協議会訪問

越前おおの中心市街地活性化協議会

取組のポイント
  • 中活の取組を契機に若い事業者をまちに引き戻す
  • 空き店舗活用希望者の不安を取り除く、きめ細かな事業計画づくり支援
  • 歴史ある街並み「新しいものをつくる」のではなく「新しい風を吹き込む」若い事業者が増えている

1.人口減と高齢化の進むまち、不可欠な空き店舗活用

 大野市は、中心市街地活性化に精力的に取り組んでいますが、事業環境は厳しさを増しています。人口減少を要因とする市場の縮小により、中心市街地にはより魅力的な商業の展開が求められますが、実態は商店の高齢化や後継者難から商業地としての機能低下を招いており、大野市の中心市街地でも空き店舗の増加と店舗の住宅化が進む結果となっています。

 このような状況に対し、第2期中心市街地活性化基本計画では、中心市街地の不動産の利活用を進めながら城下町の再生を目指すことを明記し、大野商工会議所などが空き店舗活用を促進していく事業主体となって取り組みが進められています。



商店街利用状況


2.若い事業者の出店が増えた、大野市中心市街地の空き店舗活用

(ア)空き店舗活用は着実に進展

 大野市での空き店舗活用では、近年、個性的な店舗を出店する若い事業者が増えていることが特徴的です。
空き店舗活用を望む創業希望者や後継者から商工会議所に寄せられる相談は常に月に2〜3件あります。30代、40代の若い事業者の希望者が多く、そのうち、空き店舗活用に結びつくものが年間4〜5件という実績があります。 

空き店舗活用事例
(イ) まちなかに若い事業者を呼び戻す地道な取り組み
おおのじかん

 中心市街地活性化基本計画の取り組みが始まってから、協議会関係者は若い事業者が、まちの中で活動すること、まちなかに来訪するきっかけづくりに取り組んできました。地域情報誌「おおのじかん」は若い住民たちが編集に参加しつつ「平成大野屋番頭会」を組成し、まちなかでの楽しみ方を発信してこれまで中心市街地に目を向けてこなかった若い事業者や、まちのことに興味を持つ若い移住者への来街の動機づけの情報発信に役立っている一つの事例です。

 そのほかにも、まちの宝さがし、B級グルメやソフト事業を始めとした若い世代が中心となった取り組みがまちなかを舞台に取り組まれるようになっており、「コツコツ仕込んできた若い世代がまちで活躍できるきっかけがうまれ始めている」のだといえます。

 結果的に、若い年代のまちなかでの活動が増えてきたことは空き店舗への若い事業者の出店希望や、後継者がまちに戻り、家業を自分のカラーを出しながら継いでいくことへの呼び水となっています。それら若い事業者の店舗は既存の商店などとは違ったテイスト・個性を持っており、空き店舗活用でも既存の建物をリノベーションしながらも、存在感ある店舗であることが特徴です。

 このような既存商店の高齢化などから空き店舗化が進み、商店街や街の魅力の低下が課題であったまちなかにとって、良い流れがうまれつつあるといえます。

(ウ) 何回も足を運ぶ事業者の想いに応える

 空き店舗が活用され、閉じていたシャッターが開くことは、まちの活性化にとっては望ましいことです。
「公的支援策である家賃補助の期間が終わった途端に閉店してしまう」
このように空き店舗活用支援で全国的にみられる課題は、大野市の中心市街地活性化での空き店舗活用支援の取組にとってもご多分に漏れないものでした。誰でもどのような事業でもとりあえず空き店舗を埋めるような形だけを作る支援をしても、結果的に事業は持続せず、事業者も地域も幸せになることはできません。

 そこで、大野市では空き店舗活用を望む事業者の情報が必ず大野商工会議所に集まるようにし、商工会議所に来訪した事業者を事業計画からきっちり支援するとともに、開業後のフォローアップについてもケアする取り組みをしています。

1)空地空家対策特別委員会
創業プランシート

 大野市の空き地・空き家活用に使える補助金を得るためには、事業者は「空地空家対策特別委員会」に事業計画を提示し、推薦を得る必要があります。ほとんどの場合、空き店舗活用希望者は市の補助の活用を検討するため、希望者の情報が商工会議所に集まることとなります。

2)中小企業診断士資格保有職員による徹底した事業計画作成支援

 空き店舗活用希望者は多くの場合、事業計画が未熟であり磨き上げる余地が多くあります。事業環境が厳しくなっているこの時代において、形だけ開業にこぎつけても、持続しない恐れが多く、結果的に見れば、中心市街地活性化にとってもプラスにはなりません。

