永田橋市場(ながたばしいちば)・末広市場(すえひろいちば)
~奄美らしさの残る「市民の台所」に新たな魅力を持つ出店者増加~

■ポイント

  • AiAiひろば(観光交流拠点施設)設立による回遊性の向上
  • 出店者が増える仕組みづくり
  • 増加する観光客を取り込む
  • 昔ながらの市場の面影を残す
永田橋市場
  場所: 鹿児島県奄美市名瀬
  人口: 4.5万人
  分類: 【商店街販促】【地域資源・地域特性】
 協議会: あり 平成22年9月設立
実施主体: 個人事業者
(最盛期は組合が存在したが現在なし)






1. 中心市街地の状況

 奄美市は、平成22年9月に中心市街地活性化協議会(以下「協議会」)を設立し、現在、中心市街地活性化基本計画の認定を目指している地域です。奄美の中心市街地には中央通りアーケードをはじめとした末広通り、奄美本通り、銀座通り等の商店街が存在し、奄美市民の買い物客でにぎわってきましたが、近年大型店が郊外へ進出し、顧客の郊外流出が問題となっています。また、奄美市はネット通販の利用率が高く、これも商店街での消費減少の一因となっており、まちの中心部にあったスーパーマーケットも撤退するなど、車で移動しない交通弱者である高齢者等のまちなかでの買い物が不便になるなど問題が出てきています。



2. 永田橋市場・末広市場の歴史と現状

「奄美FMディ!」スタジオ

 永田橋市場・末広市場(以下「市場」)は中心市街地の一角に位置します。

  昔ながらの奄美らしさが残る「市民の台所」としてにぎわってきました。市場の横には永田川が流れ、70~80年代の最盛期には、店舗が川の上まで張り出していたそうです。

 しかし、市場に隣接していたスーパー「まるはセンター」が平成10年2月に撤退したことにより、回遊性が低下し、そのにぎわいに陰りが見え始めました。

その後、市場では、ともに数店舗を残しほとんどが空き店舗となり、老朽化も進んだことから市場から市民の足が遠のきました。

 この現状を打破したきっかけのひとつは、平成24年に末広市場へ「奄美FMディ!」スタジオが開設されたことに始まります。その隣には昭和レトロ感のある駄菓子屋が開店し、駄菓子を食べながら放送を聞く人などの姿も見られ、再び市場が注目されるようになりました。

 その後、奄美市による「末広・港土地区画整理事業」のため移転をした店なども加わり、徐々に店舗が増えました。平成26年の4月には「奄美FMディ!」がプロデュースした立ち飲み処「奄美時代屋 たっとかんばぁ(立ち飲みで缶詰がたくさんあるバー)」もオープンし、にぎわいを増しています。同店も駄菓子屋と同じく昭和レトロ風情ただよう店内で、黒糖焼酎をはじめとするアルコール類や通常のフードメニューに加え、酒のつまみとして置かれている缶詰がずらりと並んでおり、目を引きます。夕方には仕事帰りに一杯という人の姿も目立っていました。

 末広市場に隣接する永田橋市場は、近年惣菜店や精肉店など3店舗のみとなっていましたが、平成25年12月に群馬県からのIターン者が珈琲店を出店したことを皮切りに、出店者が相次ぎ、平成26年の夏には空き店舗がなくなりました。

 新規の出店者は若者中心ですが、定年後、自身の店を持ちたいと夢を抱き出店を決意したという方もいます。出身地は地元出身の方が多いようですが、旅行で訪れた奄美の土地が気に入り出店を決意した他県からのIターン者もおり、永田橋市場の出店者増加のきっかけとなった群馬県からのIターンの方も「奄美を旅行で2度ほど訪れ、奄美の自然とこの市場が気に入り、島に移り住むことを決意した。」ということでした。


永田市場


3. にぎわいの理由

「奄美FMディ!」スタジオ

 永田橋市場に出店した人達は皆、賃料の安さに魅かれたと言います。1ブース(約5㎡)約1万円/月であるため、自分の店を持つという夢が実現したなどの声も聞きました。また、奄美市は平成26年の4月から店舗家賃補助制度と店舗リフォーム支援制度による支援を行い、区画整理事業区域内への新規出店者に対して店舗賃料の2/3(上限15万円/月、最長24カ月)とリフォームにかかる費用の2/3(上限80万円)を補助しており、区画整理事業区域内にある市場への新規出店は、その制度を活用することにより出店時に要するイニシャルコストと当分のランニングコストを軽減させることができます。

