協議会訪問

大田原市中心市街地活性化協議会

トコトコ大田原
取組のポイント
  • 「ゆるくカワイク」子育てママのまち歩きマップ作り
  • 車で再開発ビルに集まる子育て世代をまち歩きへと誘導
  • マップ作りを通して、一店逸品活動と路地裏創業ショップの魅力発見

1.中心市街地の現状

(1)現状

 大田原市は、平成26年3月に基本計画が終了しました。 中心市街地の中核施設として、平成25年12月に複合商業施設「トコトコ大田原(以下、「トコトコ」)がオープンし、市内外の子育て世代から学生、お年寄りまで幅広い世代に利用され、連日にぎわっています。

 トコトコの1Fは、トコトコマルシェ(産直市場)、医療施設、飲食店、美容院、雑貨店など、これまで街なかに不足していた業種が補完されました。トコトコマルシェは、(株)大田原まちづくりカンパニー(以下、「まちづくりカンパニー」)が運営し、近隣のお年寄りのニーズに応えて、産直の朝採り野菜だけでなく、生鮮品や日用品を含むミニスーパーを併設し、年中無休で営業しています。

 2−3Fに子ども未来館と市民交流センター、4Fには図書館が整備されました。子ども未来館は、子育て世代の家族向けの様々な施設が整備され、子どもや家族向けに、毎日いろいろなイベントや講座が開かれています。3Fの市民交流センターには、大小の会議室が6室整備され、市民サークルや地域活動に利用されています。 隣接の一角には、蔵を利用した駄菓子屋「あらまち蔵屋敷」、カフェ、スペインバルが並び、子育て世代の女性でにぎわっています。



トコトコ大田原
(2)課題

 大田原市では、郊外の幹線道路沿いにスーパー、百貨店、銀行、電気店、家具店など大手チェーン店が軒を連ね、その影響や後継者難により市街地の店舗が年々減少し、日常生活の買い物には車が無くてはならない状況です。街なかに、子育て世代に便利な機能が集約されたトコトコができ、期待通り、乳幼児連れの家族の来街を促すことができました。しかし、ほとんどの利用者は車で来て館内で遊びも食事や買い物も完結できるため、街なかへの回遊には結びついていませんでした。



2.協議会の取り組み

(1)組織変更

 大田原市中心市街地活性化協議会(以下、「協議会」)は、平成27年度より、右図の組織に変更しました。各専門部会の調整役として、運営委員会の下に置かれていた「調整会議」を「タウンマネージメント会議」に改め、大田原商工会議所とまちづくりカンパニーを中心として、まちづくりの関係者が、情報交換や事業の企画調整を図り、より具体的に活性化を推進する体制を整えました。



大田原中心市街地活性化協議会

(2)空き店舗活用研究会の取り組み

 平成27年度の空き店舗活用研究会の活動目標は、下記の2つです。

  1. 創業者支援事業の実施
    • 創業スクールの実施
    • インキュベーションショップ(お試しショップ)の実施
  2. 路地裏にぎわい活動創出方策検討
    • 空店舗の利活用
    • 街なかガイドマップの作成

(3)協議会の役割

 協議会は、中心市街地の課題ごとに専門部会を立ち上げ、解決方法を検討しています。市や事務局に意見や要望を伝え、事業化できると判断したときは、事業にふさわしいプレーヤーに手渡し、迅速に事業化を進めます。協議し意見を答申するだけの組織ではなく、市民や行政を巻き込み、形にするのが協議会の役割と考えられています。一例として、商家の蔵が並ぶ一画を不動産業者が買い取り、更地にして駐車場にする計画がありました。協議会では、大切な地域資源を残そうと、市に交渉して買い取ってもらい、その後、空き店舗活用研究会の有志で、NPO法人を立ち上げ、子ども達の居場所づくりとして駄菓子屋「あらまち蔵屋敷」をオープンし、蔵の活用と賑わい創出に成功しました。



3.マップ作りの取り組み

(1)きっかけ
植木氏芳賀氏大野氏

 基本計画事業によりハードが整備されたので、協議会では、平成26年度にこれを活用するソフト事業を行う事業計画を立てました。空き店舗活用研究会の事業として、トコトコで集客できた子育てママたちに街なかまで足を延ばしてもらい、まちのにぎわいを創出することを目的にマップ作りが計画されました。

