タウンマネージャーの役割とその取組

米子市中心市街地活性化協議会 杉谷第士郎タウンマネージャー

 今回は、中心市街地活性化協議会のキーパーソンであり、まちづくり事業の推進役でもあるタウンマネージャーの役割とその取組について、米子市中心市街地活性化協議会のタウンマネージャーとして、多くの事業を立ち上げ、中心市街地活性化に道を開いてきた杉谷第士郎氏にインタビューをしました。


杉谷氏

杉谷氏プロフィール

米子市出身。大学卒業後、大手流通企業において経営企画、国際事業開発などの業務に携わった後、平成16年より、米子コンベンションセンター館長に就任。その間米子まちおこしフォーラム実行委員会、田園プロジェクト等に参画し、中心市街地活性化の活動方針策定にかかわる。平成19年に、米子市中心市街地活性化協議会のタウンタウンマネジャーに就き、米子市中心市街地活性化協議会の設立、中心市街地活性化基本計画の策定及び実施に携わる。

米子市マップ

米子市の概要

人口: 15万人(平成23年12月現在)
面積 : 132ku
 米子市は、鳥取県の西部、山陰地方のほぼ中央に位置し、明治大正期の海運業の隆盛とともに、経済産業の重要拠点として発展し「商都米子」の地位を確立。現在でも、鉄道、山陰自動車道、米子空港を擁する「山陰の玄関口」となっている。

1.米子市における中心市街地活性化の取組

■まず、米子市の取組の概要について教えてください。

 米子市では「人が集まり、歩いて楽しめ、元気に暮らせる中心市街地」を目標に、平成20年11月に、国から中心市街地活性化基本計画(65活性化事業)の認定を受けました。 その後スピード感を持ってひとつひとつの事業を連鎖させていくことを念頭におきながら、中心市街地の活性化に取組んでいます。
これまでの主な事業は、

  • 大型空きビルを再活用する事業(四日市町大型店舗再活用事業)→「米子市中活事業マップ」D
  • 商店街の再生を図る事業(法勝寺町商業環境整備事業)→「米子市中活事業マップ」AEG
  • 地域の情報拠点施設を運営する事業(地域情報拠点施設運営事業)→「米子市中活事業マップ」F
  • 高齢者専用賃貸住宅の整備事業(やらいや米子平成ルネッサンス事業)→「米子市中活事業マップ」B
  • まちなか地域交流センターの再生事業(笑い庵進化再生事業)→「米子市中活事業マップ」H

  • です。
米子市中活事業マップ

 参考 米子市中心市街地活性化協議会のまちづくり情報発信サイト「よなごかえる通信」       http://www.yonago-kaeru.jp/

2.タウンマネージャーの取組

タウンマネージャーの役割について、杉谷タウンマネージャーが取り組んだ次の2つの事業を通してお話をうかがいました。


(1)大型空きビルを再活用する事業(四日市町大型店舗再活用事業)におけるタウンマネージャーの取組について
■どのような事業でしょうか。

 衰退著しい商店街にある大型書店移転後の空きビルを、ブティックや輸入雑貨、ヘアメイクなどの店を一堂に集めた、若者対象の複合商業施設として再整備を図った事業です。

■タウンマネージャーとして取組まれたことは何でしょうか。

複合商業施設SKYビル

 米子市中心市街地活性化基本計画事業を連鎖的に展開していくためには、その起点となるリーディング事業が必要と考えていました。米子市中心市街地活性化基本計画事業全体を見渡したとき、まちなかのにぎわい創出を図る上で、「にぎわいトライアングルゾーン」の中心に位置し、周辺への波及効果が期待できるこの事業をリーディング事業として取組みました。

 またこの事業を軌道に乗せるために、別の場所で事業を行っていた若手経営者3名に呼びかけて、共同出資会社を設立させ、今回の事業への参画を促しました。

■今回の事業成果とその成果に結びつけるためのタウンマネージャーの具体的な役割は何でしょうか。

●事業成果について
 魅力的な店舗の入店や親水空間を活かした設えにより、大型空きビルの再生を果たすことができ、「にぎわいトライアングルゾーン」活性化の拠点づくりに成功しました。

 さらに、期待していたとおり、今回の事業に刺激を受けた若手経営者たちが、同ビルの周辺の空き店舗に出店し始め、若い顧客を引き寄せる新たな商業集積の形成が図られつつあることも大きな成果です。

 また今回の事業をキッカケに、経営意欲と才能のある若手経営者を発掘することができ、次世代のまちづくりの人材育成にもつなげることができました。

 現在、彼らは同ビル周辺のイベント企画などで、すばらしいアイデアを提供してくれ、新たなまちづくりの担い手として活動を広げてくれています。

●事業成果に結びつけるためのタウンマネージャーの具体的な役割について
  第一には、今回の事業と中心市街地活性化計画全体との関連を十分に理解し、今回の事業成果が計画全体の中で、他の事業にどのように連鎖していくかを考えた上で、リーディング事業として戦略的に取組んだことです。

