画策定の取り組み

出店希望者全体会議風景
(1)中小機構の支援

 震災前の久之浜町には、約40の店舗がありましたが共同で運営している商業施設は無かったため、共同店舗等の商業施設の運営・管理(経営)に関する勉強から始める必要がありました。

 このため、中小機構東北本部の中心市街地活性化(まちづくり)を担当する職員の支援と併せて中小機構が行っている震災復興アドバイザー派遣事業(無料)を活用した専門家派遣による支援を行うことで、商業施設計画の構想から実現に向け取組んでいくことにしました。


(2)計画策定の流れ(2013年3月~)

 商業施設計画の流れについては、商工会、被災事業者のうち、出店意欲のある方及び中小機構で協議した結果、別紙1のとおり概ね5段階のステップを踏んで計画を策定していくことにしました。

久之浜地区の商業施設構想に関する支援項目

 中でも、共同店舗の運営経験者がいない為、先進地視察として福島県内の2つの商業施設(組合方式、株式会社)の視察をstep1とstep2の間で実施し、デベロッパーの行うべき業務について理解を深めて行きました。

 商工会が中心となって被災事業者を取りまとめた結果、現時点で10名の事業予定者が計画策定に参加しています。
 商業施設を運営する組織は、外部からの資金調達及び経営判断の迅速化を考慮し、株式会社を選定する事としました。
 これまで20回の出店希望者の会議を重ねた結果、step4の③導入機能・規模まで概ね決定した段階まで漕ぎ着けてきました。



(3)計画として決定した内容

(ア)施設名 「浜風きらら」

(イ)施設のコンセプト

 「信頼される食の提供」
 「笑顔をつなぐ楽しみの場の提供」
 「仕事(場)づくり」

(ウ)導入機能

 地域住民の生活利便の向上を果たす機能の導入として、生鮮三品を扱う店舗、飲食店、雑貨店、理美容店、クリーニング店、音楽教室、住民向けサービス機能及び支援機関等をテナントとして商業施設へ誘致していきます。

(4)今後の作業

(ア)商業施設計画(ハード面)の精査

  今後は、施設設計、事業計画等の作業を行っていきます。

(イ)商業施設の運営・管理

 すべての商業施設に言えることですが、移り変わる市民のニーズを的確に把握し、商業施設としての魅力を如何に維持していくかが、長期的な視点での課題となってくると思われます。
当面は、施設設計(基本設計・実施設計)へ注力していく事となりますが、並行して個店の魅力向上及び施設の運営・管理方法の検討を行っていきます。

(5)今後の課題

(ア)資金調達

久ノ浜復興土地区画整理事業完成イメージ図

 被災事業者が商業施設を整備するため、震災復興関係の補助事業を活用することは当然ですが、中小零細の事業者が集まっているため、補助金の裏負担分の資金調達を如何に実施するかが課題であると思われます。また、株式会社を立ち上げても、実績がないため銀行融資等に苦労することも想定されます。このため、今回の計画に賛同する幅広い層から資金調達(資本金だけでなく)を行っていく必要があります。

(イ)幅広い収益源の確保

 商業施設の経営をより安定させるためには、専従の管理者が必要となります。良い人材を確保するためには、それなりの報酬が必要となりますので、商業施設としてテナント賃料以外の収益源(簡単な物だと自販機、駐車場等を活用したバザー(出店料収入)など)をできる限り確保して行く必要があります。

(ウ)土地区画整理事業等との連携

 久之浜町の復興は、商業施設だけでは進んでいきません。避難されている住民の皆さんが住みたくなる「まち」である必要があります。このため、土地区画整理事業区域内の土地利用や防災緑地の利活用についても事業主体やまちづくりに積極的に参画して貰えるNPO法人等と連携を図り、「まち」全体の魅力向上を図っていく仕組み作りにも着手していく予定となっています。

(6)現地訪問を終えて

 2011年度の仮設商店街の整備から今日まで、中小機構東北本部の担当職員として支援をさせて頂きました。しかしながら、復興に向けた事業進捗は、まだまだ道半ばであります。これからも現地の皆さんと一緒になって久之浜地域の復興が進むように支援させて頂きたいと思います。

まちの概要

(1)規模・人口

 いわき市久之浜町は、いわき市の北東端に位置し、北部は双葉郡、南部は四倉地区と接しています。
1889年(明治22年)田之網村・金ヶ沢村・末続村が久之浜村と合併し久之浜村となりました。
1902年(明治35年)久之浜村が町制施行し久之浜町となりました。
1966年(昭和41年)久之浜町を含む14市町村が合併し、いわき市が誕生しました。
いわき市となった自治体の中では最も面積が小さい町でした。
久之浜町の震災前の総人口(2010年9月1日現在)は、5,617人、世帯数は1,953世帯でした。

(2)交通アクセス(「浜風きらら」の計画地)

 上野駅からJR常磐線のいわき駅まで特急スーパーひたち号を利用し、いわき駅で在来線に乗り換えると久ノ浜駅まで、約2時間30分で到着します。
 久ノ浜駅からは、徒歩2分の距離に「浜風きらら」の計画地はあります。
 自動車の場合は、常磐自動車道いわき四倉ICより約15分の距離にあります。

(3)地勢

 久之浜町は、東は県立自然公園波立(はったち)海岸を中心とする海岸線と、天然の入り江を利用してできた久之浜港を有し、西北は阿武隈高地が連なる約8kmに及ぶ三ツ森渓谷の森林地帯を有しています。町の中を流れる大久川流域の地層からは、フタバスズキリュウや巨大アンモナイトなどの化石が発掘されるなど、学術上においても貴重な資源を有しているところです。

<取材日H26年5月>

出典・参考

出典

 浜風商店街-ふるさと久之浜で生きる- 商工会だより

参考URL

 浜風商店街
 久之浜町商工会

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