高校生を主役に大学生と商店街がサポートし、イベントを開催
「熱血!高校生販売甲子園」~ぼくらの力が地域を変える~

■ポイント

  • 高校生チームが地域を代表して、商品開発と販売を競う
  • 大学生が高校生を主役に積極的に地域活動を推進
  • 行政・地域・商店街は大学生をサポート
高崎駅
  場所: 群馬県高崎市
  人口: 375,334人(H26年11月30日)
  分類: 【教育文化】【イベント】
 協議会: あり
実施主体: 高崎市えびす講市実行委員会、熱血!高校生販売甲子園実行委員会






1.活性化への取組

 「熱血!高校生販売甲子園」(以下、「販売甲子園」)は、高崎市のえびす講市で開催される高校生による販売バトルイベントです。昭和4年から続く年末恒例行事のえびす講市は、百貨店・商店街のセールや富くじ、イベント、屋台を楽しみにたくさんの家族連れでにぎわいます。平成20年から始まった販売甲子園は、今やえびす講市の目玉企画の一つに成長しました。地元新聞・ラジオだけでなく首都圏のTVニュースでも「群馬 高崎で高校生が自分たちのアイディアで開発した商品を販売する地域の活性化イベント」として紹介されるほどです。今年は県下18校18チームが参加し、11月15日、16日高崎市の大手前通りで行われました。


(1)取り組みのきっかけ

販売甲子園

 高校生のイベントとして有名な販売甲子園ですが、実は高崎経済大学(以下、高経大)の大学生が企画・運営する高校・大学連携の地域活性化プロジェクトです。

 販売甲子園のきっかけは、一人の商業高校生、友光さんの「商業・農業高校生の成果発表の場を作りたい、大学生と交流したい」という思いでした。その後、友光さんは、高経大へ進学し、1年生の5月に販売甲子園のアイディアを具体化しました。大学の先輩と実行委員会を立ち上げ、同年11月のえびす講市で第1回販売甲子園を開催しました。短期間で実現できたのは、友光さんの父で当時、高崎中部名店街の理事だった友光勇一氏や青年会議所など、地域のサポートのおかげでした。

 初回からしばらくは、参加校の確保に苦労しましたが、4回目からは高校から参加希望が寄せられるようになり、主催者も高崎中部名店街からえびす講市実行委員会に代わり、規模を拡大して継続しています。



(2)熱血!高校生のための販売甲子園

 販売甲子園は、学校単位でエントリーしたチームが、約半年間をかけて準備した成果を2日間のテント店舗で発揮し、勝敗を競います。大会ルールと勝敗を決定する評価方法は右下の表のとおりです。大会ルールは、立ち上げメンバーが4年次の第4回目にルールを具体化して作成した「ルールブック」が基になっています。 各チームは、6月頃から放課後や休日を利用し、貸与される事業費6万円を元手に商品を企画し、仕入れ・販売価格・販売方法・店舗設営などを創意工夫します。勝敗は、「売上額」や「利益」だけでなく、「接客」と「アイディア」も評価され、ステージでのPR(パフォーマンス)や一般参加者の人気投票が加点されて決められます。2日間合計の得点をもとに、優勝・準優勝・第3位・特別賞の4校が表彰されます。



「奄美FMディ!」スタジオ
じゃんぐるくっきんぐ

 平成26年の優勝旗は、出場2回目の桐生第一高校の「じゃんぐる・くっきんぐ」が勝ち取りました。桐生第一高校には、普通科製菓衛生師コースと調理科があり、今回は、部活の調理部仲間で参加しました。調理実習で着慣れたコック帽とコック服が目を惹きます。チーム名に合わせて、動物にちなんだ名前やレシピのパウンドケーキとクッキーが人気で、両日とも開店1時間ほどで売り切れました。

 販売品で多いのは、クッキーやマドレーヌなどのお菓子類ですが、ホットドック、スープや豚汁など現地で食べられるものも人気です。ジャムやドリンク類の加工品や絵葉書や生糸のせっけんなど食べ物以外の特産品もあります。各チームは、まず完売を目指して売り込みを始めます。審査項目が売上だけでないことをよく理解しており、商品完売後も、別途用意した試食用の商品を一般客に勧めるなどして、最後まで元気な接客を続けます。販売終了後、活動資金6万円を返済して利益を確定し、売上と利益を本部に報告します。ちなみに過去の優勝チームは6万円の元手で25万円以上売りあげたこともあります。

 農業・商業系の高校生の成果発表の場として始まった販売甲子園ですが、現在は、学科に関係なく、クラスや部活、学年を超えた有志でチームを結成し、アイディアを競っています。通信制の高校にとっては交流の場や社会経験の場であり、進学校では大学生との交流を通して大学進学を考える場になっています。

 商品開発やメニューのレシピは、調理・食物科の先生が作ることもあれば、高校生が先生や大学生のサポーターに相談し、地元の農業者や菓子店に製造委託したり、地元の商品を仕入れたりすることもあります。最近では、観光地の紹介など地元PRを考慮した商品開発と店舗設営を行うチームが増え、一人一人が地元を代表して参加しているという意識が高まっています。