 市場は出店者増加に伴い、利用者も徐々に増え始めています。その理由のひとつとして、魅力ある店舗が増えたことに加え、平成24年に同市場の向かいにオープンした観光交流拠点施設「奄美市AiAiひろば(以下「AiAiひろば」)」の存在が挙げられます。AiAiひろばは、奄美の観光情報発信拠点であると同時に会議室や休憩所などもあり、市民も多く活用しています。前述したようにスーパーマーケットが撤退してから市場から客足が遠のいていましたが、その跡地にAiAiひろばがオープンすることにより、回遊性が生まれ、客足が再び市場まで伸びるようになりました。

 加えて、観光客の増加も一因として挙げられます。近年奄美の名瀬港には外国船籍の大型客船が多く寄港するようになり、国内外問わず、奄美を訪れる人たちが増えています。また、平成26年7月1日からはLCC(格安航空会社)Vanilla Air(バニラエア)の成田・奄美線が新規就航となり、空の便でも観光客が増加傾向にあります。加えて、奄美群島を含む琉球諸島は世界自然遺産登録に向けた動きもあり、今後ますます注目されることが予想され、観光地としてさらに脚光を浴び、観光客が増えることが期待されます。

 市場を訪れた観光客からは、奄美に来るたびに奄美らしさ、また昔の姿が今もなお残る市場にいつも訪れるという声を聞きました。地元の人たちも昼食をとったり、コーヒーを飲んだりしながら店の人たちと会話する姿が見られ、「市民の台所」という要素に加え、地元市民には憩いの場、人との触れ合いの場としての機能も付加され、観光客には観光施設には無い本来の奄美らしさが覗える穴場スポットとして、市場は少しずつにぎわいを取り戻しつつあります。



4. 課題と今後の取り組み(構想)

 市場を訪れる人は少しずつ増えてはいますが、市場に出店した各店舗にとり、十分な収益を得るのは未だ難しい状況です。今後とも、少子高齢化による人口減少や消費者の郊外大型店舗への流出やネット通販利用者が増加することが予想される中、集客アップが課題のひとつと言えます。今までもIターン者などの出店者がいましたが、多くの者がすぐに撤退したそうです。現在空き店舗が無くなるまでになった市場ですが、今後継続性を高めるための策が必要です。

 そのため、市場関係者からは、全体でのイベント開催、組合組織を作る、SNSを活用した情報発信やコミュニティづくり、講座を行うなど、さまざまな意見が出ています。市場を活気づかせたいという気持ちは皆、ひとつのようです。



5. 出店者の声

 「奄美を旅行で2度ほど訪れ、奄美の自然とこの市場が気に入り、島に移り住むことを決意した。」という群馬からのIターン者の方は、珈琲店「こん日和(こんにちは)」を営んでいます。センスあふれる店舗の看板やメニュー表などすべてを自身で手作りすることにより、店舗の魅力や個性を出すのと同時にイニシャルコストの削減に努めたそうです。今後、海の見える場所に2号店も出したいと、さらなる意欲を持っています。

 以前奄美の中心街に店舗経営していたことがあり、「退職後、もう一度自分の店を持ちたい。」と市場への出店を決意した食事処「光(てる)定食」を経営する地元出身者の方は「この市場のおかげで夢を実現できた。」と言います。

 商業施設の活性化を考えるうえで、消費者ニーズを把握することはもちろんですが、事業者が出店場所に魅力を感じ、店舗を構えなければ、当然空き店舗の問題を解消することはできず、消費者を惹き付けることもできません。

 賃料が安いこともあり、出店を思い切ることができるのと同時に利益にとらわれず、自分の理想を追い求めること、地元の人と気軽に触れ合える奄美らしさや昔の市場の面影を残すことに魅力を感じているようです。出店者は皆、市場への思い入れが強く、また、自身の理想を追い求める姿勢が消費者にも伝わり、市場全体の魅力が増しています。


光(てる)定食

6.奄美市の概要

位置・交通アクセス

 奄美市は九州と沖縄の間に位置する奄美大島にあり、鹿児島県の県庁所在地である鹿児島市から約380kmの距離に位置します。移動は鹿児島市から飛行機で約50分、船で約11時間の時間を要し、中心市街地は奄美大島空港からバスで約1時間の場所にあります。



特産品・地域資源

 特産品としては、1300年以上の歴史を持つ奄美大島紬や奄美の特産物であるさとうきびを原料とした黒糖焼酎が挙げられます。

 また、マングローブの森やサンゴ礁の生息する美しい海に恵まれ、特別天然記念物であるアマミノクロウサギなどの奄美特有の野生動物が生息する原生林を有するなど、豊かな自然に恵まれた奄美大島はその自然環境を生かし、観光業にも力を入れています。



<取材日 平成26年10月>

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