第23回近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会(兵庫県豊岡市)

日時 平成28年2月3日(木)13:20〜16:40
開催地 兵庫県豊岡市/豊岡劇場
主催 中心市街地活性化ネットワーク研究会、中小企業基盤整備機構近畿本部、
中心市街地活性化協議会支援センター
テーマ 「更新するまちなか 中心市街地リノベーションの最前線(現地視察)」
交流会次第 13:10        現地視察  豊岡市街地現地視察
                    案内 豊岡劇場 伊木 翔 氏
                       兵庫県立大学地域資源マネジメント研究科准教授 山崎 義人 氏

14:30〜15:30   開会挨拶  中心市街地活性化ネットワーク研究会会長 尾崎 弘和
           講演1    「豊岡市のまちづくりについて」
                      豊岡市エコバレー推進課

15:40〜16:40   講演2     「豊岡劇場の取組について」
                      豊岡劇場 代表・支配人     石橋 秀彦 氏
                             プロジェクトリーダー 伊木 翔 氏

16:40         終了
参加者数 25名
協議会数 9協議会(他関係機関6先)

交流会概要

 第23回近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会は、11月開催の第22回研究会と同じテーマの現地講義編として、「更新するまちなか 中心市街地リノベーションの最前線(現地視察)」と題して、豊岡市の現地視察と講演を行いました。豊岡劇場(通称「豊劇」)での研究会の前に、前回、豊岡市のリノベーション事例を発表いただいた兵庫県立大学地域資源マネジメント研究科准教授 山崎氏の案内で、歴史的建造物を活かしたまちを見学しました。

(1)現地視察

駅前の観光地図に追記

 豊岡市で「震災」と言えば、1925年(大正14年)に発生し、豊岡市に壊滅的な被害をもたらした「北但大震災」を指します。震災後、地震・火事に強い町を目指して、道路幅拡大や耐火建築の促進に取組みました。復興の象徴として建てられた市庁舎は、平成25年の新庁舎完成後も取り壊されることなく、25m道路側に移転し豊岡市立交流センター「豊岡稽古堂」として使われています。
  市庁舎向い側に建てられた震災復興建築「兵庫縣農工銀行豊岡支店」も、国登録有形文化財として保存され、現在は「オーベルジュ豊岡1925」として、結婚式や宿泊施設を備えたレストランとして使われています。
  豊岡市の駅前通りは、火災の類焼を防ぐため、通りの間隔を広く取り、建物表面を銅版やモルタルで仕上げた耐火構造が特徴的です。昭和初期に建てられたモダンな建物や昔ながらの木造アーケードのふれあい公設市場などの街並みについて、山崎准教授と伊木氏から豊岡の歴史と建造物の説明を聞きながら、カバンストリートを経て豊劇までの道を歩きました。

(左)豊岡市役所(後の建物)と「豊岡稽古堂(旧市庁舎)、(中央)豊岡ふれあい公設市場、(右)「オーベルジュ豊岡1925」内部

(2)講演1 「豊岡市のまちづくりについて」

 豊岡市は、「歩いて暮らす街づくり構想」「コウノトリとともに暮らす街づくり」など、健康とエコロジーに配慮したまちづくりをしています。豊岡市のまちづくりの取組みについて豊岡市エコバレー推進課より説明がありました。

  • バブル期に比べ出荷額が1/3に減少したかばん産業の衰退と公立豊岡病院の移転の影響が大きく、中心地の空洞化が進んだ。平成23年8月に、豊岡市中心市街地活性化基本計画(内閣府の認定計画ではなく、市独自の計画)を策定した。賑わいの拠点として、地場産業のかばんの拠点、お菓子の拠点、観光客の受け皿の拠点を整備した。
  • にぎわいづくりのイベントとして、カバンストリートの「カバストマルシェ」、「サンスト夏の夜市」、「菓子祭り前日祭」、「とよおかまちバル」を実施している。
  • 豊岡かばんは、元々OEM生産のビニール製品が中心で一般の認知度が低い。平成14年から兵庫県鞄工業組合を中心に企画力、デザイン開発力の強化を図り、展示会出展などに取り組み始めた。地域ブランドとして、コンセプトや製品基準のマニュフェストを定め、平成18年に「豊岡鞄」の地域団体商標が登録された。組合の厳しい審査を通った認定企業は当初の10社から26社に増え、現在では「豊岡鞄」は高品質の鞄ブランドと認知され、全国の百貨店で人気催事になっている。
  • 豊岡まちづくり会社が運営している「トヨオカ・カバン・アルチザン・アベニュー」では、かばんの販売だけでなく、毎月第4土曜に若手クリエイターのイベントを開催し、情報発信を行っている。併設の1年間の職人育成専門校では、デザインだけでなく、原価計算や運営についても学ぶことができ、全国から受講生が来校している。
  • 平成25年から、豊岡市縫製者育成組合が「豊岡市縫製者トレーニングセンター」を設立・運営し、縫製職人の育成をしている。平成27年までの7期で63人が学び、55人が豊岡で就職し、うち15人の市外出身者が市内で開業した。かばんのまち豊岡での鞄職人の育成は、人口減少に歯止めをかけ、若い世代の移住促進に効果がある。