 マップ作りのリーダーとして、協議会事務局が声をかけたのは、空き店舗活用研究会会長でまちづくりカンパニーの社長夫人の植木紘子さんでした。当初、植木さんは、まちづくり会社の仕事で多忙なご主人に代わって家業を切り盛りしており、3歳と7歳の2人の子供の世話もあり、とても時間がとれないと思ったそうです。でも、「子育てママのためのマップ作り」なら自分たちのためになると思い、友人にボランティアで一緒にやろうと声を掛け、20代から40代の女性6人の「マップ作り委員会」が立ち上がりました。



(2)内容

 マップ作りには、中小機構の中心市街地商業活性化アドバイザー派遣事業を活用し、「まち歩きマップ」の指導で定評のある藤田とし子氏を派遣してもらい、平成26年11月から平成27年3月まで、5回アドバイスを受けました。

 最初に、全国のマップ事例を見せてもらい、自分達が作りたいマップのイメージをまとめました。子育て世代歓迎の大田原の温かいお店を紹介する「ゆるくカワイク」というコンセプトを決めて、詳細は、雑談形式で話し合いながら決めました。マップの範囲は、ベビーカーを押して無理なく歩ける「トコトコから半径500m以内」に決め、取材先の選択は、それまで行ってみたいと思っていたお店をメンバーがピックアップしました。マップに取り上げる基準は、@子連れOK A買わなくてもOK Bベビーカーで入れる、の3つです。

 マップ作り委員会のルールで最初に決めたのは、子育てママが無理せずに参加できるように、会合の時間は子どもを幼稚園へ送って帰宅するまでの時間帯にすることと、出られる人だけ出て無理をしないこと。欠席の人には、植木さんが電話で決まったことを毎回口頭で伝えるようにしました。

 取材は、子どもの習い事の待ち時間などをうまく活用して、11月から1月末までの短期間に集中して行いました。飲食店は何人かで実際に食事に行き、感想をまとめました。初めての経験ばかりで大変でしたが、意外だったのは、お店の方がみんなやさしく歓迎してくれたこと、取材以外にも大田原の昔の話や知らないことをたくさん教えてもらえたことでした。予定時間をオーバーすることも多く、とても楽しい体験になりました。



トコトコマップ

 マップの外面は、地図に手書きのコメントでお店を紹介しています。中面は、店舗情報と大田原ならではの見どころをイラストと手書きコメントで紹介しました。取材した各店の「売り」は、子育てママが友人に話しかけるような「会話調」が特徴です。お肉屋さんは、「今晩のおかずに困ったらぜひ行ってみて!」、お蕎麦屋さんは、「個室があるから、子ども連れでも安心!」

 タイトルは、「おしゃんてぃ(おしゃれな)母ちゃんが見つけたトコトコMap」。マップデザインは、古き良き大田原をイメージしたレトロモダン。こだわったのは、紙の素材や色と折り。子供が持って手を切ったり、ぐしゃぐしゃになったりしない紙質で、手書きの文字色やイラストにあったクラフト紙を選びました。子供を抱っこしたまま、片手で持って見られる折り方を工夫し、マザーバッグやポケットに入れられるサイズにしました。特殊な折り方なので印刷会社の機械折りができず、Facebookでメンバーの知り合いに呼びかけて、みんなで手分けして折りました。



(3)他の取組との関連

1)一店逸品運動「与一逸品物語」
与一逸品物語

 大田原市では、平成24年度から自分のお店の強みを再発見する「一店逸品」活動を始めています。大田原市で生まれたとされる那須与一にちなみ、「与一逸品物語」と名付け、参加店店頭の看板で紹介しています。初年度には、中小機構の中心市街地商業活性化アドバイザーの加藤博氏のアドバイスを受け、31店が参加し、その後も年5−6回の勉強会を続け、平成27年には参加店が47店に増えました。トコトコから半径500m以内の26店のうち、15店が子育て歓迎店としてマップに紹介されました。

 マップ取材時にお店の人がたくさん話をしてくれたのは、勉強会で自店の魅力を再認識できていたからではないでしょうか。マップと逸品活動の相乗効果で、初めての人にも来店しやすくなりました。



2)路地裏にぎわい活動

 空き店舗活用研究会では、6年前から「創業塾」を始め、創業支援やチャレンジショップを行っています。平成26年度は、参加者の4割が起業しました。創業者の希望で協議会がオーナーに交渉し、古いアパートを1棟、低価格で借り上げ、クリエイターの集まる店舗にしたり、蔵で雑貨店を開いたり、路地裏に少しずつ楽しいお店が増えています。路地裏のお店廻りにもマップが役立っています。



