まちづくり会社訪問

株式会社まちづくり薩摩川内

薩摩川内市の位置
取り組みのポイント
  • まちづくり会社直営のコミュニティFM局
  • 20代の社員が活躍
1.会社概要
会社名: 株式会社まちづくり薩摩川内(http://www.satsuma-sendai.jp/
所在地: 鹿児島県薩摩川内市鳥追町15番3
設立日: 2008年4月
資本金: 1,130万円
主な出資者薩摩川内市、川内商工会議所、商店街振興組合・通り会、市内企業・個人
従業員: 26人(正社員12人、パート14人)

2.まちの概要
位置・人口

 薩摩川内市は、鹿児島県北西部に位置し、甑(こしき)島列島を含め市域としており、人口は約10万人です。2004年に1市4町4村が合併し薩摩川内市として誕生しました。

交通アクセス

 九州新幹線が2011年に開通し、博多駅からは75分、鹿児島中央駅へは12分、鹿児島空港とは連絡バスで70分です。

3.(株)まちづくり薩摩川内の取組
(1)設立

 2008年4月に、旧中活法時からのTMOを引き継ぎ、市(300万円)、商工会議所(160万円)、商店街振興組合・通り会(5組織から115万円)のほか、多くの企業・個人の出資により設立されました。  同年8月には中心市街地活性化協議会が設立されました。

(2)事業概要

 (株)まちづくり薩摩川内(以下「まちづくり薩摩川内」)の組織は4つの「部」に分かれており、このうち3つの部で次のとおり各事業が取組まれています。  常勤役員は、代表取締役(主として総務部、事業部担当)と常務取締役(主として企画部、コミュニティ放送事業部担当)の2名です。



         (株)まちづくり薩摩川内の4部と業務分担

 
(1)総務部総務関係業務*正社員数
(以下同じ)
1名
(2)事業部物産館「きやんせふるさと館」の運営
市営駐車場(2カ所)の運営
肥薩オレンジ鉄道川内駅の管理
2名
(3)企画部市街地無料休憩所「まちあいサロン」の運営
市の情報発信委託業務
テナントミックス事業、空き店舗家賃補助金取扱業務
イベントの企画運営(まちコン〈よるせん〉等の実施)
2名
(4)コミュニティ放送事業部 コミュニティ放送局「FMさつませんだい」の運営7名

(株)まちづくり薩摩川内


 まちづくり薩摩川内が設立された当時は、「総務部」、「事業部」、「企画部」の3部でした。「事業部」はTMOからの引継事業、「企画部」は新規事業開発を担当していました。

 設立時、まちづくり薩摩川内の経営は、TMOからの引継事業で基本的には安定していましたが、中心市街地活性化によるまちづくりのためには、一層の収益事業への取組が関係者から強く望まれ、期待されていました。

「よるせん」のポスター


 そのため、次の2つの基本方針の下、新規事業開発が進められました。
   1.地元の会社の競争相手にならないこと。
   2.地元の会社を後押しできる取組であること。

 企画部では、情報通信、飲食、物販といった事業ではなく、イベントの企画実施や特産品開発等に取組んでいくことになりました。

 なかでも反響の大きかった取組は県内初の「よるせん(まちコン)」で、現在も継続開催されています。

4.「FMさつませんだい」の開局

 まちづくり薩摩川内では、「よるせん」の成功を踏まえ、次の事業開発を目指しました。それがコミュニティ放送になるのですが、「放送」という専門性の高い事業を、人口10万人のまちに立ち上げることは簡単なことではありません。しかし、これが可能となった理由として、当初から取組んできた現「局長」であり、まちづくり薩摩川内の「常務取締役」でもある、上栫(うわがき)祐典氏の紹介をはずすことができません。

 上栫氏は、1979年、薩摩川内市生まれで、東京の広告代理店(関西支社勤務)から、2005年26歳の時にUターンしました。それは、大学時代からの思いだった「起業」を実現するためでした。

 早速、広告制作やイベント運営の会社を設立し活躍しますが、イベント関係で商店街と接点ができ、それを起点にいろいろな会議に出席するようになりました。

 コミュニティ放送については、小さい頃からラジオが好きで、Uターン後、インターネット回線を使ったラジオ放送をしていたことがあり、コミュニティ放送では番組も経営も群を抜いている、山口県宇部市の「FMきらら」の代表者に面会するため出向いたこともあります。その際、面会中いきなり生放送のインタビュー番組に出演させられるという急展開となり、コミュニティ放送の「フットワークの良さ」とリスナーとの「近さ」、「面白さ」、「楽しさ」を実感しました。

 しかし、当時はまだ26歳、会社を立ち上げたばかりで資金も人脈もなく、行動には移せませんでした。

 そして、2008年、まちづくり薩摩川内の発足にあわせて「企画部」職員として、まちづくりに本格的に取組むことになります。

 その後、2011年に温めていたコミュニティ放送の計画を公表します。これまで6年間の思いを込め、商店街や地域の活性化を推進するうえでコミュニティ放送のツールとしての有効性を関係各方面へ熱心に説明しました。その甲斐あり、2012年から急ピッチで具体化の動きとなり、2013年3月2日に放送開始となりました。