 そのため、希望者にはまず既定の書式を提供し体系的な事業計画を作るところから支援をスタートしています。

 「相談者が何回か来て来なくなってしまうことも少なからずある。それでも、10回以上も足を運んで相談してくる“本気の”希望者がいる。その想いをしっかり受け止めて、しっかりと支援をする」ことが、空き店舗を活用した事業の成立精度を高めています。


3) 客観的な課題整理のために的確な専門家とのマッチング

 空き店舗活用にとって、空き店舗が店舗化し、開業したというのは単なるスタートでしかありません。

 重要なのは、その店舗がいかに持続するかです。そのためには、事業の課題を客観的に整理し、対策をうっていくPDCAの取り組みが欠かせません。そこで、商工会議所では事業者に対して事業上の課題の整理を手伝い、その課題解決にどのような専門家の支援が必要かをふまえた上で、事業者とマッチングをすることを重視しています。よろず相談などでの専門家派遣を積極的に活用しながらの支援は課題に的確に対応することから事業者からのリピートの支援要望が多いのだということです。

(エ) これからの空き店舗活用支援の取組について

  若い事業者による空き店舗活用が増えてきたなかで、中心市街地活性化としての次のステップに進むための課題があります。

 それは、「まちやエリアの将来像を関係者が共有したうえで、いかにそのために必要な業種業態を、必要な空き店舗に導入していきながら面的な魅力を向上していけるか」といった、より戦略的な見地からの空き店舗活用に高めていくことです。

 また、「不動産オーナーに、遊休資産の活用を促す」ことも必要です。思い入れがある物件や、必要性に迫られていない不動産オーナーになんとか、まちの活性化の為にその不動産を適正な家賃で貸し出してもらう必要があります。そのために大野商工会議所などが出資し、まちなかの活性化に取り組むまちづくり会社「(株)結のまち越前おおの」では、平成27年度から「まちなか空き地空き家見学ツアー」など、貸し手と借り手のマッチング事業を大野市から委託を受けて開始しました。9月に行われた一回目のツアーでは、まちづくり会社が不動産会社や金融機関など専門家の協力を得ながら7つの物件を案内。市内外のみならず県外からも参加した13名が見て歩きました。また、そのことが新聞に報じられると、参加者以外からも「どの物件が案内されたのか知りたい、空き店舗について知りたい」という問い合わせがいくつも寄せられたことに、関係者は空き店舗活用の需要があると手ごたえを感じています。この見学ツアーは、今後も定期的に続けていく予定です。


空き店舗活用事例1 『モモンガコーヒー』(牧野俊博代表 年齢34歳  大野市出身)
〜新しいものをつくるのではなく、新しい風を吹き込みたい〜
モモンガコーヒー
Q1 開業前の前職は?
電機メーカーの営業
Q2 なぜ空き店舗を使って開業したのですか?
当時、観光客が増えつつある大野のまちなかにおいて市のワークショップ等で多くの方から「休憩する場所がない」という意見が出ていました。大野のまちなかに合ったスタイルで開業したかったため、『新しいものをつくるのではなく、古いものに新しい風を吹き込みたい』と考えていたところ、とある事業所が移転するお話をいただき、その内装を見て一目ぼれしました。
Q3 空き店舗出店にあたっての課題
新鮮な不動産情報を入手するには苦労しました。目を付けた不動産オーナーを見つけ出し自分で交渉しましたが、賃貸することは、オーナーさんとしてはあまり好ましく思っていないことが多く、なかなか見つかりませんでした。 また、人を呼び込む手法(SNS等)の活用の仕方やPRの方法なども課題でした。
Q3 活用した補助金
地域需要創造型等起業・創業促進事業
Q4 今後のお店の発展ビジョン
コーヒー屋としての事業を拡大するにあたり、「焙煎」専門の豆売りの店舗やネット販売事業を考えています。店舗は大野の水だからこそより一層おいしく淹れられるコーヒーを味わっていただくPRのための店舗として考えています。そのことで、最終的には大野まで足を運ばないと買えない商品やコーヒーの提供をし、大野に人を呼び込む方法を模索していきたいです。

空き店舗活用事例2 『Popolo.5』
〜現れては消えた空き衣料スーパー跡地活用。ベテラン商店主たちが長年の課題に立ち向かう〜
課題となっている衣料スーパー跡地