4.取組の効果


(1)周りの反応

 5,000部のマップは、紹介したエリア内の各店の他、トコトコや駅、市役所で配布しました。街なかの関心は高く、幼稚園や小学校の懇親会で集まると先生やお母さん方がみなマップを持っていて驚いたほどです。お店に置いてもすぐになくなります。取材時の6月現在で残り200部となり、1,000部増刷予定です。ターゲットにしていた子育て世代だけでなく、仕事をしているママに代わって、孫を連れ歩く祖父母世代にも人気です。

(2)マップ作りから次の活動へ
メゾンドクチュール

 マップ作りをきっかけにして、メンバーのママたちが街なかで新しい活動を始めました。農家に嫁いでいたメンバーは、マップに紹介した実家の写真スタジオでママフォトグラファーとしての仕事を再開しました。また、ハンドメイド作家でニット帽などを作っていたメンバーは、マップのイラストが評判になり、イラストの仕事を始めることになりました。協議会で準備中の「マップを持ってまち歩きイベント」では、植木さんに代わってハンドメイド作家のメンバーがリーダーとなり、老若男女参加できるイベントを企画しています。


(3)次の街なかマップ作りの取り組み

 マップ作りで子育てママたちの街なか回遊の効果が見られたので、次回は、これまでカフェや傾聴ボランティア活動で連携してきた、大田原市郊外の国際医療福祉大学(学生数5,000人)の学生を対象に学生によるマップ作りを計画しています。

(4)一店逸品ツアー

 一店逸品運動の来店促進のため、スタンプラリーを行っていますが、一人では入りにくいという声もあり、平成25年より「一店逸品お店回り」ツアーを実施しています。ガイドがついて、まち歩きをしながら、町の歴史を聞いたり、店主のこだわりの逸品を見たり味わったりするツアーで、食事付一人1500円で好評です。これまでは、時間に余裕のある高齢者の参加が多かったのですが、トコトコマップのおかげで若い世代の参加も期待できそうです。



5.今後の課題

 大田原市の基本計画は、平成26年3月に終了しました。市では、東日本大震災後の対策のため、中活エリア外のより広い地域への対応の必要もあり、今のところ、2期計画の予定はありませんが、それに代わる第2期行動指針として「市街地総合再生基本計画」を策定する予定です。第1期計画を補完するインフラ整備を行い、その効果を呼び水とした市民活動や民間投資を誘発した活動を行う計画です。来訪者を増やすための駐車場や公共交通の整備、街なか居住者を支える商業・医療施設の充実など、トコトコの求心力を活かしたさらなる中心市街地の活性化を図り続けることが課題です。



6.取材を終えて

 「与一逸品物語」の商品開発や路地裏の創業ショップ、街並みづくり委員会が策定した建替え協定ガイドライン「和・Style」で統一されたきれいな街並みなど、協議会でまちの活性化のために行ってきた一つ一つの活動が、新しいまちの姿として、まち歩きをする若い世代の人たちに新鮮な魅力を与えています。子育て世代のまち歩きをきっかけに、トコトコに集まる学生や高齢者など多世代が街なかで交流する、そんなまちの姿が期待できます。

取材:平成27年7月



まちの概要
大田原市の位置

 大田原市は、栃木県の県北地域の行政・商業の中心都市です。人口は約7.5万人(平成27年6月現在)。中心市街地は、東北新幹線那須塩原駅からバスで15分です。

江戸時代に大田原城の城下町として、また旧奥州街道の宿場町として発展し、市街地には数多くの蔵が点在し、歴史的なまちなみのたたずまいを残しています。周囲は、鮎の漁獲量日本一の那珂川と那須野ヶ原、東部の八溝山系に囲まれた自然豊かな地域です。




協議会の概要
協議会名:大田原市中心市街地活性化協議会
所在地:栃木県大田原市
設置日:平成19年3月28日
構成員:20名
法定組織者:【都市機能増進】(株)大田原まちづくりカンパニー
【経済活力向上】大田原商工会議所
参考URL: 大田原市中心市街地活性化協議会
(株)大田原まちづくりカンパニー



関連リンク

協議会訪問
大田原市中心市街地活性化協議会(2010.7.9)
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