 次に、まちづくりはヒトづくりといわれるように、ヒトの存在はまちづくりにおける大きな要素です。とくに若い人材の育成は極めて大切です。その意味で、先々を見据え、今回の事業で、次世代の担い手となる優秀な若手経営者を探し出し、巻き込みに積極的に取組んだことがタウンマネージャーの役割として大きかったと思います。

(2)商店街の再生を図る事業(法勝寺町商業環境整備事業)におけるタウンマネージャーの取組について
■どのような事業でしょうか。

 有志の商店主によるまちづくり会社を設立させ、蔵のあるまちなみ等の地域資源を活かし、ギャラリーショップ、飲食店等の入った商業施設を整備するとともに、老朽化したアーケードを撤去し、空き店舗率が50%を超える商店街を「歩いて懐かしいまち」をコンセプトに、公園としても楽しめる商店街へ転換を図った事業です。

■タウンマネージャーとして取組まれたことは何でしょうか。

 長期間停滞していた商店街を再生するには、活性化への糸口となる事業が必要と考え、商店街にある地域資源を活用し、再生拠点の整備に取組みました。 商業施設整備にあたっては、運営主体を立ち上げる必要があることから、地元有志の商店主に再生プランを説明し、彼らに商業施設の運営主体となる資本金100万円のまちづくり会社の設立を働きかけました。

■今回の事業成果とその成果に結びつけるためのタウンマネージャーの具体的な役割は何でしょうか。
商業施設「善五郎蔵」

 ●事業成果について
  地元商店主の出資により、商業施設の運営主体となるまちづくり会社を設立でき、商店街再生の糸口となる拠点施設(「善五郎蔵」)をオープンできたこと、さらに今回のアーケード撤去とこれに影響をうける周辺商店街の今後の方向性について各商店街のコンセンサス形成に努めたことがあげられます。

 ●事業成果に結びつけるためのタウンマネージャーの具体的な役割について


アーケード撤去後の商店街

  出資を含め事業リスクを負ってくれた商店主に対し、今回の事業の重要性、確実性を丁寧に説明し、納得してもらえる提案ができたことがポイントです。

 具体的には、その運営リスクが少しでもヘッジできる事業計画の作成に取組みました。活用できる補助金制度を調べ上げイニシャルコストの低減を図るとともに、これまでに蓄積してきた人的ネットワークを駆使して優良テナントのリーシングに努めました。

 そして、まちづくり会社の設立手続や資金調達等、事業推進上の様々な業務をタウンマネージャーが担い、商店主の手が回らない事業部分をしっかりサポートし、中心市街地活性化事業の取組スピードを上げていくのも必要な役割です。

 また今回のアーケード撤去の商店街だけでなく、影響をうける周辺6商店街の商業再生の方向性を、関係商店街にも理解してもらうよう、早い段階から合意形成を図る等、常に先を見て計画・行動することが大切です。

■ここまでタウンマネージャーの役割について具体的な取組を通してうかがってきましたが、タウンマネージャーに求められる特に大切な役割とは何でしょうか。

 タウンマネージャーはまちをマネジメントするためにその役割があると考えています。

 まちのマネジメントとは、個別事業の運営に携わることだけでなく、まちを経営することであると思っています。まちづくりの方針決定に携わっていくことがタウンマネージャーの役割と考えているからです。

 まちづくり全体のマネジメントを行う上で、刻々と変わる外部環境の変化を捉え、先見性をもってまちづくりの方向性を考え、まちの特性やポテンシャルをどう活かしていくのが最適かを戦略的に指し示すことが大切な役割といえます。

一方、タウンマネージャーとして、個別事業のマネジメントを行うにあたっては、

  • 同時多発的に動いている個々の事業の関連性を把握し、中心市街地活性化基本計画全体の中での位置づけを理解し、個別事業の成果を計画全体の成果に結びつける役割
  • 事業目的を達成するために、利害関係者や無関心の者を一つの方向に合意形成を図るようコーディネートする役割
  • いつでも活用できる幅広い人的ネットワークを構築し、そのネットワークのハブとなる役割

これらを果たしていくことが重要だと考えています。

3.取材を終えて

 最後に、まちづくりに取組むにあたって、タウンマネージャーとして日々心がけていることをたずねたところ、

 杉谷タウンマネージャーは「これまで米子市のまちづくりに携わった全ての人々が幸せになってほしいと願いつつ、タウンマネージャーの職務に取組んでいます。」と、米子のまちや人々への想いを力強く語られました。

 今回の取材を通し、こうしたまちへの愛情とまちづくりに対する情熱をもっているタウンマネージャーの方々によって、まちづくりは支えられていることをあらためて実感しました。

取材日:平成23年10月

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