 五番通りは大野市中心市街地の中でも修景に取り組むなど、厳しい事業環境の中でも前向きに取り組んできた通り(商店街)のひとつです。しかしながら、街区にはかつて集客核であった衣料スーパーの空きビルが手つかずで残されたままであり、通りの雰囲気を落とすだけではなく、新たな拠点活用の観点からもその対策が急務とされてきました。それゆえ、当物件の活用は中心市街地活性化基本計画でも重要な事業に位置付けられています。

 しかしながら、空きスーパー跡地を活用する方法は10年以上前からテナント誘導など何度も検討され、働きかけてこられたものの、どれも具現化されることなく立ち消えとなっていました。「このままではまちは廃れ、城下町として望ましくない業種が進出してくるかもしれない。後世に良からぬツケを残してしまう」

 その危機感を募らせ「自分たちのまちのために」と、立ち上がったのは五番通りの前商店街理事長の福岡廣志氏をはじめとした数名のベテラン商店主たちです。

 彼らはまず資金を出し合って物件の共同購入に踏み切りました。そして、平成26年には経済産業省の補助金を活用して調査事業を実施し、その土地を商業施設として有効に活用するための方向性を探りました。その結果、建設する商業施設を「Popolo.5(ポポロドットファイブ)」と名付け、事業を運営するための会社「株式会社まちづくり55.5(ゴーゴードットファイブ)」を平成27年7月に立ち上げました。

 とはいえ、潤沢な資金力があるわけではなく、商業施設運営の経験やノウハウを持つわけでもありません。進んでは戻る、手探りの事業計画づくりです。関係者のこのような主体的で熱心な取り組みに対し、協議会事務局や市職員もバックアップしています。

 「増えている観光客だけではなく、大野の住民の人たちがいつも来てくれるような、地域に根付いた商業施設にしていきたい」(福岡氏)

 Popolo.5は、平成29年の開業を目指し、事業計画づくりが進められています。




4.取材を終えて


 城下町としてのまちなみを今なお色濃く残す大野市の中心市街地では、ゆったりとした雰囲気と時の流れを感じ、地域住民のまちへの愛着を感じさせる空気が漂う。その地域にあって、近年の若い事業者が中心となった空き店舗への個性的な店舗の出店はまちの彩を増し、そして、にわかに躍動感を感じさせる動きとなっています。

 とはいえ、この流れはまだ序盤であるといえます。高齢化による店舗減少が続くまちなかにあって、むしろ若い事業者が主体となった動きは本格化していくのだろうと予感させます。古きものを壊し、新たなものに置き換えるだけではなく歴史ある城下町の資産を大切にし、そこに吹き込まれる新たな風に、地域からの期待は高まっています。



取材:平成27年9月



まちの概要
大野市の位置

 福井県大野市は福井県の東方に位置する山間の平野に開けた人口約3万4千人の都市です。古くから名水の湧く城下町として栄えた中心市街地には往時の骨格が碁盤目状に残されて、七間通りで行われる朝市は400年以上の歴史を持つ。市街地を見下ろす「亀山」にそびえる越前大野城は低く垂れこめた霧に包まれた姿から「天空の城」として近年有名になり、観光客をひきつけています。

 また、名水に支えられた農産物などの高質な食材だけではなく、風味豊かな蕎麦は老舗がまちなかに点在し人気を集めています。海がない大野市において、田植えが終わるころに精をつけるために食べられてきたサバ一匹を串に刺して焼いた「半夏生(はんげっしょ)さば」、大豆を水飴でかためたお菓子「けんけら」といった伝統的な食のみならず、近年では若者グループが中心となり、大野産醤油を活用した「醤油カツ丼」や「とんちゃん」と呼ばれる名物ホルモン料理などのB級グルメにも力を入れるなど、食にも力を入れています。

 中心市街地活性化には平成20年から取り組んでおり、平成25年からは2期計画が策定され継続的に中心市街地活性化が取り組まれています。



大野市の中心市街地にあたる城下町

協議会の概要
協議会名:越前おおの中心市街地活性化協議会
所在地:福井県大野市
設置日:2007年7月31日
法定組織者:【都市機能増進】株式会社平成大野屋、株式会社結のまち越前おおの
【経済活力向上】大野商工会議所
参考URL: 越前おおの中心市街地活性化協議会

関連リンク

協議会交流会の活動報告
平成24年度中心市街地活性化協議会全国交流会
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