地権者を商業活性化に巻き込む「ランドオーナー会議」
―静岡市呉服町名店街の先駆的取組み―

■ポイント

  • 空き店舗の解消、テナントミックスの推進等商業の活性化を図る上で、地権者の理解・協力を得られるかが大きなポイント。それを解決する方策として「ランドオーナー会議」を全国に先駆けてスタート。
  •  
  • 「ランドオーナー会議」は、商店街の現状や取組み方針について、研修や意見交換を行い、地権者の商店街活動への理解・協力を促す効果を上げています。
  • これからの「ランドオーナー会議」は、地権者とのコミュニケーションを図るための場から、商業活性化の中核的役割を担うことが期待されています。


場所: 静岡県静岡市(静岡地区)
人口: 72.5万人
分類: 【その他】(地権者対策)
協議会: あり
実施主体: 呉服町名店街
支援策: --
参考URL: http://www.gofukucho.or.jp/



静岡中央商店街周辺位置・状況図


1.まちの概要

  • 規模・人口
     平成15年4月に旧静岡市、旧清水市が合併して誕生した新静岡市は、静岡県の県庁所在地として政治、経済、文化、教育などの中枢機能が集積する人口約72万5千人(平成23年3月末現在)の政令指定都市です。

  • 交通アクセスなど
     静岡市は、東京駅、名古屋駅まで東海道新幹線で約1時間、大阪駅へも約2時間と、3大都市圏への交通アクセスに優れた立地にあります。
  • まちの現状
     静岡市の中心市街地は、徳川家康が築いた駿府城を中心に発展してきました。交通の結節点であるJR静岡駅と静岡鉄道新静岡駅を両核に、公園、官公庁、病院などの公共施設や、複数の商店街・百貨店等の商業集積が面的に広がっています。とくに、呉服町名店街を含む中央商店街は、近年相対的な地位がやや低下しつつあるものの、依然として静岡県内有数の規模と賑わいを維持しています。
  • 呉服町名店街の現状
     呉服町名店街は、静岡駅から徒歩10分の距離にある中心市街地の中核商店街。全国的に有名になった一店逸品運動などの先進的な取組みをはじめ、今日まで活発な商店街活動を展開しています。

2.まちの課題と活性化の取り組み

(1)まちの課題

進む新静岡センター建替え事業

 中心市街地の小売業年間販売額は、平成9年から16年にかけて41.2%減少し、金額にして1104億円減と大幅な落ち込みとなっています。市(旧静岡市)全体の減少率(▲19.4%)よりも、中心市街地の減少率が大きく、市全体に占める中心市街地の販売額シェアも10 ポイント低下しています。また、休日の歩行者通行量も、平成19年には、28,232人で、平成10に比べ、11.0%減となっています。

 これは、平成10年代の郊外型大型店の大量出店により、とくに30歳台~40歳台を中心に、郊外での消費が増大し、中心市街地離れが起きているためと考えられます。

(2)活性化の取組み

呉服町第一地区市街地再開発事業地区

 こうした中心市街地離れに対し、静岡市では平成19年12月に中心市街地活性化協議会を設立し、中心市街地の活性化を図るために、市が中心となり、中心市街地活性化基本計画を策定し、平成21年3月に国の認定を受けました。“「人」が集まる魅力賑わいのまち、「人」が憩い寛ぎのまち”を目指して、新静岡センター建替え事業、静岡駅前紺屋町地区市街地再開発事業などに取組んでいます。

 呉服町名店街においては、呉服町第一地区並びに第二地区の2つの市街地再開発事業が進められているとともに、郊外型大型店と差別化を図るために、まちなかをひとつのショッピングセンターとみなし、まちなかへの魅力ある店舗のリーシング事業に取組んでいます。


(3)具体的な方法 【「ランドオーナー会議」の取組み内容】

「ランドオーナー会議」の模様

 近年、全国の商店街は、空き店舗の発生に悩み、街区の魅力ある業種構成に苦慮しています。こうした問題に対処するには、商店街区の地権者の理解・協力が不可欠になります。しかし現状では、地権者の協力をなかなか得にくく、多くの商店街が有効な方策を打ち出せないでいます。こうした中、呉服町名店街では、商店街のリーダー層の先見性と熱意により、地権者を商業の活性化に巻き込むための場として「ランドオーナー会議」を設けました。