カバンストリートの集合広告ボード、かばんクリーニング店、かばんの自販機とオブジェ

(3)講演2 「豊岡劇場の取組みについて」

 豊岡劇場は、閉館した映画館を改装し、映画館だけでなく地域住民の交流の場、地元のクリエイターの創造拠点として生まれ変わりました。民間事業者によるリノベーションの取組みについて、現在、運営を行っている有限会社石橋設計代表の石橋秀彦氏より紹介がありました。

 平成26年7月、石橋氏ら有志により「豊劇新生プロジェクト」を立ち上げ、5か月後の12月に再開館しました。

  • 地元の人を中心としたクラウドファンディングで資金を集め、国の補助金でデジタル映写機を導入した以外は、自己資金で取り組んだ。
  • 兵庫県立大学経営学部の西井進剛教授とゼミ生にビジネスモデルの構築を手伝ってもらい、集客や流通の勉強会を行った。
  • 地域コミュニティの活動の場として、下記の通り、再生プロジェクトの目的を明確にした。

豊岡劇場外観

豊劇が目指すもの
  • 周辺地域の文化の担い手を後押しする
  • 家や職場以外の第3の居場所づくり
  • クリエイター、作家の育成の機会をつくる
  • 地域外、海外との交流を促進する
  • この地域で暮らすことを楽しむ場所をつくる
1) リノベーション

小ホールで行われた研究会

 リノベーションは、元の建物・内装を活かし、椅子やテーブルも再利用をすることを基本としている。

  • 清潔感のあるトイレを作り、1Fにカフェ(夜間はバー)を新たに加えた。
  • 大ホール(220席)は、席を間引いて154席に減らしてテーブルを設置し、コンサートやトークショーができるよう、舞台を作った。
  • 小ホール(90席)は、クラウドファンディングで得た資金275万円を使い、固定椅子席の撤去や床・壁内装工事を行った。地域コミュニティスペースとして、集会場やパーティに使えるように改修した。スクリーンがあるのでプレゼンテーションや、デジタル映写機で映画鑑賞もできる多目的なホールとした。
2) 地域コミュニティ、イベント

 映画だけでなく、映画館を利用した新しい「場」や体験を提供するため、セミナーやトークショーを実施している。

  • カフェやバーがあるので、イベント時にはロビー周りに人が集まり自然に交流できる。
  • 若い人が希望し、小ホールでクラブイベントを開催したときは、230人が集まり夜中の3時まで盛り上がった。音楽やダンスは若者に必要だ。
  • 仮想通貨(トヨコイン)を発行して子どもたちに職業体験をさせるキッズバザールが人気で親子が多数来場した。
  • 食材を持ち寄り、開催したチャーハン・餃子大会は大いに盛り上がった。地元の酒店とコラボし、日本酒利き酒大会を開いている。
3) 地域外・海外との交流を促進

 積極的な情報発信を行い、豊岡市内の交流だけでなく、地域外や海外との交流を図っています。

  • 「みらいをなぞる写真家」として知られる畠山直哉氏の陸前高田での撮影に2年間密着したドキュメンタリー映画を製作し、全国へ配給した。
  • 塚本晋也監督の新作「野火」の上映会では、監督が挨拶と映画評論家とのトークを行った。
  • 紀里谷監督の後援会「紀里谷和明、夢を語る。〜誰が出来ないって決めつけたのか〜」は、地元の中高生が監督の講演会を開きたいと実行委員会を立ち上げ、SNSで監督に直接依頼して快諾いただいた。「ラストナイツ」試写会と講演会が実現した。
4) 支える人々
  • 石橋氏は北アイルランドの大学・大学院で芸術(ファインアート)を学び、ロンドンで作家活動後、帰国。平成20年、渋谷で北アイルランド映画祭を主催。現在、豊岡市で不動産管理会社を経営し、デザイン力を生かしたリノベーションを行う。豊劇では、運営を若手に任せ、映画の選択やクリエイターとのネットワーク形成を担当。
  • プロジェクトリーダーの伊木氏(27歳)は、平成23年に同級生と野外音楽イベント“TAJIMA WAVE”を開催し、その後、全国の音楽フェスにスタッフとして参加。平成24年より豊劇新生プロジェクトに携わり、現在プロジェクトリーダーとして、劇場運営・企画を担当。

講演後、参加者から質疑応答がありました。

質問
若手が活躍しているが、地元の若手をどのように見つけて一緒に活躍してもらえるのかわからない。
回答
(石橋氏):若手でも飲食店の運営の経験があったり、映画祭を実行したりしているので、若いとか経験がないからできないということはない。事業の企画・運営は伊木に任せている。
回答
(伊木氏):スタートから一緒にやろうと言われてやってきた。少しずつできることが増え、任せてもらえる部分が増えてきた。その分、石橋さんの仕事の範囲が広がっている。
質問
鞄職人の学校でも全国から修行する人が集まっている。外から来る若い人を育てるような風土があるのか。
回答
合併前の地元意識が強く、立地上も陸の孤島なので集まってくる人も多くはない。これまでは集まる場所もなかった。豊劇を何かしたい人が集まる場、活躍する場となればいい。

以上をもって、研究会は終了しました。

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