出店

 初出場の高崎東高の先生に聞きました。「リーダーが参加したいと自分でメンバーを集めてきたので、エントリーしました。進学校ですが、この経験は、進学・就職を考えるときにいい財産になると思います。学校ではアルバイトを禁止しているので、貴重な体験です。」


(3)大学生が実行委員会を組織し、運営

 販売甲子園は、毎年、高経大の学生が大会ごとに実行委員会を立ち上げて事業を行います。参加する大学生は単年度の活動ではなく、大学のサークルと同様に年間を通して数年間に渡り活動しています。今年度は、企画、広報、協賛、高校担当の4班に分かれて活動しました。

  • 企画班:イベントの実施や交流事業の企画と実行、市や商店街・商工会議所など関係者との調整を行う。
  • 広報班:ホームページの作成やメディアへの取材依頼、活動記録や映像制作を担当。
  • 協賛班:市内の企業や店舗から協賛金を募り、運営資金を集め、パンフレットやHPに協賛広告を掲載。
  • 高校班:参加校への窓口となり、説明会の実施や会場でのサポートを行う。エントリー後は、一校ずつ決められた担当者が高校を訪問し、商品開発やPR方法、会場での展示や接客まできめ細かくサポートを行う。
販売甲子園の仕組み


(4)継続のしくみ

1.実行委員の1年

 販売甲子園は、年末の2日間のイベントですが、高経大の実行委員会は、1月には準備委員会を立ち上げ、新年度をスタートします。実行委員長1名、副実行委員長、班ごとにリーダー、サブリーダーを置き、新年度の体制や方針、事業計画を検討し、組織構成の見直しを図ります。3月までは主に交流と4月以降の準備を中心に活動します。4月以降は、新人の勧誘を行い、各班に分かれて本格的な活動が始まります。リーダーを中心に、新人にできる仕事、上級生と一緒に活動して慣れてから行う仕事など順に指導を行い、最終的には責任を持って仕事ができるよう、育成を図っています。

 さらに11月本番前には、大会当日の会場運営や誘導を行うボランティアを募集します。大会後は、報告書をまとめて報告会を開催し、1年の活動が終わります。

 大学生の活動高校生の活動
1月「準備委員会」発足
3月までに高校への案内状の作成や送付を行う
 
2月「追いコン」  前年度の実行委員(4年生)の追い出しコンパ 
3月「街なか卒業式」前年度の実行委員(4年生)を祝う。商店街主催
「大交流会」  今年度参加高校生を対象
冬合宿(準備委員会の交流目的)
高校への案内状送付
「大交流会」参加 今年度参加の高校生が対象
次年度の案内状受領
4月「実行委員会発足」
新入生勧誘
 
5月新入生歓迎イベント バーベキュー等
実行委員の班分け決定、活動スタート
参加校へのプレゼン活動
大学生のプレゼンを受け、参加を検討
6月地域探訪企画 実行委員自身が地域を歩いて地元を知る参加意思表明提出
7月~9月(協賛活動)
夏合宿(キャンプ)
エントリーシート提出
8月地元祭りに出店大学班が高校訪問スタート
9月協賛活動販売商品決定表提出
10月「事前説明会」(参加高校向け) 高崎経済大学で開催
地元お祭りに出店
ボランティア(販売甲子園開催日のサポートスタッフ)
を募集・説明会開催
「事前説明会参加」活動資金貸与
参加チームがプレゼンテーションを行う
11月販売甲子園当日  午前中に交流会販売甲子園 当日午前中の交流会参加
12月報告書作成・報告会 


2.大学生が地域をつなぐ

 大学生は毎年代替わりしながら、1年をかけて販売甲子園をまとめあげます。1年間の活動を通して、大学生は、高校生や地元商店街、市役所など、大会関係者との交流を通じ、地域とのつながりを深めています。実行委員の結束を固めるために2回の合宿や新入生歓迎のバーベキューを行います。さらに、実行委員自らが、地域を知るための「地域探訪企画」を行い、まち歩きをします。7月から9月にかけては、地域イベントとして確立するため大学生が地元企業を訪問し、大会の趣旨に賛同して、資金提供していただける企業を募ります。

 さらに卒業生であるOBOGも組織化され、現役メンバーに向けたOFF-JT実施やOBOG会で年間を通じてサポートを行っています。サークル・ゼミと違い、販売甲子園には引退はありません。立場、役割が変わってもずっと現役であり、世代を超えた地域イベントとして活動を続けています。

(5)新しい動き

まちなかファッションショー

 地域密着の活動として根付いた販売甲子園ですが、実行委員OBを中心に新しい活動が始まっています。一昨年の実行委員長を務めた土屋さんは、「高崎の素敵なお店をより多くの人に知ってもらいたい」という想いから、ファッションに興味のある高経大生を中心に高崎スタイリングコレクション(TSC)を立ち上げ、4年生だった昨年、えびす講市でまちなかファッションショー「高崎スタイリングコレクション2013」を開催しました。