 このような計画が短期間で具体化した背景として、1995年の阪神・淡路大震災後、商工会議所が中心になり、コミュニティFMの開設を検討していたことがあり、この影響もあったようです。

5.「FMさつませんだい」の特長
 マスコットキャラクターの「あおまる」
(1)すべて自局制作の生放送

 7人の社員と、局長、フリースタッフの合計10名という人数で、放送時間帯の朝7時から21時まで365日、すべて自局制作の生で放送しています。

 多くのコミュミニティ放送局では、録音された番組を、コンピュータが時間管理し自動送信する割合が高くなっています。

 放送にはパーソナリティーと音声調整の2人が必要です。これを7人がローテーションを組み、取材や営業も含めすべてこなしています。

 7人は全員薩摩川内市在住で、番組内容は市民と同じ目線で、地元の情報をキメ細かく放送しています。



パーソナリティーの方々 

 開局後間もなくの頃、地元の中学校の生徒会がスポンサーとなり、卒業式に合わせ、卒業生に向けたメッセージを生放送するという番組を放送したこともあります。

(2) お店と市民がつながる仕組みと番組

 7月1日から「あおまるclub」というリスナーの会員組織の受付とあわせて「あおマガ」(無料マガジン:季刊)の発行がスタートしました。

 「あおまるclub」は、リスナーが会員になり会員カードを加盟店で提示すると、割引や1品サービス等の特典が受けられるというものです。スタート1ヶ月で会員は1,000人に迫り、あおマガは2週間ほどで1万部の部数が少なくなり、急いで500部を増刷しました。

 また、市内のお店等へ出向き、経営者やお客さんへインタビューという中継も頻繁に行われています。「よるせん」では、放送時間を延長して、参加飲食店からの中継を放送しています。このように市民とお店との距離がどんどん近くなっています。


「あおマガ」
(3)社員の年齢が若い
上栫局長と社員の方々

 コミュニティ放送事業部の正社員7人中20代が4人、30代が2人、50代が1人です。若さとバイタリティで、元気を電波に乗せ、番組を送り出しています。

 実は、社員の年齢が若いというのは放送部門だけではなく、まちづくり薩摩川内全体で若い人が多いのです。全正社員12人中20代が6人です。「企画部」が実施している「よるせん」は、20代の女性社員2人が自身のネットワークを活かしボランティアスタッフを確保・動員し、中心となり活躍しています。

 会社としては、「コミュニティ放送」や「よるせん」のような新しい取組に積極的にチャレンジしており、一方若い人はこの職場に魅力を感じ応募する、という良い形のサイクルができているようです。

6.「FMさつませんだい」の効果と課題

  「FMさつませんだい」の地域での反応は良く、商店街の街頭や個店で流されています。  また、局に届くリスナーの声も、自分達の身近な地元のFM局といった良いものがほとんどで、コミュニティ放送として早くも定着したようです。

 目下の目標は単年度での黒字です。

 放送局としての売上は、番組提供、スポット広告、その他の広告の3種です。

 いかにこれらスポンサーの数を増やすかが課題です。

 上栫局長からは、「開局早々、地元神社での桜の中継では、例年以上の花見客になったり、パーソナリティーがお祭りに呼ばれたりと、良い効果が続いています。」そして、「スポンサーが順調に増えており、『あおマガ』と『あおまるclub』の反応を見ていると、来年度での単年度黒字は不可能ではなく、収益が見込めると思っています。また、これを実現することは、まちづくり薩摩川内に寄せられている期待に応えていくこと、これから私たちがまちづくりの取組を進めていくうえで必要なことです。」と、力強い言葉が返ってきました。

7.取材を終えて
上栫局長と社員の方々

 取材当日、午前に「あおまるclub」加盟店のブルーベリー園から中継を流した際、帰りにブルーベリーをいただき、局に戻り早速それを小分けし、「先着6名、放送局に取りに来られる方に贈呈!」と放送したところ、市内ご近所の方が次々と集まり、大賑わいだったそうです。放送のフットワークの良さとリスナーの反応の速さ、近さを感じさせます。

 ところで、東日本大震災以後、非常時の情報伝達手段としてコミュニティFMへの関心が高まっているようです。

 「FMさつませんだい」では、市と防災協定を結んでおり、万が一スタジオが使えない場合でも、電話を専用回線につなぎ放送を継続することができます。10Kmほど離れた送信所には、予備電源として蓄電池と発電設備があり、非常時に備えています。

 また、放送を媒介して、新商品を開発することにも取組んでいます。確かに活用方法によって消費者ニーズや開発のヒントを得ることができます。

 「FMさつませんだい」は、開局してまだ半年も経っていません。今後どのように発展していくのか、健闘を期待するところです。

参考URL

FMさつませんだいhttp://fm871.com/




取材年月:平成25年7月

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