 「ランドオーナー会議」とは、呉服町地区の土地建物所有者による集まりで、地権者に商店街活動を理解してもらうために、平成15年に全国に先駆けてスタートしました。

 現在「ランドオーナー会議」は、呉服町名店街の店舗経営者及び店舗所有者約90名で構成され、概ね年間5回の勉強会や先進商店街視察を行い、これらの活動を通して、呉服町名店街の置かれている現状と課題について、商業者と地権者が共通認識を持つように取組んでいます。

具体的には、
・「将来の呉服町を考える」「人の集まるまちづくりを考える」などのテーマを決めて、外部講師を招聘し、勉強会を開催。
・高松市丸亀商店街などの先進地商店街を視察。
・「若い世代のまちづくりの考えを聞こう」などまちの課題をテーマにして、外部講師との意見交換やパネルディスカッションを開催。
・「再開発から考えよう」、「ランドオーナー会議の重要性」などをテーマに、まちづくりのための会議を開催。
などの取組みを行っています。


3.取り組みの効果

人通りの耐えない呉服町名店街

 「ランドオーナー会議」の開催により、地権者に以下のような動きが出始め、呉服町名店街の活動への理解が確実に進み、商業の活性化を一緒に推進していこうとする機運ができつつあります。

・地権者からテナントの入居選定にあたって、「こういう業種が出店を希望している。契約を考えているが、名店街としてはどうか」と事前相談が名店街側に入るようになってきた。

・地権者がテナントの出店条件として、呉服町名店街に加盟することを提示してもらえるようになってきている。

・とくにチェーン店のテナントとの出店交渉において、地権者から、出店後は呉服町名店街が策定したまちづくりルールである「まちづくり協定書」の遵守が必要なことを事前に提示してもらえるようになってきている。

4.今後の課題と対応

 「ランドオーナー会議」参加率は現在概ね50%。「ランドオーナー会議」の重要性や商店街活動への関心を高めるうえでも、参加率の向上を図っていく必要があります。

 そのために呉服町名店街事務局から必ずランドオーナー全員に事業にかかわる情報提供を欠かさず行い、地権者と商店街との連携維持に努めています。

 現在の「ランドオーナー会議」は、地権者とコミュニケーションをとり、商店街の活性化に向けた共通認識の醸成を図っている段階をいえます。

 今後はテナントリーシングや商店街の今後のあり方について、地権者の立場から呉服町名店街の発展に一層寄与してもらうことが期待されています。

 とくに昨年度、呉服町名店街がまとめた「まちづくり基本構想2010」において、「ランドオーナー会議」に期待される役割として、商業活性化のための中核的組織として、研修活動や望ましいテナント誘致システムの実施にかかわることが求められています(下図 参照)。

【呉服町における今後のテナントコントロールの仕組み】 

呉服町における今後のテナントコントロールの仕組み

5.関係者の声・まちの声

川辺理事長と綱島事務局長

 今回取材に応じていただいた川辺呉服町名店街理事長は、地権者との連携の重要性を強く説かれ、これまで「ランドオーナー会議」を牽引されてきました。「私たち商業者がこの商店街をこれからどうしたいのか、将来図をしっかり明示すれば、呉服町の繁栄を願う想いは地権者も同じ、必ず関心をもってもらえます。今回とりまとめた「まちづくり基本構想2010」がまさに将来図。これをベースにして地権者の方々と手を携え、“ひと 皆 輝く ライフアベニュー呉服町”を目指していきたい」と地権者との連携強化を視野に、次のステージを見据え、呉服町のビジョンを力強く語られました。



取材を終えて

取材の最後に、川辺理事長は、「地権者の理解協力を得ていくには、日頃から、「ランドオーナー会議」を開催し、情報交換していることが何より大事です。競合する大型店の出店表明があってから、急に地権者に協力を求めても理解を得ることは困難ですから。」と地権者への日々の働きかけの大切さを唱えられました。

商業の活性化を進めていく上で、地権者の協力が不可欠なことはわかっていても、地権者の参画を促すことはなかなか難しく、多くの協議会でその対応に苦慮しています。川辺理事長が最後に語られたこのメッセージに、地権者巻込みのヒントがあるように思われました。

<取材日H23年4月>

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