 2年目の平成26年は「LOVE」をテーマに、学生や一般の公募モデル50人が、高崎市内のアパレルショップがコーディネートした衣装でレッドカーペットの上を歩きます。ブランドやコーディネートに合わせて映像や音楽で演出します。

 TSCは、参加ショップやモデルとの交渉、ショーの構成・演出、協賛金集め、パンフレット作成、商店街・行政との調整、集客のためのPR活動などを行います。手法は、販売甲子園と同じですが、こちらには、ファッションや音楽、イベントが好きな若者が集まりました。群馬大学のイベント企画サークル、高経大の映画研究部、写真部、群馬美容専門学校が協力しています。



(6)地域の支援

友光氏

 友光理事長によると、商都高崎には昔からまちで商人を育てていくという文化があり、理事長自身も若いころ、諸先輩方の応援で「失敗を恐れずやってみろ」と様々なことに挑戦させてもらったそうです。

 最初、高校生の販売甲子園の企画を聞いたとき、高校生ににぎやかな場所でやらせてあげたいとえびす講市の開かれる高崎中部名店街の会場提供を提案しました。しかし、大学生の申し出を市のイベントとして実現するには、様々な調整が必要でした。市や商工会議所への後援依頼、商店街や協賛店への協力要請、道路使用許可、参加校への呼びかけなど、大学生には経験のないことばかりです。理事の声掛けで、青年会議所の若手経営者や地域活性化団体が一つ一つ指導して、実現しました。

 販売指導する高校生班の大学生は、販売の経験のない学生がほとんどです。今年は、地元の百貨店「スズラン」の店長に協力いただき、接客研修を行いました。

 高経大の卒業生の8割は県外に就職します。友光理事長は、「学生がアパートや家と大学・バイト先だけの行き来で終わるのでなく、高崎のまちを第2の故郷としてほしいという想いで応援しています。」と語ります。

 高崎中部名店街では高経大の卒業式の日に、「まちなか卒業式」を行っています。商店街の中にレッドカーペットを敷き、卒業する実行委員を送りだし、まちなかでの活動に感謝の意を表しています。

(7)取り組みの効果

 販売甲子園の取り組みの効果は、えびす講市の2日間の集客だけではありません。販売甲子園には、毎年100人前後の高校生が参加します。仲間や先生、協力企業・商店と一緒に販売甲子園を目指す活動を通して、地元との関わりを深め、地元のために何かしたいという想いを強めていきます。非常に興味深いのは、販売甲子園に参加した後、今度は高校生を応援する側に回りたいと高経大をめざす高校生が少なくないことです。就職や進学について明確に決めていない時にイベントに参加して、地域活動に興味を持ち、高経大で学ぶきっかけとなっています。

 高崎スタイリングコレクションは、商店街が始めたわけではありません。販売甲子園を経験した若者自身が、おしゃれな若者がまちに来るきっかけをつくりたいと始めました。これらの活動を通して、高崎では、毎年、高校生と大学生合わせて数百人の学生が地域活動を経験し、充実した時間を過ごし巣立っていきます。すぐに高崎の市街地で活躍する人は多くないかもしれません。しかし、地域活動に興味を持ち、主体的に活動しようとする若者を世の中に送り続けていることが取り組みの一番の成果ではないでしょうか。

2.今後の課題と対応

 高崎駅前は、全国チェーンのファーストフードや居酒屋がほとんどない街です。それほど、人がいないと言われる駅前に平成27年にイオンが出店し、年間1000万人を集客する計画です。商店街では1日3万人を集客する力を借りて、子育てや若いファミリーが住みたい街、散策したい街にしたいと考え、回遊性の高いまちづくりを今後の課題としています。

 高崎市は、地方都市でありながら群馬交響楽団を持ち、高崎マーチングフェスティバルや高崎映画祭を開催するなど、音楽・芸術・文化活動が盛んなまちです。第2期基本計画では、音楽関連イベントと商店街の販売促進を連携させた「おもてなし」事業や「オープンカフェ」などの取組で、まち歩きと憩いの場の提供を図っていく予定です。

 行政や商店街が、音楽や飲食、イベントなどでまちの魅力を向上させるまちづくりを行い、まちで活躍した学生が大人になり、それぞれ、好きな形でまちで過ごす時間を楽しむ、そんなまちの姿が期待できます。

3.まちの概要、人口、交通、文化

高崎市

 高崎市は、関東地方の北西部、群馬県中部よりやや南西に位置する中核市で、古くから交通の要衝で中山道の宿場町として発展してきました。現在でも関越自動車道と北関東自動車道、上越新幹線と北陸新幹線の分岐点であり、交通の中心地です。新幹線や車で都内から1時間の高崎駅周辺に広がる高崎市中心市街地は、群馬県の玄関口として県下最大の集客力を誇っています。



<取材日 平成26年11月>

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