歴史的建築物を活用した集客交流施設づくり

■ポイント

  • 歴史的建築物を再生する際の検討ポイント
  場所: 佐賀県唐津市
  人口: 13万人
  分類: 【空き店舗・空きビル】【商業施設】
 協議会: あり
実施主体: いきいき唐津株式会社

1.「歴史的建築物」の活用に取組んだ唐津市

旧村上歯科医院

 平成22年8月25日、唐津市中町にある歴史的建築物(旧村上歯科医院兼住宅)の相続人が市役所を訪れ、土地・建物の寄付を申し出ました。この歴史的建築物(土地:300㎡、建築物:木造2階建て、延床面積約200㎡、昭和8年建築の洋風建物)は、平成12年以降空き家となり、傷みも激しくなってきたことから、何とか建物を残してまちづくりに活用していただければと、唐津市への寄付を決めたものでした。

 寄付を受けた唐津市は、中心市街地の賑わいづくりの拠点として活用する方針を立て、関係者との協議を開始しました。その結果、この歴史的建築物のある中町通りは、大正から昭和初期の建物が集積しており、レトロな街並みの景観整備中だったことから、外観を活かした集客交流施設として活用する方向で事業化を目指すことにしました。



2.まちづくり会社が歴史的建築物を活用した集客交流施設づくりを開始

建物正面フアザードのイメージ図

 その頃、唐津市では、平成22年3月23日に基本計画の内閣総理大臣の認定を受け、同年3月26日に、まちづくり会社(いきいき唐津㈱:以下「いきいき唐津」)を設立し、5月14日には中心市街地活性化協議会(以下「協議会」)が設立され、中心市街地活性化に向けた活動を始めたところでした。

 唐津市から歴史的建築物の活用について企画立案の依頼を受けた「いきいき唐津」は、活用企画検討会を重ね、「旧村上歯科建物コンバージョン企画(案)」をつくり、唐津市と協議の結果、「町家BOOKCAFE(ブック・カフェ)構想」として、事業計画案をとりまとめました。

 協議会は、この「町家BOOKCAFE構想」の実現に向け、中小機構の中心市街地活性化診断・サポート事業(以下「診断・サポート事業」:平成22年度下期)を活用して取組むことにしました。そこでは、課題を5項目に絞り込み、事業の実現可能性を検討しました。その課題の5項目と検討内容は次のとおりです。

(1)集客交流施設の構築

  昭和初期の木造建物であり、強度・耐震性のある建築物であるのか、また、コンバージョン(既存建築物の用途変更による再利用)に伴い、建築基準法など関連法令に適合できるのかについて検討しました。検討に当たっては、専門家による建物の現況調査を踏まえた耐震構造建築診断、改修規模の判断からの対応策、及び関連法令(建築基準法、消防法、食品衛生法等)の適用を踏まえ、建築物の利活用が可能かどうかの判断材料をまとめ、これらを解りやすく図面や表などに整理しました。

(2)施設機能のあり方

 施設コンセプト、利用者の想定、及び施設内容など当初設定した仮説に対して、調査を実施することで検証しました。

 市民・来街者(観光客)ニーズ調査結果の分析により、施設全体の構成・配置計画、飲食・サービスの全体構成について、方向性と考え方を簡単な図表やイメージ図などにとりまとめました。

(3)投資採算計画

  建物現況調査による概略平面図等から想定される規模と施設構成の概算総事業費を算定しました。そして、建物所有者(市)と賃貸借者(いきいき唐津)との工事区分、公的支援策の選定などの基本的な考え方を考慮し、収支採算計画案と概略の各種平面図・断面図・パース図、試算表などを整理しました。

(4)管理運営体制のあり方

 いきいき唐津による本施設の管理運営方法について検討しました。具体的には、いきいき唐津の直営部分と外部飲食業者への再委託部分の仕分け方法を検討し、集客交流機能を最大限活用することが可能な賃貸借契約案の検討も行いました。

(5)商店街との連携ソフト事業

 寄付の目的や公的な施設としての役割を担うことから、集客効果を商店街に波及させる仕組みが必要不可欠です。このため、商店街へ個別ヒアリングを行い、現在実施している商店街ソフト事業の実態を把握し、これのSWOT分析を行い、一番ハードルが低いソフト事業への仕掛けづくりから始めることとしました。

 以上5項目を整理して、次年度に策定された「実施設計」の判断材料に活かされました。  なお、引き続き平成23年度下期の診断・サポート事業においても、実施設計のブラッシュアップを図り、また、事業主体となるいきいき唐津における、施設の運営管理や地元商店街との連携等についての検討も行っています。ハードなスケジュールでしたが、診断・サポート事業における検討結果は逐次実施設計に組込まれ、最終的には平成24年度の戦略的中心市街地商業活性化支援事業の採択を受け事業実施するに至りました。

市民交流の場 カフェ・ギャラリー 中町Casa(カサ)オープン

  唐津市中町商店街の一角に位置する昭和初期の洋風建築物は大規模改修を終え、住居だった1階は、カフェ&ダイニング「hanaはな家」(営業時間・午前10時~午後11時)として平成25年4月18日に先行オープンしました。

 玄関は洋風のカフェですが、中に入ると中庭を臨む和室があり、昼はランチ、夜は居酒屋として唐津の食材を使った料理や地酒が楽しめます。

 hanaはな家のオーナー脇山美智子さんは、「10年前から素敵だと思っていた物件で店を開業できうれしい。まち歩きをした女性たちがくつろげるような場所にしたい。」と話しています。  平成25年4月27日、医院として使われていた2階が「中町Casa(傘、カサ)」の名称でオープンしました。

 この施設を運営するいきいき唐津は、イベントスペースとして開放し、唐津のまちなか回遊の拠点の一つとして育てていく考えです。

 中町Casaは、高さと明るさをそのまま生かす改装で、「スタジオ傘」の名称でギャラリーや会議など多目的レンタルスペースとして活用されています。

 ちなみに、「Casa」の名称は、旧村上歯科が昭和8年に建てられ今年が築80年となるため、「傘寿(さんじゅ)」にちなんでつけました


1階カフェ&レストランのイメージ図


まちの概要

位置・人口

 唐津市は、佐賀県の北西部に位置し、玄界灘を臨み、古くは大陸との窓口でした。人口は約13万人で、佐賀県内の市町村で2番目に人口が多い都市です。

交通アクセス

電車では、福岡・博多より約80分、高速バス、車では高速道路を利用すれば60分弱、佐賀より約70分でアクセスできる都市です。

まちの特色

 江戸時代初期に潅漑政策として松浦川の大規模河川改修と虹の松原(国の特別名勝)がつくられ、現在の唐津湾の風光明美な景観が生まれました。また、町人文化が盛んで200年以上にわたって唐津神社の秋季例大祭の「唐津くんち」(国の無形文化財)や唐津焼などの伝統文化・産業があります。市内には多くの歴史的な建造物が残されており、ツアーが企画されたり、観光ガイドの養成講座が開かれたりしています。



<取材日H25年11月>

閉じる